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2%の消費増税に5%の「ポイント還元」する倒錯
いつまでも「景気対策」を続ける安倍政権は末期症状
2018.12.28(金) 池田 信夫
日本銀行の「異次元緩和」は失敗に終わったが、安倍政権は景気対策をやめようとしない
世界の株価が変調だ。ニューヨーク証券取引所のダウ平均株価は、今年(2018年)10月の最高値から20%近く下がり、日経平均株価も一時は2万円を割った。「リーマン・ショック」から10年たち、新たなバブル崩壊に世界のマーケットが身構えているように見える。
そんな中で、政府の2019年度一般会計予算案が閣議決定された。総額は101兆4564億円と初めて100兆円を超え、その中身も消費税の増税対策など、バラマキ色の強いものになったが、マーケットは反応しない。日本経済の問題は、そういう短期的な景気対策では解決できないからだ。
「ポイント還元」は大混乱をもたらす
今回の予算の最大のポイントは、来年10月に予定されている消費税率の8%から10%への引き上げをどう乗り切るかということだろう。この増税対策の中で最も注目されているのは、キャッシュレス決済の「ポイント還元」だ。
これはクレジットカードや電子マネーで買い物をしたとき、小売店などが5%のポイントをつけ、それを政府が補助するものだ。この対象となる事業者は資本金5000万円以下の中小企業に限られ、大手チェーンの直営店では還元しない。個人商店が大手チェーンに加盟するフランチャイズ店では2%還元するというが、消費者には直営店かフランチャイズかなんてわからない。
もともと食品には軽減税率が適用されるので、中小企業でクレジットカードで食品を買うと、ポイント還元5%を含めて7%も軽減される。つまり軽減税率とポイント還元を含めて3%、5%、6%、8%、10%という5種類の消費税率が併存することになる。
さらに問題なのは、このポイント還元の財源が2789億円しかないことだ。これは東京オリンピックまでの時限措置ということになっているが、財源は9カ月も持たないだろう。
たとえば本体価格10万円の冷蔵庫をいま買うと税込み10万8000円だが、来年10月1日に中小の電気店でクレジットカードを使って買うと、ポイント還元で10万5000円に値下がりするので、10月1日に駆け込み需要が集中するだろう。商品券を大量に買って横流しすることも考えられる。
12月4日から始まったスマホ決済アプリ「ペイペイ」の20%ポイント還元サービスの財源は100億円だったが、わずか10日間で終わった。高額の買い物が殺到して財源を使い切ったからだ。日本全国ですべてのクレジットカード利用者を対象に行われるポイント還元が、これよりはるかに大きな混乱をもたらすことは容易に予想できる。
1980年代後半の日本に似てきた世界経済
今回の予算では、ポイント還元以外にも「プレミアム付き商品券」や「国土強靱化」と称して2兆円以上の増税対策が入っており、1.3兆円の税収増を上回る。さすがの安倍政権も消費増税を三度延期することはできないので、実質的に減税したわけだ。
もちろんこれは単年度の収支なので、2020年度以降はネットで増税になるが、増税を嫌い拡張的な財政・金融政策を続けるのは安倍政権の一貫した方針だ。その根本的な錯覚は、日本経済の最大の問題が「デフレ」にあるという思い込みである。
「デフレを脱却しないと日本経済は回復しない」という発想で始まった日本銀行の「異次元緩和」も失敗に終わった。日銀の供給するマネタリーベース(現金)の残高がGDPを超えても、2%のインフレ目標が達成される見通しは立たない。それでも雇用は回復し、人手不足が深刻な問題になっている。
こういう状況は、1980年代後半のバブル期に似ている。当時も資産価格が上昇したが、世の中はそれほど浮かれていたわけではない。株価は1984年から5年間で4倍になったが、物価上昇率は1%以下だった。
製造業は「円高不況」に苦しんでいたので、日銀は公定歩合を上げることができなかったため、金余りで投機資金が不動産や株式に流れ込んだ。このように資産価格は上がるが物価は上がらないというのが、最近のバブルの共通点だ。2000年代のアメリカの住宅バブルでも、物価は上がらなかった。
ケインズ以来のマクロ経済政策では、不況のときは失業が増え、好況になると物価が上がるという前提で、政府が経済を調節することになっているが、こういうフローの指標では完全雇用を超えて人手不足になってもインフレにならない日本経済は理解できない。
かつてこれは日本経済だけの特異な現象だと思われていたが、世界金融危機後の2010年代に欧米で起こったのも、同じ現象だった。ゼロ金利に近い状況になって世界中で金余りだといわれてもインフレは起こらないが、ストックの株式や不動産は上がっている。
財政と金融が一体で危機管理するシステムが必要だ
こういう状況は、政治的には好都合だ。いくら財政・金融政策で政府が景気を刺激してもインフレにならないのなら、増税は延期し、ポイント還元などのバラマキをやっても害がないはずだ。景気がよくても悪くても景気を刺激する安倍政権は、政治的には合理的なのだ。
しかし低成長・低インフレの時代には、裁量的な景気対策の効果は限られている。失業率やインフレ率が10%を超えて経済がボロボロになった1970年代は、特異な時代だったのだ。その後起こった経済危機は失業やインフレではなく、1990年代の日本や2010年代のアメリカで起こったような資産価格の崩壊による金融危機だった。
経済の不均衡は資産バブルという形で蓄積され、その崩壊による金融危機として表面化する。その効果は長く続き、経済に大きな爪痕を残す、というのがここ30年の先進国の経験だ。したがって中央銀行の最も重要な役割は景気対策ではなく、金融危機のとき流動性を供給する最後の貸し手である。
今回のアメリカの株安のきっかけも、トランプ大統領がFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長を解任するとも解釈できる発言をしたことだった。多くの人がバブルを意識しているときは、ちょっとしたきっかけで資産価格が崩壊する。
日本の株式市場は日銀に支えられているが、それは株価が暴落したとき売り逃げしやすいことを意味する。バブルが崩壊しても、日銀はすでに目いっぱい緩和しているので「糊代」がない。資産価格が崩壊すると日銀も債務超過になるので、最後の貸し手としての機能を果たせない。
金融危機で「究極の貸し手」になるのは中央銀行ではなく、政府(一般会計)である。こういう時代には、中央銀行の独立性には意味がない。むしろ財務省と日銀が一体で危機管理する制度設計を考えるべきだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55096
株急落は来年の様々なリスクの前兆、消費増税の余裕はない
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