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詳報 東電刑事裁判「原発事故の真相は(原発に絶対安全は無理と認めた!?)
http://www.asyura2.com/19/genpatu52/msg/109.html
投稿者 戦争とはこういう物 日時 2019 年 9 月 20 日 09:03:27: N0qgFY7SzZrIQ kO2RiILGgs2CsYKkgqKCpJWo
 

(回答先: 東電に「無罪判決」ネット失望「日本の司法終わった」と落胆の声多発!(又続いた国依り判決?!) 投稿者 戦争とはこういう物 日時 2019 年 9 月 19 日 21:38:59)

 一目見て酷い判決だが、。よく見ると被告を有罪とする証言を殆ど無視し、被告の責任を最も軽くする評価を加えて事故の原因を社会に投げてしまっている。
しかし、そのお陰で「原発に絶対の安全性は求められていなかった」事まで認めてしまった。現在動いている原発も、絶対の安全は無い。直ちに停止しなければ、いずれ何らかの「想定外災害」で崩壊・被爆事故を起こす事が確実となった事になる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(ここから)
詳報 東電刑事裁判「原発事故の真相は」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/toudensaiban/

東京電力の旧経営陣3人が福島第一原発の事故を防げなかったとして検察審査会の議決によって強制的に起訴された裁判。東京地裁は3人に無罪の判決を言い渡しました。
これまでの審理で証拠調べや21人のぼる証人尋問、被告人質問が行われ、検察官役の指定弁護士は3人に「禁錮5年」を求刑していました。一方、弁護側は無罪を主張していました。初公判から判決まで、2年3か月にわたる裁判の詳細な記録です。

第31回〜第21回〜第30回第11回〜第20回初公判〜第10回基礎知識今後の公判予定年表
目次
※クリックすると各見出しに移動します

判決公判 2019年9月19日
判決の概要
争点と双方の主張
・第37回公判 2019年3月12日
・第36回公判 2018年12月27日
・第35回公判 2018年12月26日
・第34回公判 2018年11月14日
・第33回公判 2018年10月30日
・第32回公判 2018年10月19日
・第31回公判 2018年10月17日

・判決公判 2019年9月19日
●原発事故 東電旧経営陣に無罪判決「津波の予測可能性なし」
福島第一原発の事故をめぐり東京電力の旧経営陣3人が強制的に起訴された裁判で、東京地方裁判所は、「旧経営陣3人が巨大な津波の発生を予測できる可能性があったとは認められない」として、3人全員に無罪を言い渡しました。

無罪を言い渡されたのは、東京電力の勝俣恒久元会長(79)、武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69)の旧経営陣3人です。3人は福島第一原発の事故をめぐって検察審査会の議決によって業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴され、いずれも無罪を主張していました。

判決で、東京地方裁判所の永渕健一裁判長は、裁判の大きな争点となった原発事故を引き起こすような巨大津波を予測できたかについて「津波が来る可能性を指摘する意見があることは認識していて、予測できる可能性がまったくなかったとは言いがたい。しかし、原発の運転を停止する義務を課すほど巨大な津波が来ると予測できる可能性があったとは認められない」と指摘しました。

そのうえで、「原発事故の結果は重大で取り返しがつかないことは言うまでもなく、何よりも安全性を最優先し、事故発生の可能性がゼロか限りなくゼロに近くなるように必要な措置を直ちに取ることも社会の選択肢として考えられないわけではない。しかし、当時の法令上の規制や国の審査は、絶対的な安全性の確保までを前提としておらず、3人が東京電力の取締役という責任を伴う立場にあったからといって刑事責任を負うことにはならない」として無罪を言い渡しました。

○旧経営陣3人がコメント
判決を受けて、東京電力の旧経営陣3人は代理人の弁護士を通じてコメントを発表しました。

勝俣恒久元会長(79)は「福島第一原子力発電所の事故により多大な迷惑をおかけした社会の皆様に対し、東京電力の社長・会長を務めていた者として、大変申し訳なく、改めてお詫び申し上げます」とコメントしました。

武黒一郎元副社長(73)は「本件事故により亡くなられた方々や負傷された方々に改めてお悔やみとお見舞いを申し上げます。皆様に多大なご迷惑をおかけしていることを大変申し訳なく思っております」とコメントしました。

武藤栄元副社長(69)は「福島第一原子力発電所の事故によって、大変多くの皆様方に多大なるご迷惑をお掛けして参りました。当時の東京電力の役員として、あらためて深くお詫び申し上げます」とコメントしました。

