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中国と韓国がぎくしゃく?岐路に立つ「戦略的協力パートナー」/nhk
2022年9月13日 15時46分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220913/k10013815521000.html
中国と韓国が国交を樹立してから、2022年8月で30年。中韓両国は、互いを「戦略的協力パートナー」と位置づけ経済を中心に関係を強化してきました。
しかしいま、韓国でアメリカとの同盟関係の強化を目指すユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が発足し、両国関係は岐路に立っていると言われるようになりました。
安全保障ではアメリカ、経済では中国に依存する韓国。
対立が深まる2つの大国の間で模索する韓国の実情を取材しました。
このうち北京では、中国の王毅外相が習近平国家主席のメッセージを代読しました。
「戦略的な意思疎通を強化し、30周年を新たな出発点にして大局的な情勢を把握し、妨害要素を取り除き、協力を重視し、よりよい未来をともにつくり、両国と国民が恩恵を得られるようにしていこう」
一方、ソウルでは、パク・チン(朴振)外相がユン大統領のメッセージを読み上げました。
韓国 パク・チン外相
韓国 パク・チン(朴振)外相
「今後は相互尊重の精神を元に、経済安全保障や環境、気候変動など多様な分野で実質的な協力を強化し、国民が体感できる具体的な成果を達成していくことを望む」
友好関係を演出した式典でしたが、韓国メディアによりますと北京での式典の出席者はおよそ200人、ソウルはおよそ100人で、いずれも10年前より大幅に減ったということです。
国交樹立30年 いま両国は
中国と韓国が国交を樹立したのは、ソビエトの崩壊から8か月後の1992年の8月24日です。
それまで、中国は朝鮮戦争をともに戦った北朝鮮との関係を重視し、一方の韓国は同盟国・アメリカとの連携を深めていましたが、冷戦終結をきっかけに関係強化にもかじを切ったのです。
国交樹立後、中韓の経済的な関係は深まり、両国の貿易総額はこの30年でおよそ50倍へと拡大しました。
韓国にとっては中国が最大の貿易相手国になり、経済的な依存が際立っています。
中国で販路拡大を目指せ! 韓国に最も近い街の見本市
海を隔てて韓国に最も近い中国の都市から中韓関係の現場を見ました。
山東省威海で8月に国交樹立30年に合わせて開かれた大規模な見本市。
威海市政府と韓国の総領事館が共同で主催し、韓国企業を中心に700社余りが参加し、製品やサービスをアピールしました。
威海で自動車部品関連の会社を経営する、チョン・ドングォン(鄭東権)さんに話を聞きました。威海の韓国人会の会長も務めています。
チョンさんは2005年に、自動車のカーナビゲーションシステムなどで使うケーブルを製造する会社を作り、韓国の大手自動車メーカーなどに納品しています。
威海で自動車部品関連会社経営 チョン・ドングォンさん
「韓国と最も近くその日にモノが行き来できる物流の強みや人件費の安さもあり、中国に進出した。中国市場は爆発的に拡大していて、常に成長の可能性が大きい」
中国で事業を始めてからの17年間。当初と比べて、売り上げはおよそ10倍、従業員の数もおよそ50人から200人へと増えました。
中国で生産が盛んな電気自動車のニーズも高まり、新規の顧客を開拓していて、コロナ禍でも、毎年およそ3割ずつ売り上げを伸ばしているといいます。
チョン・ドングォンさん
「お隣さんのように会話を交わしながら、お互いを信頼し、その信頼を基に協力していけば、よりよい未来が構築できると考えている」
冷ややかに迎えた韓国
一方、韓国メディアは30年の節目を両国関係の「分かれ道」「ターニングポイント」などと冷ややかに報じました。
理由として大きく取り上げられているのは、韓国の若者を中心に広がる対中感情の悪化です。
8月22日、有力紙の東亜日報は大学の研究機関や世論調査機関と合同で韓国の20代・30代を対象に行った調査の結果を発表しました。
それによりますと、外国に対する好感度を10点満点で尋ねたところ、中国は2.73でした。アメリカの6.76と比べて3分の1程度だったほか、日本(3.98)や北朝鮮(2.89)よりも低くなりました。
また、中国との関係がぎくしゃくした理由として最も多かったのが「韓国に対する中国の高圧的な態度や外交」で、全体の半数を占めました。
このほかに「韓国の同盟国・アメリカと中国の対立」「政治体制の違い」などが挙げられました。
ソウル市内で若者に聞いてみました。
20代男性
「力の論理で周辺国を制圧しようと動いているように見える。自分たちにとって脅威だと思う相手には経済で報復しているし」
中国語を学ぶ女子大学生
「関係はよくならなければいけないと思うけど、そのためには互いの配慮が必要。でも中国はそういう配慮をしなさそう」
30代女性
「新型コロナの感染が拡大した上海で外出制限を厳しくするという強圧的な政策をとっていた。個人の自由が大事な私たちにとってはとても心配」
