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2023年7月31日 19時31分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/266817
【ソウル=木下大資】北朝鮮が韓国を名指しで批判する際に、以前は使っていなかった「大韓民国」という正式名称で呼ぶ事例が急増している。7月に金与正キムヨジョン朝鮮労働党副部長が談話でたびたび使用し、同月27日の軍事パレードで演説した強純男カンスンナム国防相も言及した。韓国では「南北関係を国家対国家の関係に転換しようとしている」との見方が強まっている。
◆7月10日に初めて公式使用
北朝鮮は従来、韓国を「南朝鮮」「(米国の)傀儡かいらい」と呼ぶことが多かった。「同じ民族」や「統一の対象」と見なす考え方を反映しているとされる。
ところが7月10日、与正氏が米軍の偵察活動を非難する談話で「『大韓民国』の合同参謀本部が米国の報道官のように振る舞っている」などと表現。韓国統一省によると、これ以前は南北首脳会談の際などの例外を除き、北朝鮮が公式な声明や談話で大韓民国と呼んだことはなかった。
与正氏は翌11日の談話でも「大韓民国」を使い、17日の談話では南朝鮮と両方を使用。20日には国防相の談話でも「大韓民国」が登場した。いずれもかぎかっこ付きで表記され、文脈から米国の「手下」の役割としての韓国をあざけるニュアンスもうかがわれた。
さらに朝鮮戦争の休戦70周年を記念する27日の軍事パレードに合わせた強氏の演説は、米韓が軍事的対決をエスカレートさせれば「わが国の武力行使が、米国と『大韓民国』に限っては防衛権の範囲を超えることになる」と述べ、明示的に警告した。
◆南北統一が前提ではなくなった?
北韓大学院大の梁茂進ヤンムジン教授は「南北は統一を前提とする特殊関係ではなく、国家関係だと見なす方向性を内部的に決めたようだ。ただ正式な法制化には時間がかかる」と分析。党機関紙の労働新聞から最近「わが民族」という用語が消えたことにも注目している。
統一研究院の洪aホンミン北朝鮮研究室長は、北朝鮮が韓国への攻撃も念頭に核・ミサイルの高度化を進めており「同じ民族に核兵器を使用するという矛盾した状況になるため、敵対する国家という構図を設定したのでは」と推測。北朝鮮が「国家対国家」の論理を公式化すれば、韓国が対話と協力を通じて進めようとする対北政策と現実との乖離かいりが大きくなるとも指摘する。
一方、韓国では7月28日、対北強硬派の金暎浩キムヨンホ氏が新たな統一相に就任。聯合ニュースは、統一省で南北対話や交流・協力分野を担当する部局などが近く統廃合され、80人以上の職員が削減される見通しと報じた。南北対話が途絶えている現状を踏まえた改編という。
金氏は統一省の課題として北朝鮮の核開発阻止、人権問題の改善、確固たる価値とビジョンに基づく統一の準備などを挙げており、韓国の対北政策も変化させることを示唆している。
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