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安倍政権、水道民営化の裏で、インフラ運営を外資系企業に売り渡す…国民の命を危険に
https://biz-journal.jp/2018/12/post_26052.html
2018.12.26 日本の「ごみ処理」が売られるT(1) 文=青木泰/環境ジャーナリスト Business Journal
12月16日、水道法の一部を改定する法案が衆議院で再可決された。水道運営の民営化、その背景は国際ジャーナリストの堤未香氏が上梓した『日本が売られる』(10月4日発売)に詳しい。同書は発売から約2カ月で13万部売れたという。同書には「日本が根こそぎ奪われる」「水が売られる(水道民営化)」「土が売られる(汚染土再利用)」「タネが売られる(種子法廃止)」「ミツバチの命が売られる(農薬規制緩和)」「食の選択肢が売られる(遺伝子組み換え食品表示消滅)」「森が売られる(森林経営管理法)」「海が売られる(漁協法改正)」「米国、中国、EUのハゲタカどもが、日本を買い漁っている」と驚くべき内容が書かれている。
日本が売られる(堤未果/幻冬舎新書)
今回は、これら数々の分野に加え、日本の「ごみ処理」が「長期包括」契約というかたちで売られようとしていることを報告したい。今回の水道法改定では、自治体がインフラを保有したまま、その運営を民営化する「コンセッション方式」が焦点となった。今回報告するごみ処理の長期包括委託方式は、それと似通ったものである。
堤氏の『日本が売られる』に示されているのは、安く安全な水の供給体制やお米などの主要な農産物の生産を守るための自治体によるタネの供給、農薬規制など、法律上の保護の枠が取り払われ、独占的な力を持つ国際的企業の参入に道を開く民営化の仕組みが、法改定によってつくり出されようとしていることである。
通常、新法制定や法改定は、社会に解決しなければならない矛盾があり、現状の法体系の下では、その矛盾が解決できないと考えた行政府や国会議員から提案され、国会での議論を経て改定される。その解決策をめぐって、利害の得失や方法論の是非が論議される。
ところが、堤氏が指摘している現在進行している法改定は、「米国、中国、EUのハゲタカどもが、日本を買い漁る」というように、これらの法案を進めることにより利益を得るのは国際的巨大企業、「強欲資本」である。そして、その法改定の先には、日本国民の生活基盤すら奪い去られ、命すら危ぶまれる状態に落とし込まれる危険性がある。
国民の代表を標榜する政権を担う政党が、なぜこのような世界での失敗例が多い法案を進めようとするのかは、わからない。いつから国民の代表であることをやめ、巨大企業の下請けやセールスマンのようなことをしているのか。
■「民営化」の実態
「水の民営化」でいえば、2013年に麻生太郎副総理が米シンクタンクの戦略国際問題研究所の講演で以下のとおり述べ、その動きが始まった。
「世界中のほとんどの国では、プライベートな会社が水道を運営しておられますが、日本では自治省以外では、この水道を扱うことができません。しかし水道料金の回収が、99.9%というようなシステムを持っている国は、日本の水道会社以外にはありませんけれども、この水道はすべて国営もしくは市営、民営でできていて、こうしたものを全て(略)民営化します」(『日本が売られる』より)
この発言は、世界の水メジャーの視点に立ち、日本の水道システムは注目すべき儲け話であることを示唆する発言でしかない。日本の水道事業が、自治体によってはインフラの整備を担い財政確保の課題を抱えていることは事実であっても、国民に安く安全な水を届ける、貴重な水資源を守るという観点は保持すべきである。もし「新自由主義」などの理屈をつけても、これでは、国、国民を売る売国奴でしかない。
そしてさらに驚くのが、日本の行政府は、日本の買い漁りを狙う国際的企業による攻撃に対して、対抗策を考えるどころか道を開く法改定や諸政策を打ち出すことに手を貸している。自治体は水事業について、災害時の修復や老朽施設の補修などインフラ運用について責任を負っており、これらを含めて民営化すれば、リスクが大きくなる。これまで国際的巨大企業が参入を控えてきたのは、そのリスクがあったからである。
そこで、インフラなどの所有権は自治体に持たせる一方、民間事業者に運営権を与え、検針や料金徴収の業務による収入を事業者のものとする「コンセッション方式」が導入される。民間事業者が料金自体を決定できることになるため、料金の値上げによって支払不可能になった世帯への供給停止も問題になってくる。
『日本が売られる』のなかでも、下記のような法の仕組みが準備されてきたことが報告されている。
「企業に公共水道の運営権を持たせるPFI法の可決」
「企業に運営権を売った自治体への、地方債の利息免除等の優遇策」
「水道料金の事業者による料金変更権の付与」
さらに、自治体がその運営権を「民間事業者に売却する際には、地方議会の承認不要権」の特例などを準備している。これらはいずれも、国際的巨大企業が水道事業に参入しやすくする対応策でしかない。立憲民主国家にとって、基礎となる国民や自治体の権限をないがしろにする法律といえる。
今回報告するのは、上記コンセッション方式に似通った、ごみ処理事業における民営化である。自治体がこの運営権を事業者に売却し収入を得るというものではなく、巨額のお金をつけ委託する方式だが、これまで自治体が担ってきた事業を民間巨大企業に譲り渡すという点ではコンセッション方式と共通している。民間事業体への民営化が行われれば、もちろん外資による参入に扉を開くことにつながる。
長期包括契約が導入されつつある東京三多摩地区の柳泉園組合の事例を取り上げながら、長期包括契約の実態を明らかにし、自治体の下で運営されていた公共事業が民営化される問題と背景を考えたい。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)
※次回へ続く
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