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私たちが見失ってしまった本当は大切なもの
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2018年12月28日 植草一秀の『知られざる真実』
今年も残すところ3日になった。 本当に時の経つのが早い。 あっという間の年末である。 年末までにやり終えておかねばならないことが、まだたくさん残されている。 しかし、時間は限られているから、できることをしておきたいと思う。 読者のみなさまにとって今年はどのような年であっただろうか。 世相が暗いから、なかなか明るい話題に触れることも難しいが、大事なのは気持ちの持ち方でもある。 前を向き、上を向いて、明るい未来を見つめて進んでゆくのが良い。 そのためには、逆に私たちの足下を見つめて、私たちが持っている力を活かして進むことが大切だ。 必ず活路が開かれる。 本年11月11日に白金台の明治学院大学キャンパスで、『幸せの経済フォーラム』が開催された。 本ブログ、メルマガでも紹介させていただいた。 「株式会社経済から共同体共生経済への転換」 https://bit.ly/2QAryv3 社会が経済に埋め込まれてしまっているが、考えてみれば本末転倒である。 経済は社会の一部であって、逆ではない。 しかし、現代社会においては、社会が経済に組み込まれ、市場原理が万能の尺度として活用されることが当たり前とされてしまっている。 この現実を疑いもなく受け入れてしまう前に、もう一度考えてみる必要がある。 『幸せの経済フォーラム』を主宰されている明治学院大学の辻信一氏が高橋源一郎氏との研究を対談のかたちにして 『雑の思想』(大月書店) https://amzn.to/2rXQHF5 という著書にして刊行された。 「雑」という言葉は、悪いニュアンスをもって使われることが多いが、実はこの「雑」こそ、私たちの真の姿ではないのかという問題提起をされている。 私たちが見失ってきたもの。 私たちが否定してきてしまったもののなかに、かけがえのない価値が存在している。 人が人として「幸せ」を実感して生きてゆけるために、真に必要なものは「効率」=「金銭」=「市場経済」ではない。 近代経済学は「市場経済」こそすべてであり、この効率性の尺度で測ることのできないすべてのものを「雑」として切り棄ててきた。 しかし、その市場経済は、私たちを本当の意味で幸せにしてきたのだろうか。 私たちは効率主義=市場経済万能論によって、本当は大切であり、本当の意味での幸せをもたらすものを、喪ってきたのではないだろうか。 「幸せの経済フォーラム」で、メキシコのトセパンモデルの紹介があった。 メキシコではコーヒーの生産が盛んだが、トセパンモデルとは、コーヒーの栽培を海外の大資本が支配するプランテーション=モノカルチャー生産ではなく、地域の住民、共同体による森林農法で行っているものである。 森林資源を自然のままに温存しながら、大資本による労働力搾取の奴隷労働ではなく、共同体による共同管理の下で生産活動を行っている。 メキシコでは今年の大統領選でロペス・オブラドール氏が勝利した。 その新政権が12月に新政権が発足した。 この新政権がトセパンモデルを活かして新しい経済政策を展開する。 グローバリズムとは、巨大な資本が、「自らの利潤を極大化するために」国境を越えて、「資本の論理を貫徹しようとするもの」である。 グローバリズムの問題は、その動機と内容にある。 「資本が利潤を極大化すること」が「目的」であり、 「資本の論理を貫徹すること」が「内容」なのだ。 その結果は、資本にとってプラスだが、市民にとってはマイナスである。 市民を幸せにするものではなく、市民を不幸せにするものなのだ。 ヘレナ・ノーバーグ・ホッジさんが制作した 『幸せの経済学』 という映画をぜひ見ていただきたい。 インド・カシミールの奥地に所在するラダックがどれほど素晴らしい地であったのか。 そして、そのラダックがどのように悲惨な運命を辿ったのかを実感できる。 そのなかから、私たちは、私たちにとっての本当の幸せの意味を知ることができる、考えることができるのだ。 |
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