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2024年5月28日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/329806
中国内陸部の陝西(せんせい)省延安市に属する延川(えんせん)県梁家河(りょうかが)村に10年ほど前、新たな「革命の聖地」ができた。巨大テーマパークのように整備された村には連日、数千人の共産党員が押し寄せる。習近平(しゅうきんぺい)総書記(国家主席)が青年期を過ごし、農作業に汗水流した土地を見学するためだ。
習氏は1969年から7年間、この村で暮らした。北京の中学校を卒業したばかりの15歳の少年は、毛沢東(もうたくとう)主席が発動した「文化大革命」によって極貧の村に送られた。
黄土高原にある村の施設は修復されている。習氏が寝泊まりした横穴式住居「窯洞(ヤオトン)」、水をくんだ井戸、食事を作ったかまど…。すべてが「聖域」扱いで、文革史料館のような立派な展示室もできた。
76年まで10年に及ぶ文革は1千万超の国民の命を奪い、社会秩序は崩壊。後継のケ小平(とうしょうへい)氏はその反省から「個人崇拝」を厳禁したはずだった。
ケ氏は78年に改革開放政策を導入し、30年ほどで急速な経済成長を成し遂げた。
都市部から虐げられてきた農村部は2006年に大転換を迎える。農業関連税がすべて廃止されたためだ。財政に余裕が生まれた共産党政権は本気になって農村改革に取り組み「2等国民」と呼ばれた農民の生活を一変させた。
中国の農村社会を研究する田原史起(ふみき)・東大大学院教授は「中央政府の資金が農村に投入され、さまざまな補助金が出るようになった。各家庭にバイクが行き渡り、いまは3軒に1軒は自家用車を持つまで豊かになった」と話す。
田原教授の近著「中国農村の現在」(中公新書)は各地の農村に住み込んで調査を重ねた力作だ。同書によると、農村居住者を抱える「県域社会」は総人口14億人のうち約10億人を占めるという。
中国は22省・4直轄市・5自治区の1級行政単位の下に市―県―郷―鎮―村の行政組織があり、各級に共産党支部が置かれる。県級以下で平均人口約50万の県域社会は2千カ所以上ある。
梁家河で苦労した習氏は28歳で河北省正定(せいてい)県の党幹部に就任。福建省、浙江省などの地方で25年のキャリアを積んだ。農村を熟知し、農民の統治手法を誰より心得ている。
「県域住民は『大きな田舎』の一員として(中略)現状肯定のぬるま湯に浸り、安定感に身を委ねる」(同書)。結果的に10億の県域住民が習近平政権による一党独裁を支える構図が出来上がった。
中国には9804万人(22年末)の党員も。3割弱は農漁民で、地方幹部として末端の村まで目を光らせてきた。
過酷な都市封鎖、ハイテク機器を駆使した「ゼロコロナ政策」で監視・管理社会をほぼ完成させた中国。不動産バブル崩壊もあり、リベラルな富裕層は海外脱出を目指す。
国際競争にさらされる都市エリート層と若者の政権への不満は募るが、10億を抱える県域社会の岩盤支持が揺らぐ気配はない。(論説委員)
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