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汚染水・長期保管は問題の先送りではない
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2019/08/25(日) 19:44:47 めげ猫「タマ」の日記
福島県の地方紙が福島第一原発汚染水の長期保管について
「長期保管は問題の先送りでしかない。」
と8月23日付の社説で論じていました(1)。でも、保管後の最終処分の方策について、決めておけば問題の先送りでありません。
福島第一では地下水が山から流れて来て、原子炉やタービン建屋(以下建屋と略す)に流入しています。あるいは海までに達しています。原子炉建屋にデブリ等がむき出しで放置されています。デブリ等に触れた水は放射能に汚染されます(2)。汚染されれば海に流せないので、これを汲みあげ浄化装置を通した後で海に流しています。ただし全ての放射性物質が浄化できる訳ではありません。東京電力はトリチウムは浄化できないとしています(3)。以下に福島第一汚染水のトリチウム濃度を示します。
トリチウム濃度が下がりだした福島第一汚染水
※(4)(5)にて作成
図―1 福島第一汚染水のトリチウム濃度
図に示す様に最新では1リットル当たり100万ベクレル程度です。国の排水基準は1リットル当たり6万ベクレルですので(6)、20倍弱です。このままでは、海に流せないので東京電力は福島第一構内に汚染水タンクを作り保管しています。
どんどん増える福島第一汚染水
※(7)(8)を集計
図―2 どんどん増える福島第一汚染水
福島第一の敷地の広さには限界があり、何時かは行き詰るとの見方があります。これを避ける為に、経済産業省は「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」(以下小委員会と略す)を立ち上げ、処分方法の検討を進めています(9)。そして昨年(2018年)8月末に公聴会が開かれました(10)。公聴会の資料(11)には「トリチウムは、水素の仲間で、弱い放射線を出す物質。自然界にも存在し、大気中の水蒸気、雨水、海水、水道水にも含まれている。」等のトリチウムの安全性を強調する文言は記載されており(無論、リスクを示す内容はありません)、さらに5つの処分方法を提示した後で
「海洋放出、水蒸気放出については、規制基準が存在し、国内外において放出の実績があるが、地層注入については適用される既存の基準がなく、長期モニタリングの方法も確立されていない、水素放出については、前処理やスケール拡大について研究開発が必要といった課題がある。なお、地層注入、地下埋設についてはモニタリングが将来にわたり必要な可能性あり。」
と海洋放出の優位性を強調しています。資料を見る限り、公聴会で「海洋放出」のお墨付きを得て、一気に海洋放出に進むつもりだったようです。
ところが「海洋放出」に反対する意見が続出して(10)目論見はとん挫してしまいまいた。汚染水の海洋放出は福島の皆さんにも不評です。福島県民を対象した世論調査では反対が65%と多く、賛成は19%でした(12)。
公聴会後の3回ほど小委員会が開かれたのですが、結論には至らなかったようです。そして昨年12月28日の第12回を最後に8月9日まで、7ヶ月以上開かれませんでした(9)。ところが8月9日に開かれました(13)。ここに、東京電力は2022年夏には、タンクがいっぱいになるとの資料を提出しました(14)。
3年後に福島第一の汚染水タンクが一杯となるとする東京電力資料
※1(14)を引用
※2 ALPS処理水は「汚染水」の最終形態(3)
図―3 2022年夏には、タンクがいっぱいになるとの東京電力資料
また、福島県の地方紙・福島民報は
「原子炉建屋への雨水の流入は汚染水を増大させ、保管するタンクの満水となる時期が早まる懸念も出ている。」
と報じ(15)、場合によっては汚染水タンクが満タンになる時期が東京電力資料(14)より早まる可能性を報じています。
タンク満水が早まる懸念を報じる福島県の地方紙・福島民報
※(16)を8月25日に閲覧
図―4 タンク満水が早まる懸念を報じる福島県の地方紙・福島民報
早急((=^・^=)の感覚では今年中)に処分方法を決めないと、汚染水が溢れ出てしまいかねません。これについて福島民報は「【トリチウム水処分】さらに負担強いるのか(8月23日)」との社説で
「長期保管は問題の先送りでしかない。」
と論じていました(1)。いきなり海洋放出をとも取れる主張です。でも、期限を定めそれまでに汚染水の処理を完了する方策を考えれば、先送りではありません。