韓国へ強まる中国からの圧力
世論調査で回答が多かった、中国の「高圧的な態度や外交」。
それが強く印象付けられたのが、アメリカの迎撃ミサイルシステム「THAAD(サード)」の韓国への配備に対する反発でした。
韓国に配備されたTHAAD
2016年に当時のパク・クネ(朴槿恵)政権は北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対応するためにTHAADの配備を決めました。しかし中国は「中国軍も監視されるおそれがある」と主張し猛反発。
韓国製品の不買運動が起きたほか、中国から韓国への旅行を事実上中止したり韓国文化の中国への輸入も厳しく制限したりと、友好ムードは一気に悪化しました。
翌年に発足したムン・ジェイン(文在寅)政権は北朝鮮との関係改善のためにも中国との関係は重要だとして、THAADについて「やらない」とする3つの項目を打ち出しました。
ムン・ジェイン政権は「3つのNO」を打ち出す
追加の配備をしない、アメリカのミサイル防衛システムには加わらない、そして日米韓3か国の安全保障の連携を軍事同盟に発展させないという内容でした。
いわば「3つのノー(NO)」を示したことで中国側は矛を収めました。
このTHAAD、パク政権が決めた韓国南東部での配備は地元住民などが「北の攻撃の対象になりかねない」などとして反発しているため、基地の整備に必要な資材の搬入ができず、正常な運用ができていません。
ことし就任したユン大統領
ことし就任したユン大統領は選挙公約で掲げた「追加の配備」の前に、まずは現在のTHAADの運用を正常化させるとしています。
これに対して中国政府は、「3つのノー」にとどまらず、運用の正常化をしないことも「韓国政府は正式に対外的に公表している」と主張し、両国の約束事だとし強くけん制しています。
経済でも中国が...
韓国の動きに対して、中国が神経をとがらせている問題はもう1つあります。
アメリカが日本・韓国・台湾との間で構築を目指す、半導体の供給網の連携です。
アメリカの設計・開発、韓国や台湾の生産能力、それに日本の素材供給、こうしたそれぞれの強みを生かして世界の半導体市場で優位に立とうとしています。
韓国政府は「特定の国家を排除するものではない」としながらも、この連携への参加は正式には表明していません。
参加が決まった場合、中国がどのように反応するかに関心が集まるでしょう。
対等な関係を目指す韓国
韓国のパク・チン外相は8月9日に王毅外相と会談した際や、24日の記念式典でのあいさつで、論語を引用しました。
「和而不同」。
和して同ぜず、協調はしても安易な同調はしないという意味です。
その背景について、韓国での中国研究の第一人者、ソンギュングァン(成均館)大学のイ・ヒオク(李煕玉)教授が解説してくれました。
「韓国はTHAADでの報復措置を通じて中国の独断的・攻撃的な外交を目の当たりにし、これを受け入れてきたが、ユン政権はそれが正常ではないと考えている。『グローバル中枢国家』という先進国型の外交を目指しているため、中国に対して対等な関係に再構築したいと考えているのではないか」
ただイ教授は、THAADについて中国は簡単に妥協することはないと見ています。
イ・ヒオク(李煕玉)教授
「習近平体制は外交安全保障政策でTHAAD配備反対を明確にしており、話し合いを通じての解決は難しいだろう。今後中国との関係が悪化した際にTHAADの問題が再浮上する可能性はある」
そして今後の中国については、次のような見通しも話していました。
イ・ヒオク(李煕玉)教授
「中国に対する否定的な見方も広がっている。アメリカのインド太平洋戦略やIPEF(インド太平洋経済枠組み)、AUKUS(アメリカ・イギリス・オーストラリアの安全保障の枠組み)、半導体供給網などは中国に圧力となっている。こうした状況で、地政学的にも経済的にも近い韓国も中国から離れるとなると、中国の地域戦略において大きなマイナス要因となる。このため韓国を取り込もうとする動きが出てくるだろう」
今後、中国はどう動く
実はこれまで、中国では、韓国との関係について、アメリカの影響力を弱め、経済的な依存を強めさせたという点で「中国外交の成功モデル」と見る意見もありました。
それだけに、対等な関係を目指すユン政権の姿勢には神経をとがらせています。
習主席が式典でのメッセージに込めた「妨害要素を取り除き」という文言はアメリカを念頭に置いたとの見方があります。
中国のある専門家は「中国をけん制する、アメリカ主導の枠組みに積極的に便乗する場合は、中韓関係は重大な危機に直面するだろう」と極めて厳しい見通しを示しました。
中国ではTHAAD配備をめぐる緊張から5年過ぎた現在でも、韓国のドラマや映画などの輸入を制限する措置が続いています。経済依存という、いわば韓国の弱点を握りながらユン政権に「アメリカに寄りすぎるなよ」と迫っていくものとみられます。
2022年9月は、日本と中国の国交正常化から50年。
日本がこれからどう中国と向き合っていくか。中国と韓国の変容する関係から考えていくことも参考になると思います。
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