○東京電力「原発の安全対策に不退転の決意」
判決について東京電力は「福島県民の皆さまをはじめとする多くの皆さまに大変なご迷惑とご心配をおかけしていることについて、改めて、心からお詫び申し上げます。当社元役員3人の刑事責任を問う訴訟について、当社としてコメントは差し控えさせていただきます。当社としては、『福島復興』を原点に、原子力の損害賠償、廃止措置、除染に誠心誠意、全力を尽くすとともに、原子力発電所の安全性強化対策に、不退転の決意で取り組んでまいります」というコメントを発表しました。

○刑事告発したメンバー「闘い続ける」
旧経営陣を刑事告発した市民グループのメンバーで福島市から京都に避難している宇野朗子さんは無罪判決について「こういう結果になるとは想像していなかったので納得できない。子どもたちに恥ずかしくない国にするためにこれからも闘い続けていきたい」と涙ながらに訴えていました。

また、福島市の佐々木慶子さんは「原発事故で双葉病院の44人も含めて多くの人が犠牲になったほか、いまだに避難を続け、苦しんでいる人がたくさんいる。今回の判決ではこうしたことが考慮されず国民を踏みにじる偏った判決だと思う。裁判所にはもっと公正な判断をしてほしかった」と話していました。

●詳報 判決公判 「判決が問うもの」
“絶対的な安全性は求められていなかった”

世界最悪レベルの原発事故の刑事責任が問われた裁判で、裁判所はこのように指摘して、東京電力の旧経営陣3人に無罪を言い渡しました。

なぜ、刑事責任は認められなかったのか。2年3か月に及んだ裁判の最後の法廷を取材しました。

○注目の判決 傍聴券の倍率は18倍
判決が言い渡されたのは東京地裁で最も大きい104号法廷。45席の傍聴席を求めて多くの人が集まり、傍聴券の倍率は18倍余りでした。海外のメディアも多く訪れ、世界最悪レベルの原発事故で電力会社の経営陣らが刑事責任を問われた裁判への関心の高さがうかがえました。

○言い渡しの瞬間は
午後1時10分すぎ。黒いスーツに身を包んだ旧経営陣3人は、いずれも硬い表情で、軽く一礼した後、法廷に入りました。少し緊張したような面持ちでお互いに目を合わせることはありませんでした。

開廷は午後1時15分。裁判長から「前に立ってください」と促された3人は、弁護側の席から法廷の中央にある証言台の前に移動し、横一列に並んで立ちました。

「被告人らはいずれも無罪」と主文が読み上げられると3人は裁判長に向かって小さく頭を下げ再び席に戻りました。

傍聴席からは「うそ」という声や、ため息が聞こえました。検察官役の指定弁護士は額に手を当てて厳しい表情を浮かべていました。

およそ3時間に及んだ言い渡しの間、旧経営陣3人はメモを取りながら聞いていました。

言い渡しが終わると傍聴席からは「間違っている。こんな判決」という声も上がりました。

旧経営陣3人は最後まで、その硬い表情を崩すことはなく、裁判長に向かって一礼して、法廷をあとにしました。

○全員無罪は“不当判決”
東京地裁の正面玄関の前では、旧経営陣を刑事告発した市民グループが「全員無罪 不当判決」と書かれた紙を掲げ、集まった支援者たちからは「どうしてだ」「納得がいかない」などの声が上がり、騒然としました。

原発事故で大熊町の双葉病院から避難を余儀なくされた父親を亡くした菅野正克さん(75)は茨城県から判決を傍聴に訪れました。

菅野さんは「ふるさとに帰りたいと思って亡くなった方がたくさんいることを考えれば、いかなる理由があろうともこんな判決は受け入れることができません」と憤りをあらわにしました。

○判決のポイント1「予見可能性」
裁判では、巨大な津波を予測できる可能性があったか、いわゆる「予見可能性」が最大の争点になりました。

それを判断するうえで、裁判所が検討したのは平成14年に国の地震調査研究推進本部が公表した巨大地震の予測=長期評価の信頼性についてです。

東京電力の津波対策の部署は、この長期評価に基づいて津波の高さが最大15.7メートルに達するという計算結果をまとめ、武藤元副社長などに報告していました。

判決は「長期評価」について「当時、一般防災で取り入れられず、原発の津波対策でも国の原子力安全・保安院が『参考情報』として扱い、積極的に取り入れるよう求めていないなど、原発の安全対策を考えるのにあたって取り入れるべき知見だという評価を受けていたわけではない」として客観的に信頼性があったか疑いが残ると指摘し、刑事責任を負うほどの「予見可能性」があったとは認定できないと判断しました。

