http://www.asyura2.com/19/genpatu52/msg/230.html
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話題のHBOドラマ「チェルノブイリ」全5話を観た。
これは必見のドラマである。
このドラマに描かれている出来事の大半は、ドキュメンタリーや書籍などですでに知っていたが、
やはり再現された映像を見ると、その迫力、深刻さに圧倒される。
チェルノブイリ原発事故のことを知らない若い世代はもちろん、リアルタイムで体験した世代にも
ぜひ観ていただきたい作品である。
このドラマを鑑賞する上で、いくつか知っておくべき点がある。
まず、事故とその収束については忠実に描いているが、登場人物は必ずしも実在の人物だけではない。
エミリー・ワトソンが演じるウラナ・ホミュックという核物理学者は架空の人物で、ヴァレリー・レガソフ教授の
内なる良心が別人物として描かれていると考えられる。
それから当時のソ連では、放射能の危険性を知っているのはソ連共産党上層部や一部の専門家だけで、
一般民衆はほどんど放射能に関して無知であったことも知っておく必要がある。
放射能の危険性を知らせないほうが政府にとっては都合がよいので、国民は放射能は安全である、
心配するなと洗脳されていたのである。(どこぞの国も似たようなものだ)
もちろん広島・長崎で被爆者に何が起きたかも全く知らなかったし、教えられもしなかった。
だから、今では考えられないような無防備、無茶な消火活動やガレキの片付けなどの収束活動が行なわれた。
それが恐ろしい被ばく被害を起こしてしまったのである。
また強制避難の住民にはペットを連れて行く自由はなく、涙の別れをしなければならなかった。
そして、野生化し猛烈に汚染されたペットを"始末"しなければならない悲劇が生じた。
それから、ウォッカをあおる場面がひんぱんに出てくるが、ソ連の人は日頃からこのように
飲んだくれているわけではない。
当時はウォッカは放射性物質の排出を促進すると考えられていたのである。
このドラマには絵空事ではない真実の凄み、凄惨さがあるが、それに圧倒されるだけではいけない。
多少の違いはあれ福島原発事故でもチェルノブイリと同じことが起きており、しかも状況は
比較にならないほど深刻であることを認識すべきである。
このドラマの中で最も悲劇的なエピソードの一つ、近づけないほど汚染された消防士の遺体が
鉛の棺に入れられ蓋を溶接され、安置した墓穴にコンクリートが流し込まれる場面がある。
実は、福島第一でも同じようなことが行なわれたとうわさされている。
1号機爆発後、南相馬市立総合病院に逃げてきた住民ですら測定器が10万cpmを超え振り切れる
汚染を被っていた。
爆発した原子炉の近くにいた作業員はほぼ即死状態で、遺体は近づけないほど汚染されたはずだ。
その数は数十名とも数百名とも言われる。
現場で亡くなった作業員の遺体は汚染がひどくて近寄れず、クレーンで首を吊ってナイロン袋に入れ、
ドラム缶に詰めたというおぞましい話が地元住民の間でささやかれているのだ。
遺族には金を積んで口を封じたか、あるいは津波で行方不明にされてしまったかだ。
おそらくコンクリート詰めにされた多くの遺体が福島第一の敷地のどこかに埋められているはずだ。
チェルノブイリと全く同じことが起きているのだが、公表されないだけである。
このドラマは人権蹂躙、情報統制、秘密警察など共産ソ連の全体主義国家としての暗い面が
強調されている。
それは間違いではないのだが、では自由主義国家の日本で同様の原発事故が起きてどうなったか。
人権蹂躙、情報統制は同じというより、もっとひどいのではないか。
要するに、原子力の秘密性、非人間性はいかなる国家においても共通だということだ。
ソ連は超大国の威信をかけて、多大な犠牲を払いながら被ばく被害や汚染拡散の防止を行なった。
何千台というバスをかき集めて、数十万人の住民を避難させた。
決死隊によりメルトスルーによる水蒸気爆発や地下水汚染を危機一髪で防いだ。
わずか半年で石棺を建設して原子炉を覆った。
総力をあげて事故収拾、汚染拡散防止のためにできることはすべてやったのである。
これはやはり高く評価すべきことである。
それにくらべ福島第一原発事故はどうか。
事故後もうすぐ9年になるのに、何一つ放射性物質を封じ込めることができない。
溶融燃料は地下に落ち地下水と反応して、放射性蒸気がシューシュー噴き上がっている
悲惨な状況である。
封じ込めるどころか、汚染土再利用、汚染水放出でさらに汚染を拡げようとしている。
即刻避難すべき高汚染地域に住民を住まわせているし、避難した住民を帰還させようとしている。
重要なことは何一つ解決していない。
それどころか汚染・被ばく被害を故意に悪化させようとしているのだ。
日本はこんなに愚劣な国だったのかと言葉を失う。
冗談でもソ連を批判することはできないだろう。
チェルノブイリ事故の本当の地獄は、原発事故収束後に始まった。
勲章をもらっただけで被ばくに苦しみながら絶命していくリクビダートル。
汚染されていることを知りながら地元産を食べざるを得ず、次々倒れていく住民。
民衆の激しい怒りを買って崩壊していくソ連共産党。
HBOには事故後の被ばく被害の凄まじさ、そしてソ連が崩壊していくドラマを
続編としてぜひ製作してほしいと思う。
ドラマ「チェルノブイリ」は今後、原子力を論じるうえで必見のドラマである。
覚悟の上、とくと御覧あれ。
(関連情報)
「チェルノブイリ」 (STAR BS10)
https://www.star-ch.jp/drama/chernobyl/
「ここまでひどいのか…『チェルノブイリ』ドラマがものすごい」 (シネマトゥデイ 2019/9/11)
https://www.cinematoday.jp/page/A0006858
「1F爆発犠牲者の遺体は汚染がひどくて触れられず、クレーンで首を吊ってナイロン袋に入れ、
ドラム缶に詰めた 」 (拙稿 2016/6/10)
http://www.asyura2.com/16/genpatu45/msg/814.html
「『病院へ逃れてきた十数人の人が10万cpmを超えガイガーカウンターが振り切れていた』(徳田毅)(Merx)」
(阿修羅・こーるてん 2013/2/5)
http://www.asyura2.com/13/genpatu30/msg/155.html
「チェルノブイリでは1500万人以上死亡 福島原発事故ではいったい何人亡くなるのか?」
(拙稿 2015/9/26)
http://www.asyura2.com/15/genpatu43/msg/856.html
「チェルノブイリ被害の真実 The true toll of the Chernobyl (BBC)」 (拙稿 2019/7/31)
http://www.asyura2.com/19/genpatu51/msg/761.html
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