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「原発なくそう!九州玄海訴訟」
4月19日、第29回口頭弁論が開かれました。今回は、30km圏内に位置す
る長崎県壱岐市で「玄海原発再稼働に反対する市民の会」の代表・中山忠治さん
に意見陳述していただきました。
1 はじめに
私は玄海原発から海を隔て、北側25キロの位置にある壱岐島の住人で、中山忠
治と申します。10年前に定年退職しましたが、現職中は外国航路船のエンジニ
アとして世界中をまわってきました。
今は、観光と環境をテーマに壱岐の島の活性化を目指して結成した「壱岐島おこ
し応援隊“チーム防人”」というボランティア団体と、「玄海原発再稼働に反対す
る市民の会」の代表として活動しております。また、災害支援活動等を行う自主
防災組織、壱岐市防災士会の役員でも有ります。
2 原発事故は人災事故である
福島第一原発事故は、私共、旅客の生命と財産を預かる船舶機関士の常識からし
て全く考えられない人災事故としか思えません。
自然の海を相手に運航している船舶では、あらゆるトラブルを想定して二重、三
重の対応策を講じて訓練します。現職のころ、毎月1回、故意に発電機を止め、
その後の復旧対処の訓練をしていました。海の上で電気を失えば、即座に命にか
かわります。その為、命を守るための訓練はいつでも真剣なものでした。
船舶がこうですから、放射性物質発生器とも言える複雑で極めて危険な原発
は、船舶とは比べ物にならないリスクマネジメントが要求され、そのリスクに対
応する装置や訓練が完璧になされているものと信じていました。
ところが福島第一原発事故では、リスクへの対応がおざなりにされ続けた挙句、
大惨事へと至ったのです。津波は言い訳にならないと思います。僅かでも可能性
のあることならば、何であれ対処できるようにしなければならないのです。
地震、津波は確かに防ぎようがない天災ですが、福島第一原発事故は呆れる
ばかりの人災としか言いようがありません。私は、命を守ることを第一に考えて
きたエンジニアとして、福島第一原発事故が腹立たしくてなりません。
3 かたちばかりの避難訓練
玄海原発の目の前25キロに人口2万7000人の壱岐の島があります。
トラブルが発生し放射能が飛散したら風向きによっては30分で全島が被曝しま
す。
現在、災害時の対策として30キロ圏外への避難訓練や屋内退避施設の建設など
が行われています。しかし、離島である壱岐から全島民が安全な場所へ避難する
には5日以上の時間がかかります。
一昨年、昨年と、長崎県と合同で2回の避難訓練が実施され、防災士会として参
加しました。しかし、訓練とは名ばかりで、現実とは全くかけ離れたものでした。
例えば、要介護者をバスに乗せて移送する訓練では、要介護者役は僅か2〜3人。
しかも健常者が役を務めました。要介護者役は、予め決めてある場所に待機し、
用意したバスに乗せられて移動しました。また、避難所内で放射能の線量測定を
する訓練では、防護服を着たまま建物内に入るため、実際であれば避難所内に放
射性物質を持ち込むとしか思えない訓練でした。
4 避難できても、私たちは生活できない
例え、島外に全員避難したとして何処へ向かうのですか。いつ帰れるのですか。
被曝した島には誰も帰還出来ません。
昨年の3月と11月に東京電力福島原発の事故現場を訪れました。その時の双葉
町の国道の線量は2.222μSv/hで壱岐の50倍もの線量の中、8年前の津波
被害がそのまま放置されていました。このように現在の福島の現実を見ても、そ
の間、何処で生活し、誰が面倒を見てくれるのですか。よしんば帰還出来たとし
てもそのような島には観光客など誰一人来ません。観光も漁業も農業も壊滅的な
被害を被ります。それだけでも島民の生活は成り立たなくなります。
5 避難などしなくてよい対策、玄海原発稼働停止が求められている
昨年の玄海原発再稼働前に、壱岐市で、九電や原発関係省庁の説明会がありまし
た。国の担当者は「絶対的な安全性はない、幾らかのリスクはある、そのために
色々な対策を講じている、避難の為の費用も用意している」と説明しました。
質疑応答では多くの島民から「どのように逃げればいいのか」「壱岐に放射性物
質が飛んで来たらどうするのか」「本土との送電線の施設は稼働ありきではない
のか」など様々な質問が飛びました。しかし、納得できる回答はなく、閉会予定
時間を1時間半も超過する事態となりました。
絶対的な安全性がなく、幾らかのリスクがあり、しかも避難もできない。それな
らば、稼働を停止するほかないと思います。
私たちは、事故が起きた場合の対策や、避難のための費用を求めている訳ではな
いのです。
壱岐市防災士会の役員は、この説明会の後、会の方針として、玄海原発稼働停止
を求める方向に舵を切ることを決めました。
事故が発生してからの対応を試みるのではなく、発生の源を断つのも防災士とし
ての役目と心得たからです。
6 最後に
子や孫に、この掛け替えのない豊かな自然と歴史に溢れた故郷の島を残す、その
為には私は残りの人生の全てを掛けて脱原発に向けて戦います。
裁判官、どうか、私ども島民の切なる願いを聞き入れて頂き、玄海原発の稼働を
即刻、停止して下さい。
以上
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