○判決のポイント2「結果回避可能性」
もう1つの争点の「結果回避可能性」については検察官役の指定弁護士の指摘に基づいて、「原発事故までに原発の運転を停止する義務があったか」という点が検討されました。

これについて判決は運転を停止すればライフラインや地域社会に一定の影響を与えることも考慮すべきだとしたうえで、「法令に基づく運転停止の命令を受けておらず事故も発生していない状況で、手続き的にも技術的にも相当な負担と困難を伴う」として、運転の停止は現実的ではないという考えを示しました。

原発のインフラとしての重要性を強調し、原発事故の刑事責任の立証に非常に高いハードルを課したものといえます。

○原発に求められる「安全性」とは
また裁判所は、原発に求められる安全性についても説明し、「放射性物質が外部に放出されることは絶対にないというレベルの極めて高度の安全性ではなく、最新の科学的知見を踏まえて合理的に予測される自然災害を想定した安全性の確保が求められていた」という考えを示しました。

そのうえで、「事故発生の可能性が限りなくゼロに近くなるように必要な措置を直ちに講じることも社会の選択肢としては考えられなくはないが、少なくとも地震の発生前の時点では、法令上の規制や国の指針などが絶対的安全性の確保までは前提としていなかった」と指摘しました。

○民事裁判との違いは
東京電力に対して損害賠償を求めた民事裁判では、複数の判決で原発事故を引き起こすような巨大な津波を予測できたとする「予見可能性」が認められてきました。

○裁判所は3人をなぜ無罪と判断したのか。

過失の刑事責任に詳しい明治大学法科大学院の大塚裕史教授は「刑事裁判は民事裁判とは役割が違い、組織ではなく個人の責任を問うものだ。刑務所に入れなければならないほど落ち度があったかという判断になる」として民事裁判での認定とは分けて考えるべきだと指摘しました。

○指定弁護士は
検察官役の指定弁護士5人は、判決のあと会見を開きました。

この中で石田省三郎弁護士は「国の原子力行政をそんたくした判決だといわざるをえない。原子力発電所という事故が起きれば取り返しがつかない施設を管理・運営している会社の最高経営者層の義務とはこの程度でいいのか。原発には絶対的な安全性までは求められていないという今回の裁判所の判断はありえないと思う」と述べました。

控訴については判決の内容を精査したうえで被害者として裁判に参加している人たちとも相談するなどして判断する意向を示しました。

○判決が問うもの
初公判から2年3か月。37回にわたった審理の結論は「刑事責任は問えない」というものでした。

一方、東京電力の社内でも当初、現場レベルでは津波対策が前向きに検討されていたことや同じ「長期評価」に基づいて別の電力会社は短期間でできる対策を実施していたことなど裁判を通じて、初めて明らかになった事実もありました。

無罪という結論に関わらず、電力会社には基準を満たすだけでなくより高い安全性を追求していくことが求められています。

判決は最後に「事故当時、絶対的な安全性の確保までは求められていなかった」という原発の規制のあり方について「社会通念の反映だ」と指摘しました。

多くの犠牲者や被災者を出した未曾有の原発事故の経験を踏まえ私たちは原発のリスクとどう向き合うべきのか。社会全体で幅広く議論を深めることが求められています。

●判決のポイント

○「あらゆる対策は不可能」
裁判長は「事故を防ぐために津波が原子炉建屋に入るのを防ぐ対策や原子炉を冷やすための代替の機器を高台に準備する対策などをいつまでに終えればよかったかについて、検察官役の指定弁護士は主張しておらず、結局は、事故を回避するには、運転を停止するしかなかったということになる」と指摘しました。

そのうえで、運転停止をすればライフラインや地域社会に一定の影響を与えることも考慮すべきだと述べました。

さらに、「事故の結果の重大性を強調するあまり、自然現象で想定し得るあらゆる可能性を考慮した対策を義務づければ、原発の運転を行う事業者に不可能を強いる結果となる」と指摘しました。

