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2018年12月25日 ダイヤモンド・オンライン編集部
消費税を政争の具にした安倍首相の罪は大きい、野田前首相がぶった斬る
野田佳彦・前首相
Photo by Hideki Yoshikawa
2019年10月に予定されている「消費増税」に伴って、景気の落ち込みを防ぐ名目で総額2.3兆円の対策が決まった。過去2回、増税を先送りした安倍晋三首相も腹を固めたようだが、選挙を意識したかのようなポイント還元や商品券発行といった“大盤振る舞い”には「本末転倒」との声が上がる。「3党合意」をまとめ「税と社会保障の一体改革」のレールを敷いた野田佳彦・前首相に聞いた。(ダイヤモンド・オンライン特任編集委員 西井泰之)
ポイント還元などの増税対策は
選挙を意識したバラマキだ
──過去最大を更新する101兆円の来年度予算が閣議決定され、その中で消費税率10%引き上げをにらんだ対策が決まりました。
野田 カードで購入する際のポイント還元からプレミアム商品券、自動車購入や住宅ローン減税、公共事業増額など、効果を精査もしないで、あれもこれも全部、認めたという感じです。
ポイント還元も、当初は2%という話が安倍首相の指示で原則5%になり、2020年の東京オリンピックまでやることになりました。税率が10%になる際には、食料品などは軽減税率で8%になり、さらにカードで購入するとポイント還元で実際の税率は3%になる。これはもう増税ではなく「減税政策」です。
しかも、減税の恩恵を受けるのは誰かというと、例えば就学支援を受けている低所得家庭の子どもでも、学用品を購入する際は10%の税金を払わなければならない。一方で大間の本マグロとか、高級おせちをカードで買う人は3%の税金で済むという。全く理不尽なことになってしまいます。
プレミアム商品券も、14年に税率を8%に引き上げる時に、地方の消費喚起などの名目で2500億円の交付金が計上されましたが、実際の消費創出効果は1000億円ほどでした。
なぜ消費税を上げるのかをきちんと説明することが王道なのに、バラマキでごまかしながら税率を上げるという悪い前例を作ってしまったことは非常に心配です。
──軽減税率も、店の中で食べるのと持ち帰るのでは税率が違うなど、店頭での混乱が懸念されています。
もともと軽減税率は、富裕層がより恩恵を受けるもので再考すべきです。しかも今回、軽減税率導入による1兆円余りの税収減の穴埋めを何でするかというと、その1つとして、医療や介護の負担を軽くする「総合合算制度導入」が検討されていたのですが、見送られました。
一家の大黒柱が脳の疾患などで倒れたら、医療費もかかり障害も残ることがあります。子育ての最中となれば、医療や介護、保育などでそれぞれ自己負担が必要なので、低所得の家庭では負担できなくなります。合算制度は、そうした自己負担を合算して、一定額以上は国で対応しようというものでした。
こうしたことは誰にでも起こり得る、まさに社会保障の制度なのに、軽減税率を導入するために、そういうサービスをつぶすわけです。聞こえのいい軽減税率を導入したり、バラマキをしたりして、結局、何のために消費増税をするのかが分からなくなっています。
軽減税率やプレミアム商品券は、自民党内にも「天下の愚策」だと批判する声は一部でありますが、連立相手の公明党の主張もあってむげにできないのです。
来年は統一地方選挙や参院選があり、公明党には選挙協力でお世話になりますから。まさに選挙を意識してのものだと思います。
「政争の具」にした安倍首相は
「3党合意」の精神を分かっていない
──もともと今回の消費増税は、当時の民主党・野田政権の時代、自民、公明党を含めた「3党合意」で、「税と社会保障の一体改革」の関連法が成立したからでした。
野田 社会保障の安定財源を確保していくために、消費税を上げていかざるを得ないというのは、国民も政治家も感じているのですが、政治は与野党お互いが選挙に負けるのを恐れて「増税」と言わず、やるべきことをしてきませんでした。
野田元首相
Photo by H.Y.