図―2に示しように、2018年5月以降は汚染水のトリチウム濃度が減少傾向になっています。これは汚染水へのトリチウムの溶け出しがとまり、薄められるなどして減少に転じたためと思います。トリチウム濃度が減少する要因は、第一に建屋に汚染水が流れ込みトリチウムが薄められていく。第二に半減期よる減衰でトリチウムの量が自然に減っていくです。トリチウムは12.3年で半分に、26.6年で4分の1に、41年で10分の1になります(17)。福島第一の汚染水はタンクの中に保管されている汚染水と、建屋から処理装置また建屋と循環している汚染水の二つに分けられます(7)(8)。東京電力が発表している汚染水の濃度が循環している部分です(4)(5)。この部分は新たに汚染水として汲み上げられます。2018年6月19日の汚染水のトリチウム濃度は1リットル当たり220万ベクレルです(18)。ほぼ同じ6月21日の循環いている部分の汚染水量は62,198立方メートル(すなわち6,219.8万リットル)です(19)。この時点で循環しているトリチウムの量は137兆(220万×6,219.8万)です。トリチウムの半減期は12.3年(17)、1年は365.4日(20)なので、2018年6月18日からt日後のトリチウムは
137×0.5t÷12.3÷365.4兆ベクレル
になります。
2018年8月14日の汚染水総量は東京電力の発表(21)を集計すると114.1477万立方メートルです。2019年8月16日では(23)119.2414万立方メートルです。この間364日間で50,937立方メートル、1日当たりで140立方メートル増えています。汚染水を汲みあげないとすれば、t日後には循環している汚染水の量は
62,198+40t 立方メートル
になっています。すると2018年6月19日よりt日後には、汚染水のトリチウム濃度は1リットル当たりで
137×0.5t÷12.3÷365.4兆÷(62,198+40t)÷1000 ベクレル
になります。最後の「÷1000」は1立方メートルが1000リットル(24)なので付けました。
以下に実測値と比較を示します。
見込みと一致している福島第一汚染水のトリチウム濃度の実績
※1 実測値は(4)(5)による。
※2 計算方法は前述と通り
図―5 汚染水のトリチウム濃度の見込みと実績
図に示す様にほぼ一致しています。この手法で今後のトリチウム濃度を予測できます。
さらに言えば循環しているトリチウムの量がさらに減れば、汚染水はより薄まるのでトリチウム濃度はより早く下がります。2019年7月5日には汚染水のトリチウム濃度は1リットル当たり100万ベクレルになりました(26)。近々の7月4日の循環している汚染水量は43,036立方メートルです(27)。東京電力は2018年末に42,000立方メートルだった建屋内の汚染水を2020年3月末には12,000立方メートルに、2020年末には6,000立方メートルに減らすと主張しています(28)。循環している汚染水には他にサンプリング用のタンクに一時貯められているものもあります。2018年12月27日時点での循環している汚染水の量は43,162立方メートルで1,162立方メートル多くなっています。そこで2020年3月末、年末の汚染水量には建屋内の汚染水量の他にこの値を加えることにします。こうした補正を加え今後の汚染水のトリチウム濃度を見積もりました。
2028年には1リットル当たり1500ベクレルを下回りそうな福島第一汚染水のトリチウム濃度
※ 計算法および元データは前述の通り
図―6 汚染水のトリチウム濃度の見込み
これからも下がって行きます。
東京電力は福島第一の敷地から地下水を汲みあげています(30)。以下に示しますます。
福島第一の敷地の地下水を汲み上げる東京電力
※(30)にて作成
図―7 サブドレンと地下水ドレン
一つは建屋の周辺から地下水をくみ上げるサブドレンです。これは建屋への地下水の流れ込みを防止するために実施されています。また、海岸にには壁が設けられていますが、壁に向かって地下水が流れ込んでいきます。すると壁の手前で地下水が溜まって放置すると溢れてしまうので、これを汲みあげています(30)。汲み上げた地下水は保管せずに、浄化装置を通した後で海にながしています(31)。流す水にはトリチウムが含まれています(33)。排水基準は1リットル当たり1,500ベクレルです(32)。図に示す様にそのうち、この値を下回ります。そうすれば基準をクリアするので、浄化装置を通した後で海に流す事ができます。あと8年間、汚染水を貯めておけば、後は海に流せます。
福島県の地方紙が福島第一原発汚染水の長期保管について
「長期保管は問題の先送りでしかない。」
と8月23日付の社説で論じていました(1)。でも、現行基準を下回るまでの保管で、それ以降は海に流すなどの先を決めれば問題の先送りではありません。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
福島第一汚染水の最終処分をどうするか近々の課題です。最終的には放出しかないと思いますが、そのタイミングです。今すぐなのか、トリチウムが下がるまで待つかです。下がるとしたらどれくらいまで待つかです。法定限度の1リットル当たり6万ベクレルなのか、現行基準の1,500ベクレルなのか、あるいはその中間なのかです。
もう一つ、議論されてよい話に「何処で」です。技術的には、なにも福島に保管する必要もないし、福島で廃棄する必要もありません。ただし、(=^・^=)の住む街に福島の汚染水を持ってくるような事があれば逮捕覚悟で阻止します。これは他も同じだと思います。福島第一の汚染水は福島で処理(保管なし海洋投棄)しかありません。これでは福島の皆様は不安だと思います。