そのうえで、「津波による被害の可能性は、平成23年3月初旬の時点までにどのような知見があり、どのような安全対策が行われ、どのような施設として福島第一原発が運用されてきたかなどを考慮して決めるしかない」としています。

○元幹部の供述調書「信用性に疑い」
裁判で注目を集めた証拠の1つが東京電力で津波対策を行う部門のトップを務めていた元幹部の供述調書で、勝俣元会長らが出席する会議で新たな津波対策を取る必要があることを報告したというものでした。

検察官役の指定弁護士はこれを有力な証拠として、旧経営陣らが巨大な津波を予測できたと主張してきました。

これについて判決は「会議で報告したのではなく、資料を配付しただけで了承されたと本人が推測している可能性がぬぐえず、信用性に疑いがある。この会議で国の地震対策である長期評価を津波対策に取り込むことが了承されたという事実は認められない」と判断しました。

○長期評価「客観的な信頼性なかった」
裁判では、平成14年に国の地震調査研究推進本部が公表した巨大地震の予測=長期評価に基づいて、津波対策をとっていれば事故を防げたかどうかが大きな焦点となりました。

「長期評価」の信頼性について判決は「長期評価はマグニチュード8クラスの巨大地震の発生の可能性について具体的な根拠を示さず、津波の専門家や国によって疑問が示されていて、平成23年3月初旬の時点で客観的に信頼性や具体性があったと認めるには合理的な疑いが残る」と指摘しました。

そのうえで、旧経営陣3人の当時の認識について、「原発に10メートルを超える津波が襲来する可能性があり得るという報告を受けていたものの、信頼性のある根拠を伴っているという認識はなかった」と判断しました。

また、「当時、一般防災で取り入れられず、原発の津波対策でも国の原子力安全・保安院が『参考情報』として扱い、積極的に取り入れるよう求めていないなど、原発の安全対策を考えるのにあたって取り入れるべき知見だという評価を受けていたわけではない」と指摘しました。

そのうえで、「武藤元副社長らに『長期評価は具体的な根拠が示されておらず 信頼性に乏しい』と説明されたのは、それなりに根拠があった」と指摘しました。

また、「東京電力の担当者はいずれも「長期評価」を踏まえた対策工事を進めていかなければならないと考えていたものの原発の運転を停止すべきだとは考えていなかった。関東以北の太平洋側に原発を設置するほかの事業者も「長期評価」を踏まえた対策を講じるまで運転を停止することを検討していたとはうかがえない」と指摘しました。

さらにこうした東京電力の方針や対応について「行政機関や専門家が明確に否定したり再考を促す意見が出たという事実もうかがえない」と指摘しました。

○原発の運転停止「相当に困難」
原発の運転を停止できたかどうかについて判決では、「法律に基づく運転停止命令を受けておらず、事故も発生していない状況で、3人の一存で容易に運転停止を指示、実行できるものではなく、関係各機関に必要性や合理性について理解や了承を得る必要があり、手続的に相当な負担を伴うものだった」と指摘しました。

さらに「事故前に炉心損傷を防ぐための対応を行うことは、技術的観点からみても相当に困難と考えざるをえない」と指摘しました。

○「予見可能性認められない」
予見可能性について「10メートルを超える津波が襲来するとの分析結果が出ることや、そうした可能性を指摘する意見があることは認識していて、予見可能性がまったくなかったとは言いがたい」と指摘しました。

一方で、「3人が当時の知見を踏まえて津波の襲来を合理的に予測させる程度に信頼性や根拠があると認識していたとは認められない。原発の運転を停止する義務を課すほど予見可能性があったとは認められない」と指摘しました。

○「絶対の安全性ではなく合理的な安全性」
また、裁判所は、原発に求められる安全性について説明し、「放射性物質が外部に放出されることは絶対にないというレベルの極めて高度の安全性ではなく、最新の科学的知見を踏まえて合理的に予測される自然災害を想定した安全性の確保が求められていた」という考えを示しました。

○「刑事責任はない」
そのうえで、「事故発生の可能性が限りなくゼロに近くなるように必要な回避措置を直ちに講じることも社会の選択肢としては考えられなくはないが、少なくとも地震の発生前の時点では、法令上の規制や国の指針などが絶対的安全性の確保までは前提としていなかった。東京電力の取締役という責任を伴う立場にあったからといって、法令上の枠組みを超えて刑事責任を負うことにはならない」と締めくくりました。


