http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/476.html
Tweet |
「F35と『空母』〜問われる専守防衛〜」(キャッチ!ワールドアイ)/増田剛・nhk
2018年12月20日 (木)
増田 剛 解説委員
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/900/311513.html?id=politics
日本政府は、おととい、防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」を5年ぶりに見直しました。そして、今後5年間の中期防衛力整備計画を決定しました。この中で最も注目されているのが、いずも型護衛艦を事実上「空母化」する方針です。そのため、戦闘機F35を搭載できるように改修します。
中国は、2012年、初めて空母を就役させ、今後も空母の数を増やす計画です。海洋進出を強め、日本周辺の太平洋海域にも進出しています。危機感を覚える政府・自民党は、南西諸島や太平洋海域の防衛強化のため、空母の役割を果たせる艦船が必要だとしています。
ただ、これに対しては、憲法に基づく「専守防衛」を逸脱するのではないかという批判も出ています。
きょうは、世界の安全保障環境もふまえ、空母化と専守防衛の問題について考えます。
Q1)
スタジオには、政治・安全保障担当の増田解説委員が来ています。
増田さん、今回の大綱・中期防では、F35戦闘機の追加導入、そして、護衛艦「いずも」の「空母化」が、盛り込まれました。これは、どう見たらいいんでしょうか。
A1)
そうですね。政府は今回、大綱・中期防の策定に向けた検討を進める中で、今後、ステルス戦闘機F35を105機、追加導入する方針を固めました。これは、いずも型護衛艦の事実上の「空母化」の前提なので、まず、このことについて説明します。
F35は、アメリカを中心に9か国が共同開発した最新鋭戦闘機で、レーダーに探知されにくいステルス性と、戦闘に関するデータを瞬時に統合・共有する情報ネットワーク機能の高さが特徴です。
F35には、通常の滑走路で離着陸するA型と、短距離で離陸し垂直に着陸できるB型があります。このうち、日本政府は、A型42機の導入をすでに決めています。今回、追加導入する105機は、このA型に加えて、新たにB型も導入しようというものです。つまり、政府の計画では、将来の日本のF35は、A型とB型あわせて147機の態勢になります。
Q2)
147機というと、かなり大量に導入する印象ですが、狙いは何なんでしょうか。
A2)
背景には、空軍力を強化する中国やロシアの動向をふまえ、航空戦力を優位に保つ狙いがあるとされています。
その一方で、対日貿易赤字を問題視し、アメリカ製装備の購入拡大を求めるトランプ大統領の要求に応えたものではないかという見方もあります。
実際、トランプ大統領は、今月1日の日米首脳会談で、「日本が、アメリカから数多くのF35を購入することに感謝したい」と、この見方を裏付けるような発言を行っています。
ただ、F35は、1機あたりの価格が、100億円以上はしますから、新たに100機以上導入すれば、機体の購入費だけで、1兆円を優に超えることになります。厳しい財政事情の中、これだけ巨額の支出が本当に妥当なのか。年明けの国会では、徹底的な議論が必要でしょう。
[ほくほく顔のトランプ]→イラスト http://img.asyura2.com/x0/d9/7656.jpg
Q3)
そして、これだけの戦闘機を導入し、加えて、護衛艦「いずも」の事実上の「空母化」も必要だというのが、政府の主張なんですね。
A3)
そうです。いずも型は全長248メートル。艦首から艦尾まで甲板がつながっている形状が特徴で、最大14機のヘリコプターを搭載できますが、通常の戦闘機は離着艦できません。ただ、短距離離陸・垂直着陸ができるF35Bであれば、甲板を改修することで、艦載機として運用できます。これが「空母化」の意味です。
政府は、「いずも」と、同じ型の「かが」の2隻を改修し、F35Bを8機ずつ搭載できるようにする計画です。
Q4)
日本が、事実上の空母を保有するということだと思いますが、世界を見回しても、空母を運用している国は、限られていますよね。
A4)
そうです。アメリカやフランス、イギリス、ロシア、それに中国など、一部の国でしか運用されていません。
