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働き方のコンパス 「老子の『足るを知る』を実践しよう」理想と現実の間で迷うライターの悩みを、哲学者が解決 • #働き方#
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投稿者 うまき 日時 2019 年 3 月 18 日 20:16:01: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

働き方のコンパス
「老子の『足るを知る』を実践しよう」理想と現実の間で迷うライターの悩みを、哲学者が解決
• #働き方#哲学2019.03.13.
• 「働き方のコンパス」はビジネスパーソンの悩みに、哲学者や社会学者、経済学者などの研究者が答えていくシリーズです。それぞれの学問的な見地から、仕事の悩みはどう分析できるのでしょうか。今回は、哲学者の小川仁志さんが回答者です。

哲学者
山口大学国際総合科学部准教授
小川仁志さん
大学で新しいグローバル教育を牽引する傍ら、「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践。また、テレビをはじめ各種メディアで哲学の普及にも努めている。
今回のお悩み
Q.私だけのライフワークを探したい
仕事は楽しく、やりがいもあるのですが、時折、なにか自分にしかできないようなライフワークを見つけなければいけないのでは、という焦燥感に駆られることがあります。成長し続け、新しいことを発信していかないと、この先必要とされなくなるのではないか。そんな風に考えながら、3年くらい経ちました。ライフワークはどうしたら見つかるのでしょうか。それとも、そんなものは無理に探すようなものではないのでしょうか。(35歳、女性、フリーランス)
A.老子の「足るを知る」を実践しよう
断言しよう、哲学で悩みは解決する
私は哲学で人生の悩みの大半は解決する、と考えています。哲学を学び、自分の頭で考えることを通して、視点を変えることができるからです。ものの見方が変わって、抱えている問題が悩みと感じられなくなったら、悩み自体がなくなってしまいますよね。哲学者の役目というのは、相手がとらわれている思考の枠に気づかせること。考える手助けをすることなんです。
前置きはこの辺にして、本題に入りましょう。あなたは「自分にしかできないようなライフワークを見つけなければいけないのでは」と思っているわけですね。では、「自分にしかできないようなライフワーク」というのは一体なんなのでしょうか。
これは、いわば「理想」だと言えるでしょう。理想に惹かれるのは、人間の普遍的な性質です。古代ギリシアの時代にも、これについて考えていた哲学者がいるのですから。そう、プラトンですね。プラトンのイデア論というのは、完全な理想の世界である「イデア」が存在し、現実はその影に過ぎないという考え方です。
理想を追い求めるのが楽しいうちはいいんです。大いに理想を追ってください。でもあなたは「焦燥感に駆られている」と言っています。つまり、楽しい状態じゃないんです。なんとなく、理想というものを追わなければと、追い立てられるような気持ちになっている。それは、よくないですね。
プラトンで行き詰まったなら、老子を持ち出してみる
今あなたは、仕事が楽しく、やりがいがある状態です。それでいいはずなのに、ライフワークと言えるような、もっと立派な仕事をしなければと思っている。これは、思い込みにとらわれているのだと考えられます。「成長し続け、新しいことを発信していかないと、この先必要とされなくなる」というのは、本当のことでしょうか。
例えば同じモノづくりを長年続けていて、依頼が途絶えることがない職人さんがいますよね。そういう方は、新しいことに挑戦しているようには見えないかもしれないけれど、とても重宝されている。そういう人の存在意義は確実にあるんです。
私は、世の中の競争を煽るような言説や、イノベーション信仰みたいなものには、懐疑的です。あなたがいま「こうしなければいけない」と思っているのは、SNSで発信力の強い人が言っていたから、だったりしませんか? そうした「世間の声」から離れて、あなた自身がどうしたいのかを考えてみてください。
考えが行き詰まったときは、他の哲学をきっかけにして視点を変えてみましょう。この場合は、老子がヒントになると思います。理想を追い求めると、人間はないものに目を向けて、「あれが足りない、これが足りない」と思ってしまう。でも、あなたも必ず持っているものがあるんです。その、持っているものに目を向けてみてください。これが老子の言う「足るを知る」ということです。
老子の思想を実践するなら、徹底的に
「足るを知る」と言うのは一見簡単なように思えます。今ある幸せに感謝、みたいなね。あなたも、現状が幸せだとは感じているのでしょう。でも「ライフワークを探さなければいけないのでは」という迷いがある。この迷いがある時点で、「足るを知る」が実践できているとは言えません。
実践するならば徹底的にやること。「今あるもので十分幸せなんだけれど、理想も追い求めないといけないかな」なんて思うのは、南の島のバカンスにノートパソコンを持っていっているようなものです。それでは、心から休暇を楽しむことはできないでしょう。本当の意味で足るを知っているわけではないんです。
老子は老齢になってから、人里を離れて行方をくらませたと言われています。さらなる道を追い求めたとも言われていますが、彼はその時の自分のあり方に満足していたのではないでしょうか。特に大きく出世したり、国を統一したりといった功績があるわけではありませんが、現代でも老子の思想は高く評価されています。彼の思想自体が、本質的に価値のあるものだからでしょう。
徹底的に「足るを知る」を実践したら、またプラトンのように理想を追い求めたくなるかもしれません。「足るを知る」で満足して、そのまま人生を全うするかもしれません。それはどちらでもいいんです。自分がその都度求める生き方を、後押しするようなかたちで哲学者の叡智を使う。これが、幸せに、納得して生きるコツです。
(文・崎谷実穂)
悩めるあなたにこの一冊
『老子』(岩波文庫)
「老子はいくつか翻訳がありますが、岩波文庫版をお勧めします。NHK「100分 de 名著」でも老子の解説をされていた、中国思想史の研究者・蜂屋邦夫さんの詳細な訳注付きのため、平易な訳でわかりやすく読むことができます。さすが長年支持されているベストセラーだけあって、発想の転換を促す珠玉の言葉に溢れています」

小川仁志(おがわひとし)
1970年、京都府生まれ。哲学者・山口大学国際総合科学部准教授。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。商社勤務(伊藤忠商事)、フリーター、公務員(名古屋市役所)を経た異色の経歴。徳山工業高等専門学校准教授、NHK・Eテレ「世界の哲学者に人生相談」では指南役を務めた。専門は公共哲学。著書も多く、ベストセラーとなった『7日間で突然頭がよくなる本』や近著『AIに勝てるのは哲学だけだ』をはじめ、これまでに約100冊を出版。

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