●判決の概要
<主文>
被告人らはいずれも無罪。

<主な争点>
過失により人を死傷させたとして業務上過失致死傷罪が成立するためには、人の死傷の結果の回避に向けた注意義務、すなわち結果回避義務を課す前提として、人の死傷の結果及びその結果に至る因果の経過の基本的部分について予見可能性があったと合理的な疑いを超えて認められることが必要である。

本件の主たる争点は、被告人らにおいて、福島第一原子力発電所 (本件発電所) に一定以上の高さの津波が襲来することについての予見可能性があったと認められるか否かであり、前提として、@どのような津波を予見すべきであったのか、A津波が襲来する可能性について、どの程度の信頼性、具体性のある根拠を伴っていれば予見可能性を肯認してよいのかという点に争いがある。

<予見可能性の考え方>
前記@については、本件発電所に10m盤 (小名浜港工事基準面からの敷地高さ) を超える津波が襲来することの予見可能性が必要である。

前記Aについては、問題となっている結果回避措置を刑罰をもって法的に義務付けるのに相応しい予見可能性として、どのようなものを必要と考えるべきかという観点から判断するのが相当である。本件で問題となる結果回避義務は、平成23年3月初旬までに本件発電所の運転停止措置を講じることに尽きている。

ところで本件事故の結果が誠に重大であることは明らかであって、本件で問題となっているのは、このような重大な結果の発生を回避するための結果回避義務であるということを、まずもって考慮する必要がある。しかしながら、他方において、現代社会における電力は、ライフラインの一つであって、本件発電所はその一部を構成しており、小さくない社会的な有用性が認められ、その運転停止措置を講じることとなれば、地域社会にも一定の影響を与えるということも考慮すべきである。

また、運転停止という作為がどのような負担、困難等を伴うものであるのかについても考慮して然るべきと考えられる。結果の重大性を強調するあまり、自然現象について想定し得るあらゆる可能性を考慮して必要な措置を講じることが義務付けられるとすれば法令上その設置、運転が認められているにもかかわらず原子力発電所の設置、運転に携わる者に不可能を強いる結果となる。前記津波襲来の可能性があるとする根拠の信頼性、具体性の程度については結局のところ前記のような結果回避義務の内容、性質等を踏まえ、原子炉の安全性についての当時の社会通念を中心として、平成23年3月初旬の時点までにおいて、どのような知見があり、本件発電所の安全対策としてどのような取組が行われ、本件発電所がどのような施設として運用されてきたのかなども考慮した上でこれを決するほかない。

<予見可能性判断の前提となる事実関係>
原子力事業者には法令上の義務又は自主的な対策として、国の示す安全確保のための指針等に従い、原子炉による災害のリスクを常に最大限低減したレベルでの安全性確保が求められていた。そのような中で、東京電力は本件発電所について法令上の許可を得た上で設置、運転していたことは勿論、安全対策の面でも必要と判断される対応をしてきており、本件発電所は地震及び津波に対する安全性を備えた施設として適法に設置、運転されてきた。

もっとも東京電力は、「長期評価」の見解に対しては継続的に検討こそしていたものの、その信頼性には疑義があるとして、これを直ちに安全対策に取り入れるには至らなかった。一連の事実経過に照らすと、10m盤を超える津波襲来の可能性に関する情報として被告人らが接したものはMt8を超えるプレート間大地震(津波地震)が三陸沖北部から房総沖の海溝寄り領域内のどこでも発生する可能性がある旨の 「長期評価」の見解であり、被告人ら3名の予見可能性を検討する上では、「長期評価」 が決定的に重要な意味を持っていた。

<「長期評価」の信頼性>
「長期評価」は具体的な根拠を示さず、そのため専門家、実務家、内閣府によって疑問が示され、一般防災にも取り込まれず、保安院による安全審査等にも取り込まれないなど平成23年3月初旬の時点において客観的に信頼性、具体性があったと認めるには合理的な疑いが残る。

<運転停止措置の容易性又は困難性>
法令に基づく運転停止命令を受けておらず、事故も発生していない状況において本件事故を回避するような方法で、本件発電所の運転を停止するのは、手続的にも技術的にも相当な負担と困難を伴うものであった。