福島を代表する果物にナシがあります(34)。福島県福島市は市町村では日本一の産地です(35)。今年も出荷が始まりました(36)。福島のナシはおいしいとの事です(37)。福島県は福島産ナシは「安全」だと主張しています(38)。でも、福島県福島市のスーパーのチラシには福島産ナシは無しです。
他県産はあっても福島産ナシが無い福島県福島市のスーパーのチラシ
※(39)を引用
図―7 福島産ナシが無い福島県のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県福島市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
http://mekenekotama.blog38.fc2.com/blog-entry-2999.html
(1)【トリチウム水処分】さらに負担強いるのか(8月23日) | 福島民報
(2)汚染水対策の状況 - 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社
(3)汚染水の浄化処理 - 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社
(4)福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果|アーカイブ|東京電力中の「水処理設備の分析結果⇒水処理設備の放射能濃度測定結果 」
(5)福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果アーカイブ|データ|東京電力ホールディングス株式会社の「水処理設備の分析結果」
(6)周辺の分析結果ー分析結果 - 廃炉プロジェクト|データ|東京電力ホールディングス株式会社
(7)プレスリリース|リリース・お知らせ一覧|東京電力ホールディングス株式会社ちゅの「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について」
(8)福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について - 廃炉プロジェクト|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社
(9)福島第一原子力発電所における汚染水対策 (METI/経済産業省)
(10)多核種除去設備等処理水の取扱いに係る説明・公聴会 (METI/経済産業省)
(11)(10)中の・多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 説明・公聴会資料(pdf:5518KB)
(12)復興への道筋「ついた」52% 福島県民対象の世論調査:朝日新聞デジタル
(13)多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第13回)‐配布資料(METI/経済産業省)
(14)(13)中の多核種除去設備等処理水の貯留の見通し
(15)第一原発汚染水 集中豪雨の対策急務 タンク満水早まる懸念も | 福島民報
(16)福島民報社
(17)半減期 - Wikipedia
(18)福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果(2018年7月
中の2018年7月19日 水処理設備の放射能濃度測定結果
(19)福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第358報)|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社
(20)年 - Wikipedia
(21)福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第366報)|プレスリリース|東京電力ホールディングス株式会社
(22)2019年のアーカイブ|公表資料|東京電力ホールディングス株式会社
(23)中の8月⇒21日
(24)リットル - Wikipedia
(25)周辺の分析結果ー分析結果 - 廃炉プロジェクト|データ|東京電力ホールディングス株式会社
(26)(25)中の水処理設備の分析結果⇒22日
(27)(23)中の7月⇒8日
(28)第73回特定原子力施設監視・評価検討会 | 原子力規制委員会中の資料4 :建屋滞留水処理の進捗状況について [東京電力]【PDF:2MB】
(29)(23)中の1月9日
(30)サブドレン・地下水ドレン 1 - 廃炉プロジェクト|ビジュアルコンテンツ|東京電力ホールディングス株式会社
(31)サブドレンからの地下水汲み上げ - 廃炉プロジェクト|廃炉作業の状況|東京電力ホールディングス株式会社
(32)(25)中の「サブドレン・地下水ドレンに関するサンプリング」
(33)(31)中の「一時貯水タンク・集水タンクの分析結果」
(34)ふくしまイレブンエッセイ - 福島県ホームページ
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