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変わる防衛政策、日本は 「矛」を持つべきなのか
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
日本に厳しい条件を突きつける米トランプ政権
2018年12月28日(金)
田原 総一朗
安倍政権は第2次内閣発足から6年となった(写真=つのだよしお/アフロ)
12月18日に防衛計画の大綱が発表され、大きな反響が出ている。
今回の中期防衛力整備計画に盛り込まれたうち、最も注目されるのは、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」型護衛艦を空母化し、米国製ステルス戦闘機F-35BライトニングIIを離発着させることだ。
これまで日本は、憲法上「専守防衛」を安全保障の基本方針としてきた。つまり、敵に攻撃された時、日本は「盾」となって守り、米国が「矛」となって反撃するということだ。
そのため日本は、攻撃用の船を持たないとしてきた。また、船にヘリコプターを搭載しても、戦闘機は乗せなかったのである。
ところが今回の中期防では、F-35Bという戦闘機を投入することになった。これは明らかに攻撃を意識している。従来の専守防衛を大きく逸脱する可能性があるということだ。一部のメディアは、日本はついに専守防衛をすでに超え、大変な事態となった、と指摘している。
僕はこの問題について、自民党の中堅以上の議員ら7〜8人に意見を求めた。すると、「問題あり」だという答えは一つも出なかったのである。防衛問題に関心を持つ文化人らにも話を聞いたが、はっきりと「問題がある」と答える人はごく少数だった。
「専守防衛はいいけれど、日本も米国に協力しながらも自国で国防の役割をするのは当然ではないか」という意見が勝っている。個々の防衛手段がとれるからこそ、他国からの攻撃の抑止力にもなり得るのではないか、という意見が増えているのである。
戦えない軍隊だったからこそ、日本は平和だった
少し前はまったく状況は違っていた。
例えば、竹下登氏が首相になった時のことだ。僕は竹下氏に、「日本には自衛隊というものがあるけれど、戦えない軍隊じゃないか。それでいいのか」と尋ねたことがある。すると竹下氏は、「だからいいんだ。戦えない軍隊だから、日本は平和なんだ」と答えた。
軍隊というものは、戦えるならば戦ってしまう。太平洋戦争が始まったきっかけも同じである。
戦争を知る世代の総理大臣は、「軍隊というものは、仮に勝てなくても、戦えるなら戦ってしまう」ことをよく分かっていた。戦えない軍隊だからいいんだ、と考えていたのである。これは竹下氏のみならず、歴代総理大臣である宮沢喜一氏、田中角栄氏、小泉純一郎氏も同様の意見を持っていた。
日本は対米従属だが、その代わりに憲法9条を盾にして、70年以上戦争に巻き込まれるのを回避してきた。だからこそ、戦後のほとんどが自民党政権だったが、歴代首相は誰も改憲を掲げなかった。
ところが冷戦が終結し、徐々に日本国内で「自立論」が広がり始めた。冷戦時では、日本の敵はソ連だった。日本が戦って勝てるわけがないから、米国に守ってもらう必要があり「対米従属論」の姿勢が支持されていた。
冷戦後、特にリベラル派は「もうその必要はなくなり、自立すべきではないか」といった意見を主張し始めたが、一方で正反対の見方も強まった。日本はこれまで米国の防衛力に依存してきたが、米軍は日本から撤退する可能性もある、という見方だ。この立場からは、日本は対米関係を今まで以上に密にしなければならないのではないか、となる。こうして「米国からまともに相手にされる国になるべきだ」との意見が出始めたのである。
こういった意見を強く主張したのは保守系の学者たちであった。さらには保守系のメディア、自民党も同様である。
トランプ政権から、米国の日本に対する要求が変わった
保守系の学者や自民党の目標は、集団的自衛権の行使を容認することだった。安倍晋三首相は2015年5月にこれを実現した。さらにその後、16年の参議院総選挙で、改憲勢力は3分の2議席を獲得した。
僕はこの年の9月、安倍首相と直接会って話をした。「そろそろ憲法改正か」と話すと、こんなことを言われた。「大きな声では言えないが、実は、憲法改正をする必要がなくなった」。
なぜかと聞くと、「集団的自衛権の行使ができない時は、米国から相当な圧力があり、日米関係が危なくなるリスクがあった。ところが安全保障関連法が施行されて集団的自衛権を行使できるようになると、米国は何も言ってこなくなった。米国は、これで満足したから、憲法改正をする必要はなくなった」と話した。
オバマ政権までは、確かに安倍首相の言うように、米国は集団的自衛権の行使容認だけで納得していたようだ。
しかし、トランプ氏が大統領に就任すると、流れが大きく変わる。次から次へと高い兵器の購入を迫った。さらにトランプ氏は、「日本の防衛費はGDP比1%となっているが、2%に引き上げるべきだ」と主張してきた。
特に最近は、マティス国防長官の辞任を発表した。彼はトランプ氏の唯一の「抑止力」だった。米政権は12月19日、シリアからの米軍の完全撤退を宣言。さらには今後、アフガンからも撤退する可能性もあるという。とんでもない話である。下手をすれば、韓国からも撤退する可能性すらある。
日本に対しては、貿易や軍事に対し、強いプレッシャーをかけている。ここで日本はどうすべきか。非常に大きな問題である。
日米貿易交渉は、極めて厳しいものになるだろう
もう一つ、大きな問題がある。
19年1月以降に行われる日米貿易交渉において、米政府が対日要求事項22項目を正式に公表した。日本政府はこれに対し、「これは物品貿易協定(TAG)である。サービスなどを含む自由貿易協定(FTA)ではない」と強調している。
TAGとは、モノの貿易に限るという意味であるが、米国が公表した項目を見る限り、情報通信、知的財産、金融サービスも含まれている。これは明らかにTAGではなくFTAである。
交渉は日本にとって相当厳しいものになるのではないかと思われる。19年には大きな問題になるだろう。
このコラムについて
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/122600101/
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- 「冷戦1.0」時代と決定的に異なる「冷戦2.0」米中の構造的・長期的対立の中で重要性を増す「新防衛大綱」 うまき 2018/12/28 09:15:08
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