<予見可能性の検討>
原子炉の安全性確保についての原子炉等規制法及びこれを受けた審査指針等における規制の在り方からすると、平成23年3月初旬の時点においては、最新の科学的、専門的知見を踏まえて、合理的に予測される自然災害を想定した安全性の確保が求められていたものと解される。運転停止という結果回避措置それ自体に伴う手続き的又は技術的な負担、困難性も併せ考えれば、本件発電所に10m盤を超える津波が襲来する可能性については、当時得られていた知見を踏まえて合理的に予測される程度に信頼性、具体性のある根拠を伴うものであることが必要であったと解するのが相当である。

被告人ら3名は、条件設定次第では10m盤を超える津波が襲来するとの数値解析結果が出る、もしくはそのような津波襲来の可能性を指摘する意見があるということは認識しており、10m盤を超える津波の襲来を予見する可能性がおよそなかったとはいい難い。

しかしながら、一連の事実経過を踏まえて考えても、被告人ら3名はいずれも平成23年3月初旬までの時点においては、本件発電所に10m盤を超える津波が襲来する可能性について、信頼性、具体性のある根拠を持っているとの認識がなかったとみざるを得ない。

加えて、他の原子力事業者、原子力安全に関わる行政機関、防災対策に関わる行政機関や地方公共団体のいずれもが、「長期評価」を全面的に取り入れることがなく、東京電力社内、他の原子力事業者、専門家、行政機関のどこからも「長期評価」の見解に基づいて直ちに安全対策工に着手し、これが完了するまでは本件発電所の運転を停止すべきである旨の指摘がなかったことに照らせば、被告人ら3名にとって、数値解析結果が出たからといって直ちにこれに対応した対策工に着手し、対策工が完了するまでは本件発電所の運転を停止しなければ本件発電所に10m盤を超える津波が襲来し、炉心損傷等の重大事故につながる危険性があるとの認識は持ち得なかったとしても不合理とはいえない。

そして、このことは、これら関係者にとっても同様であったとみるべきであって、平成23年3月初旬までの時点における原子力安全対策の考え方からみて被告人ら3名の対応が特異なものであったとはいい難く、逆に、このような状況の下で、被告人ら3名に、10m盤を超える津波の襲来を予見して、対策工事が完了するまでは本件発電所の運転を停止すべき法律上の義務があったと認めるのは困難というべきである。

以上のとおり、本件発電所に10m盤を超える津波が襲来する可能性について被告人ら3名がそれぞれ認識していた事情は当時の知見を踏まえ、上記津波の襲来を合理的に予測させる程度に信頼性、具体性のある根拠を伴うものであったとは認められない。

したがって、被告人ら3名において、本件発電所の運転停止措置を講じるべき結果回避義務を課すに相応しい予見可能性があったと認めることはできない。

指定弁護士は、被告人らが、一定の情報収集義務を尽くしていれば、10m盤を超える津波の襲来は予見可能であった旨主張するけれども、被告人らが更なる情報の収集又は補充を行っていたとしても、上記津波が襲来する可能性につき、信頼性、具体性のある根拠があるとの認識を有するに至るような情報を得ることができたとは認められない。

<結語>
事故発生の可能性がゼロないし限りなくゼロに近くなるように、必要な結果回避措置を直ちに講じるということ、社会の選択肢としては考えられなくはない。

しかしながら、少なくとも本件地震発生前までの時点においては、賛否はあり得たにせよ、当時の社会通念の反映であるはずの法令上の規制等の在り方は、絶対的安全性の確保までを前提としてはいなかったとみざるを得ない。被告人ら3名は、本件事故発生当時、責任を伴う立場にあったが、だからといって発生した事故について、法令上の規制等の枠組みを超えて、当然に刑事責任を負うということにはならない。

被告人らにおいて、本件公訴事実に係る業務上過失致死傷罪の成立に必要な予見可能性があったものと合理的な疑いを超えて認定することはできず、本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、被告人らに対しいずれも無罪の言渡しをする。

以上
(以下略)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(ここまで)
 云うまでも無いが「点検不備」などがばれた為など、原発が停止した例はいくつもある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%96%E3%83%AB%E9%9A%A0%E3%81%97%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 

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コメント
1. 2019年9月21日 21:38:32 : LY52bYZiZQ : aXZHNXJYTVV4YVE=[2965] 報告
東電旧経営陣3人に一審で無罪判決 福島原発訴訟原告弁護団が会見
.
videonewscom
2019/09/19 に公開
http://www.videonews.com/
プレスクラブ(2019年9月19日)
https://www.youtube.com/watch?v=k2Ds2UggVOM

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