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2018年12月25日 長嶋 修 :株式会社さくら事務所創業者・会長
廃虚や老人見殺し住宅を量産か、「省エネ基準義務化」見送りの愚策
「住宅省エネ基準の義務化」が見送られることになった。省エネ性能の高い家は、夏に涼しくて冬は暖かい。つまり、エアコンや暖房器具の使用を大きく削減できるほか、住宅価値も維持されやすいし、住民の健康維持にも大きな貢献をする。なぜこんな「いいことずくめ」の施策を見送ったのだろうか?(さくら事務所会長 長嶋修)
レベルの低いダメ業者を擁護!?
省エネ基準義務化見送りの闇
業者側の勝手な言い分によって、住宅の省エネ基準義務化が先送りされました。
「夏暑くて、冬寒い」日本の住宅事情を改善する貴重なチャンスだったのに、レベルの低い業者を擁護する声に合わせるという愚かな選択がなされてしまった (写真はイメージです)Photo:PIXTA
2020年に義務化の方針だった「住宅省エネ基準の義務化」が見送られることとなり、多くの心ある業界人が落胆や怒りの声をソーシャルメディア等で発信している。日本の住宅には「省エネの義務基準」が存在しない。したがって、夏は熱を吸収し、冬は冷たさを溜め込むコンクリート打ちっぱなしで断熱材なしの「住めば地獄」のような住宅を建てることも可能だ。
パリ協定で日本は、「日本の約束草案」を提出済みだ。その中身は、2030年度に2013年度比26%減(2005年度比25.4%減)の水準とするというもの。家庭部門は2030年までに27%のCO2排出減(2013年比)としたうえで、住宅・建築分野では、2030年までにエネルギー消費量をおよそ20%削減することを前提としていた。
というのも、このところ産業・運輸の世界では消費エネルギーを減少または微増にとどめているのに比して、業務部門や家庭部門のエネルギー消費は増大し、全エネルギー消費量の30%超を占めているためだ。
住宅省エネ基準の義務化は、家庭部門のCO2削減に大きく寄与する。にもかかわらず、なぜ義務化が見送られたのか。それは「住宅への適用に関しましては慎重に考えていただきたい」とする業界団体が反対したためだ。義務化基準の省エネ住宅を提供できるのは、いまだに住宅建設業者の6割程度でしかないから、こんなものを義務化されては困る、というわけだ。しかしこれは話としておかしい。
今回、国が義務化しようとしていた省エネレベルは、1999年に制定された基準で、決してレベルが高いとはいえない。つまり今回の義務化見送りは、20年前に制定された省エネ基準にキャッチアップできない、つまり施工レベルが低くて努力をしない事業者を救済するためのものなのだ。
「寒い家」が高齢者を殺す
ヒートショック死の現実
住宅の省エネ化推進は、高齢化社会対応としても必須なはずだった。家庭内事故で最も多い「溺死」は、65歳以上の高齢者が90%以上を占めるが、その多くは、冬場の浴槽内で発生しており、住まいの断熱性と大きな関係がある。
暖かい部屋から寒い浴室に移動すると、室温の急激な変化から体温を調節するために、体を震わせるなどして熱を作ると同時に、血管を細くして血流を減らし、体の熱を外に逃がさないように調節する。すると血液が流れにくくなり血圧は急上昇。次に浴槽でお湯につかることで血管は急拡張し、血圧は一気に低下する。その後は再び寒い脱衣所に移動する。すると、血圧は再度、急上昇してしまうのだ。
若い人ならともかく、一定程度動脈硬化が進行した高齢者の場合、急激に血圧が上昇すれば心筋梗塞、致命的な不整脈、脳梗塞や脳出血などを惹起する。逆に血圧が急低下するとめまいやふらつきが起き、または意識を失うなどして、転倒や溺死という結果にもつながってしまう。
こうした現象を「ヒートショック」と呼ぶが、東京都健康長寿医療センターの調査によると、全国で1年あたり1万7000人が入浴中に心肺停止に陥っていると推計された。2017年の交通事故の死亡者数は3694人だから、ヒートショック死は実にその4.6倍だ。
あまりにも無策な
日本の住宅政策
日本の住宅市場ではそもそも、世界的なトレンドである住宅省エネ性の追求はおろか、住宅総量すら管理できていないため、景気対策としての新築が毎年大量に造られる一方で、空き家も年々増えるがままだ。
空き家が増加すれば、景観の悪化はもちろん、犯罪の増加、自治体の行政効率の悪化など悪いことずくめだが、国は一向に管理を行うつもりはないようだ。そもそも政府・与党には、住宅政策の問題点はおろか、その重要性を認識している政治家を、少なくとも私は知らない。2018年時点での空き家数は全国で1000万戸を超え、空き家率は17%程度。来年夏には、先進国中ダントツの首位に立っていることだろう。
ことほど左様に、日本の住宅政策は「不作為だらけ」なのだ。住宅の省エネ性向上による行政効率の維持、化石燃料輸入の軽減による外交・防衛的戦略、そして何より本格的な高齢化社会を迎える中で国民の健康寿命を延ばすことによる働き手や地域の担い手の維持、介護負担の軽減といった、ほとんどメリットしかない政策をなぜ、業界の都合で先送りするのか。
新築住宅の供給過剰は中古住宅の価値毀損や自治体税収の悪化を招く。また、無駄な公共事業と同じで、短期的な経済波及効果しか生まない。もちろん、立地に難があったり老朽化が著しかったりする住宅は取り壊すなどすればよいが、中古住宅の価値が維持されることにより所有者の資産が維持・増大することに着目することをはじめ、包括的で長期的な戦略を持つべきだろう。
こうしたビジョンが描けない政治や国の情けない姿は、国民の無関心に加え、変化を拒む業界団体といった病巣にも大きな原因があるが、あなたがいる業界も、構図としては似たようなものではないだろうか。だから日本はいつまでたっても変わらないし変われないのである。敵は国や政治にあるのではない。民間に潜むのである。
https://diamond.jp/articles/-/189131
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