<■102行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> 韓国・尹政権「最悪の崩壊」で日本に起きること 日韓関係の終わりの始まりになってしまうのか 東洋経済 : ダニエル・スナイダー : スタンフォード大学講師 2024/12/06 7:30https://toyokeizai.net/articles/-/844730 韓国の尹錫悦大統領による衝撃的なクーデター未遂事件は、韓国国民を、そして世界を驚かせた。韓国は進歩派と保守派の激しい政治的分裂に巻き込まれていたにもかかわらず、戒厳令の宣言は韓国人を唖然とさせ、同盟国であるアメリカと日本にも衝撃を与えた。 数時間の間、韓国は軍隊と大勢のデモ参加者との間で暴力的な衝突が起こりかねない瀬戸際に立たされたかにみえた。が、全会一致で戒厳令を覆すという国会の決議と、市民社会、メディア、そして保守的な与党でさえも、弾圧の脅しに屈しないという姿勢は国会の外で大反響を呼んだ。 政権交代で外交政策が大きく変わる 民主主義を謳歌する一方で、今後数カ月の道のりは極めて不透明だ。尹大統領は続投を望んでいるが、今週末には国会で弾劾の採決が行われ、その日は大勢のデモ隊がソウルの街を埋め尽くすだろう。 どのような結果になろうとも、尹大統領の統治は事実上終わる。早期の大統領選挙は、「共に民主党」の李在明代表の勝利につながる可能性が高い。 多くの疑問が残されたままである。なぜ尹大統領がほとんど何の準備もせず、ごく限られた側近の支持しか得ずに、このような大きな危険を冒したのか。軍部は尹大統領の反乱をどれほど支援する準備ができていたのか。尹政権の成功に多大な投資をしてきたアメリカ政府が、なぜ油断したのかーー。 しかし、はっきりしているのは、尹政権が進歩的な「共に民主党」に交代することで、韓国の外交・安全保障政策の重要な分野に真の変化がもたらされるということである。 国会に提出された弾劾決議案の重要な段落には、民主党が何を目指すのかを示すヒントが隠されていた。尹大統領に対する重大な罪、とりわけ戒厳令を行使しようとした違法行為とともに、決議案は大統領の外交政策をこう非難している。 「いわゆる価値外交という名目で地政学的バランスを無視したまま、北朝鮮や中国、ロシアを敵視し、日本中心の奇妙な外交政策を主張し、日本に傾倒した人物を政府の要職に任命するなどの政策を展開することで、北東アジアで孤立を招き、戦争の危機を引き起こし、国家安全保障と国民保護義務を放棄してきた」 尹政権の政策を一切踏襲しない可能性 韓国政治をよく観察している人たちは、これが、尹大統領が去った後、李氏が大統領になった場合、進歩的な外交政策がどのようになるかを示すシグナルだと読んでいる。 「これで野党は、外交政策を含むすべての尹政策を一掃する動機がさらに強まった」と、檀国大学のベンジャミン・エンゲル客員教授は語る。 「正常な民主的移行が行われていれば、尹大統領の外交政策が成し遂げたことの是非や、残すべきもの、修正すべきものについて、多少なりとも健全な議論が行われたかもしれない。今回は、そうはならないだろう」 弾劾決議案が明らかにしているように、民主党の最重要課題のトップは日本との関係である。民主党は、韓国が戦時中の強制労働者問題などで日本に譲歩を繰り返し、見返りを得られなかったとして、尹大統領の対日政策を厳しく批判してきた。日韓関係の改善は国民的な支持はあるものの、今回の致命的な失策によって覆される可能性もある。 「野党が政権を握れば、現在の韓日関係は、韓米関係同様、非常に荒れたものになるだろう」と、現在も日本政策に熱心な元韓国政府高官は予測する。特に、日韓米三国間の安全保障協力の進展は、「もはや成り立たなくなるだろう」。 韓国での政権交代の可能性は、石破茂首相に難題を突きつける。石破首相は、国交樹立60周年記念事業の一環として、1月の訪韓に向けて準備を進めていた。石破首相自身、韓国との緊密な関係を提唱しており、日本の戦時下と植民地支配の過去の問題に直面することに積極的である。 少なくとも、この努力は数カ月の政治的不確実性に対処しなければならないだろう。最悪の場合、進歩的な政権が誕生し、韓日関係の改善を遅らせようとするかもしれない。 アメリカでは、バイデン政権によるより強固な日米韓関係の構築に関心がないドナルド・トランプ政権が復活することも日韓関係に水を差しかねない。 石破政権を襲う「パーフェクトストーム」 「日本政府は今、"パーフェクトストーム(破壊的な事態)"に備えなければならない」と、コンサルティング会社ジャパンフォーサイトのトビアス・ハリス代表は言う。 「そして日本は、アメリカの同盟関係に懐疑的なだけでなく、多国間交渉よりも二国間交渉を好み、三国間協力の強化にほとんど関心を示さないアメリカ大統領に直面することになる」 進歩派はまた、弾劾決議が示すように、韓国を事実上の中国封じ込め戦略に引き込もうとするアメリカの試みにも批判的だ。トランプ大統領がこの方向を強く推し進め、防衛費分担の引き上げなど同盟への要求を出せば、抵抗にあうかもしれない。 もっとも、「アメリカとの同盟は韓国で非常に支持が高く、李氏や他の進歩的な人物が関係を損なおうとすることはないのではないか」とエンゲルス教授はみる。「李氏は米中競争においてより中立的な立場になるだろう。リベラル派といえども中国に近づくには限界があるし、韓国の世論も反対するだろう」。 トランプ大統領と新たな韓国政権の間で収束する可能性のある分野の1つは、北朝鮮の金正恩総書記と、北朝鮮との外交的関与を再開する試みかもしれない。文在寅政権は、金正恩総書記との交渉において、第1次トランプ政権のよきパートナーだった。もっとも、韓国側で政権交代があったとしても、北朝鮮側が関心を示すかどうかは定かではない。 「北朝鮮の現在の路線は、誰が政権に就こうが南は敵国だというものだ」と、北朝鮮の専門家で高麗大学講師のフョードル・テルチツキー氏は語る。 「(韓国の)前の左派政権は、北朝鮮に対して実質的なものを何も提供できなかった。だから、北朝鮮(というより金正恩個人)は韓国に対する希望を失ってしまったようだ。とはいえ、少なくとも左派政権であれば、対北朝鮮政策において攻撃的ではなく、ひょっとしたら屈従的でさえあるかもしれない」 実際、尹大統領は韓国で急激な反共主義への転向を主導してきた。戒厳令宣言の中で同大統領は、韓国政府を掌握しようとする親北朝鮮勢力に対抗するために行動していると主張した。 日韓の協力も「台無しになる」可能性 このような見方は、尹大統領を自分たちの救世主とみなす超保守界隈でここ数年流布していた。しかし、共産主義者に矛先を向けようとする同大統領による試みは「裏目に出て、指導力を損なうだろう」と前述の元高官は言う。 今のところ、尹大統領は権力にしがみつこうとしているが、「最近、野党や与党内からも、彼と彼の妻に対する全面的な政治的攻撃があるため、メンタルは逼塞(ひっそく)状態にある」とこの元高官は語る。 自暴自棄な行為は悲しいことに、尹大統領の困難な任期中の最も重要な成果の1つである日本との関係回復と、両国間の真剣な協力の始まりを台無しにしてしまうかもしれない。
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