このうち、保有する空母の質・量ともに圧倒的なのは、アメリカで、現在、11隻の原子力空母を運用しています。いずれの空母も、超大型でスーパー・キャリアーと呼ばれ、それぞれの空母が複数の護衛艦を伴って、空母打撃群を構成しています。
軍事作戦の際に周辺海域に派遣されるこれらの空母打撃群は、アメリカの「力の象徴」とみなされています。
Q5)
なぜ、空母打撃群は、「力の象徴」とみなされているのでしょうか。
A5)
空母は「動く航空基地」とも呼ばれていて、空母と、空母を護衛する船からなる打撃群があれば、自国から遠く離れた他国の領海に近づいて、空母から戦闘機を発進させ、その国を攻撃し、壊滅的な打撃を与えることができます。また、空母打撃群は、太平洋戦争などの実戦経験を通じて、アメリカ海軍が開発した軍事システムですので、アメリカの「力の象徴」とみなされているんです。
フランスも原子力空母を保有していますが、1隻だけで、イギリス、ロシアも、通常型空母を1隻保有するのみです。
ただ、中国は、空母の建造に熱心で、2012年に初の空母「遼寧」を就役させたほか、さらに空母の数を増やそうとしています。
Q6)
今回の「いずも空母化」について、中国は反発し、韓国も懸念を表明しましたね。
A6)
やはり、日本の軍事大国化を懸念しているのだと思います。かつて、旧日本海軍は、多くの空母を運用して太平洋戦争を戦いました。
その記憶が蘇るのかもしれません。
一方、日本政府は、いずも型の「空母化」方針の理由として、日本周辺の太平洋海域の防衛力を強化する必要性を強調しています。
逆に、日本が警戒しているのは、海洋進出を強める中国なんです。
2012年、初めて空母を就役させた中国は、今後も空母の数を増やす計画で、海軍や空軍の装備を増強し、沖縄から台湾にかけてのラインを超えて太平洋に進出、日本周辺でも活動を活発化しています。
危機感を覚える政府・自民党は、南西諸島や太平洋海域の防衛強化のため、離島の航空基地などが損害を受けた場合の代わりの滑走路として、空母の役割を果たせる艦船が必要だと考えているのです。
ただ、野党からは「専守防衛を逸脱するのではないか」という批判が出ています。
Q7)
専守防衛を逸脱するとは、どういうことでしょうか。
A7)
はい。専守防衛とは、憲法の精神に則った日本の基本姿勢です。
政府は、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、保有する防衛力も自衛のための必要最小限度に限ると定義しています。
この専守防衛のもと、政府は、「攻撃型空母」は保有できないとし、攻撃型空母とは「他国に壊滅的な破壊をもたらす能力を持つもの」という見解を示してきました。
このため、いずも型の事実上の「空母化」は、専守防衛のもとではできないはずの、攻撃型空母の保有にあたるのではないかという懸念が示されたんです。
Q8)
政府は、どう説明しているのでしょうか。
A8)
岩屋防衛大臣は、いずも型に常時搭載する戦闘機部隊は設けないとした上で、「他に母基地がある航空機を、時々の任務に応じて搭載するというのは、攻撃型空母にあたらない」と説明しました。
ただそれでも、「戦闘機が載っていないこともあるから空母でないというのは詭弁ではないか。能力がある以上、運用次第で攻撃型空母になり得る」という批判が出ています。
Q9)
専守防衛との整合性という点で、納得できないということですね。
A9)
そうですね。
近年、防衛装備の高度化が進む中で、日本の政治は、最新装備が有する強力な攻撃力と、防衛力は自衛のための必要最小限度とする専守防衛の理念との間で、整合性を保とうとする努力を続けてきました。ただその努力も、限界に来ていると思います。
専守防衛とは、他国の脅威にならないことで、自国の安全を保持する防衛戦略でもあります。この戦略にそって、防衛力の規模を維持することに努めるのか。
それとも、厳しい安全保障環境に対応するため、専守防衛の定義を見直して防衛力を拡充することも、視野に入れるのか。
今回の大綱の策定が、日本の防衛政策のあり様について、本質的な議論を進める契機になることを期待したいと思います。
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK255掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK255掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。