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“見えない鎖”でつながれて〜彼女は、双子の、自閉症の弟とともに育って/nhk
2019年4月18日 15時03分https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190418/k10011885841000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001
「あなたは、きょうだいとどんな関係でしたか」そう私が尋ねたとき、彼女は下を向きながら「“見えない鎖”でつながれているような関係ですね」と答えました。彼女は、双子の、自閉症の弟とともに育ってきました。(宇都宮放送局記者 石川由季)
あなたが“主役”の1日を
学校が春休みを迎えた3月末、宇都宮市のボウリング場では楽しそうに無邪気に遊ぶ子どもたちの姿がありました。
彼らは全員が、病気や障害のある兄弟姉妹がいる「きょうだい児」です。
きょうだいがいることでふだんはなかなか行くことができない、テーマパークやキャンプなどを定期的に楽しんでいます。
きょうだい児を集めたこの会を主催している滝島真優さんは、宇都宮大学の大学院生だった11年前にこの会を立ち上げました。
「ボウリング場に家族で来られたとしてもどうしても障害のある子が優先になってしまう。きょうだいたちが子どもらしく年齢相応に楽しむ経験が少しでもできたらうれしいなぁって」
滝島さんは子どもたちに「きょうはみんなが主役の1日だよ」と呼びかけます。
きょうだい児とは
「きょうだい児」は、兄弟姉妹の病気や障害によってさまざまな特有の悩みを抱えることが少なくありません。
一例をあげると
▼治療やケアなど親がきょうだいのことに関心が向きがちで寂しさを感じる。
▼大勢の人がいる場所で急に大声を出したりするなどきょうだいの行動に恥ずかしさを感じる。
▼障害の特性で騒音が苦手などきょうだいの病気や障害によって外出先が制限されてしまう。
きょうだい児として生まれて
滝島さんも自閉症の双子の弟がいる「きょうだい児」です。
大切な存在の弟ですが物心がつくにつれ大声でひとりごとを言ったり、店の飲み物を勝手に持って帰ろうとしたり、つらい思いをすることが増えてきました。
小さな頃の悩みをこう振り返ります。
「弟の少し変わった奇異な行動に対して浴びさせられる視線というのが非常に私にも突き刺さるように感じて。だんだん恥ずかしいっていう風にも思うようになってきて」
弟を守りたいと思う気持ちの一方で恥ずかしく感じてしまうことへの罪悪感を抱き続け、高校生のときには体調を崩してしまうこともありました。
「親には申し訳なくて言えなかったんですよね。親も悲しむと思いましたし。弟を守ることや弟の幸せをまず願うことが最優先で、それから自分。“見えない鎖”でつながれているような関係」
「きょうだい児支援」パイオニアとの出会い
そんな滝島さんが大学院生のときに出会ったのが、きょうだい児支援のパイオニアとして知られるアメリカのドナルド・マイヤーさんの本。恥ずかしさや罪悪感など、多くのきょうだい児たちが同じ悩みを抱えていることや、悩みを打ち明け共有し合う支援の手法についても書かれていました。
「自分の今までの抱いてきた感情とか行動が裏付けされるような。衝撃と同時に救われた」
その後、宇都宮市できょうだい児のための会を立ち上げた滝島さん。11年間でおよそ100人のきょうだい児たちを支援してきました。3月下旬に行われた集まりでも楽しいレクリエーションの合間にきょうだいのことを自然と話せるような時間を設けました。
お題は「きょうだいのことですごく恥ずかしいと思ったこと」
「大きな声を出す」「急に泣き出す」など子どもたちが自分のことばで少しずつ語りはじめました。「わかる」「そうだよね」と滝島さんも相づちを打ちながら、日頃から困っていることを素直に表現できるよう語りかけます。
「恥ずかしいって気持ちは当たり前だからね。私も弟にちょっとやだな、申し訳ないなって思ったりもしたんだけどそんなことはないからね」
障害のある姉と兄とともに
この会を心の支えにし、成長してきた子どももいます。
宇都宮市の高校3年生、吉永育未さんは姉と兄に知的障害などがあります。育未さんは6歳の頃から滝島さんの会に通ってきました。
姉と兄の存在を前向きに捉えることができ、いい関係でいることができていると話します。
「そうやって悩んでるのが自分だけじゃないっていうのも分かったし会を立ち上げてくれたことにすごく感謝しています」
広がれきょうだい児支援
支援を広げていきたいー。滝島さんはことし3月、活動のきっかけになったマイヤーさんを日本に招き講演会を企画。全国からおよそ200人が集まりました。
マイヤーさんは支援を広げるうえで大切なポイントを伝えます。
「障害のある子どもとの関係はきょうだい児のほうが親よりも長く続く。きょうだい児にもケアが必要なので、福祉サービスを提供する際にはきょうだい児も構造的に組み込み、支援していくことが必要だ」
講演会のあと参加者に話を聞くと早速、前向きな意見が多く聞かれました。
「私自身もきょうだい児で、小さな頃にこういう支援があればよかったと思う。支援がもっと広がることで救われる子たちがたくさんいるのではないか」
「特別支援学校の教員として働いているので、これからはきょうだい児を含めた支援を現場で考えていきたい」
実際に、今回の講演会をきっかけに全国の12か所で新たにきょうだい児支援の会が立ち上がることになりました。
講演会のあと、マイヤーさんは隣に座る滝島さんにこう話しかけました。
「滝島さんのこれまでの尽力はすばらしい。感謝しています」
マイヤーさんに抱き寄せられた滝島さんの頬には涙が伝っていました。
「きょうだい児支援の機運が高まってきていると実感しています。きょうだい児を理解したいと思ってここに来てくださる方もこれだけいるってことは勇気づけられる。きょうだい児たちには孤独にならないでほしいと、1人じゃないってことを改めて伝えたいと思います」
きょうだい児のあなたへ
私自身が「きょうだい児」だったことが今回の取材の始まりでした。年子の弟は就学前、病気で入退院を繰り返している時期がありました。
20年以上たった今でも、母と弟の残る病院をあとにし、日が暮れかけた道のりを祖母に手を引かれながら歩いたことをよく思い出します。
小さな心で処理できない寂しさや孤独を抱える子どもたちに支援が行き届いてほしい、そんな思いで取材を始めました。
取材で多くの大人になったきょうだい児のお話を聞きましたが、兄弟姉妹に対する感情や受け止めはさまざまで、“見えない鎖”につながれ生きづらさを感じている人もいれば、兄弟姉妹の存在によって得難い経験ができたと肯定的に捉えている人もいました。
そのいずれの感情も否定されるべきではありません。
子どもたちへの支援が広がる中で、ひとりでも多くの「きょうだい児」たちが自分のために人生を歩んでいけるよう、これからも取材を続けていきたいと思います。
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