そこで、社会保障やそのための増税は、与党と野党がお互い共通の責任でやろうと合意したのです。次の選挙より次の世代のことを考えて、消費税を“政争の具”にするのをやめようというのが「3党合意」の精神です。
当時の自民党総裁の谷垣(禎一)さんとは、将来を考えて、増税の必要性をきちんと国民に訴えていかなければという共通の思いがありました。私は当時、このやり方が、例えば安全保障の分野の政策でもできるのでは、とも考えました。
政権が代わるたびに、安保政策や財政、社会保障などの国の基本政策が180度に転換するというわけにはいきません。しかし安倍政権では、「3党合意」の精神はどこかに行ってしまった感じです。
──04年4月に税率を8%にした後、10%への引き上げを2回先送りしたことですか。
野田 2回の増税先送りは、1回目は総選挙、2回目は参院選のそれぞれ1ヵ月ほど前に安倍首相が言いだしました。
選挙で、「景気が心配だから消費税を上げなくていいですか」と問えば、「いや、上げろ」という国民は少ないしょう。野党も、政府が景気の先行きに自信がないから(増税を)先送りしたいと言っている時に「上げろ」とは言えません。こんなひきょうな選挙はありません。
このことを国会でもただしたことがありますが、消費税は選挙の争点にはしたけれど、政争の具にはしていないというのが首相の答弁でした。しかし選挙こそ、政党間の最大の政争です。「3党合意」の精神が分かっていないと言わざるを得ません。
そればかりか、安倍首相は国会議員の定数削減という国民への約束も破りました。一体改革関連法案が審議されていた国会での私との党首討論(12年11月)で、国民に負担を求める以上、まず隗より始めよということで、国会が身を切る覚悟を示そうと、議員定数の削減を衆院の解散と合わせて約束しました。
民主党はその後、総選挙で負け下野しましたが、安倍政権になって衆院の定数削減はToo Little Too Lateの形でしか進みませんでした。党首討論では「来年(13年)の通常国会でやる」と約束されたのですが、17年に「0増6減」を実現しただけです。参院に至っては、この7月、6つ増やすことになりました。全くの約束違反です。
今回の消費増税の増収分の使途の変更も、昨年9月、総選挙前に唐突に出てきました。増税の増収分を何に使うかという骨格部分も3党で合意されたものです。それを突然、自民党内の手続きすらもなく言いだしました。
使途変更について、国会審議の中で公党間の議論があれば、教育や子育て支援の在り方、財政改革でも、もっと建設的な議論ができたはずです。
安倍首相の悪い癖は、真正面からきちんと説明して責任を持ってやろうとしないことです。
憲法改正にしても、やりたいのは9条(の自衛隊明記)なのに、最初は、憲法改正の発議や国民投票の条件を緩める96条改正で、改憲のハードルを低くしようということを言いだし、次は26条改正で教育を充実させるということになり、そして最近は、また9条に戻ってきています。要するに憲法改正ができれば、中身は何でもいいのです。
消費税でも憲法でも、国の根幹に関わる問題ですから、反対があっても、真正面からきちんと説明し説得し続けるべきでしょう。そうすれば、反対の人や反発を抱く人も議論に応じざるを得なくなります。こうして問題への理解や議論が深まるのです。
アベノミクスによる財政再建は
永遠に道半ばで終わる
──新しい財政健全化計画でも目標達成時期が先送りされました。
野田 借金の返済費以外の政策的な経費を、税収とその他の収入でまかなえるようにするプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化の目標達成時期を、20年度から25年度まで5年先送りしましたが、なぜ計画が失敗したかという総括も全くされていません。消費税収の使途変更をしたからだとの言い訳を言っただけです。
例えば、当初予算は厳しく査定したようにして、年度途中に補正予算を組むことが毎年度のように行われていて、安倍政権になってからでもその歳出増は30兆円以上になります。歳出改革はほとんど行われていません。
野田元首相
Photo by H.Y.
アベノミクスで景気をよくして成長戦略を進めれば、税収も増え財政も再建できると言います。実際にそうなればいいですが、「まだ道半ば」だと、政府自身が認めています。日銀が大量の国債を購入して金利をゼロにし、事実上の財政ファイナンスまでする異常な政策を約5年も続けているのに、です。財政再建は「永遠に道半ば」ではないでしょうか。
来年度の国の当初予算はとうとう100兆円を超える規模にまで膨れてしまいました。財政規律の緩みは明らかです。ほかにも国債などの市場が機能しなくなっています。もはや日本経済への弊害が看過できなくなってきています。
──25年度の目標達成も難しいという声もあります。
野田 今回の消費増税対策は、景気の落ち込みを防ぐという名目ですが、もともと、健全化計画で前提にしている成長率は、名目で3%、実質2%と現実離れした数字を置いています。
バブル崩壊後のこの約20年で平均すれば、日本の成長率は名目で約0.2%、実質で約0.8%しかいってないのです。役所が首相や官邸に気を使って、とうとう数値まで忖度していい加減な計画を作っています。
しかも、安倍首相の自民党総裁の任期が来る21年度までの中間目標は“大甘”な数字が置かれています。忖度の極みです。
しかし22年からは、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)に入ってきます。その後からは、誰が首相になるにしても財政運営は七転八倒の苦しみになるでしょう。森友・加計問題での忖度よりも、数字の忖度は国を滅ぼします。
財務省も、とにかく今は増税を嫌がる安倍首相を納得させて、税率を10%に上げられるのなら増税対策という“アメ”をいっぱい出してということなのでしょう。
しかし中期的に見れば、消費増税はこれで済むとは思えません。増税のたびに、毎回、こういうことをやっているとそれこそ財政圧迫になりますし、増税はこうした対策をしないとできないということになります。まさに本末転倒です。
国際会議に出て危機感抱いた
日本だけが甘い財政健全化計画
── 一体改革や消費増税が必要だと考えたのは、いつ頃からですか。
野田 1つは09年夏に政権交代があり、財務副大臣として10年度の予算編成を担当した時です。
リーマンショックの影響で、国の一般会計の税収が30兆円台に落ち込み、財源は税収より借金に頼るという予算編成をやらざるを得ませんでした。税収より国債発行が多いというのは1946年度以来。つまり終戦直後の混乱期以来の財政危機の事態でした。
しかも、当時と違って少子高齢化が加速し、社会保障費の膨張が目に見えています。民主党も社会保障のさまざまな政策を主張していました。それを実現したいけれど、財源なくして政策なしです。
当時から歳出改革を訴え、事業仕分けなどもやりましたが、それだけではとても対応できそうにありませんでした。オールジャパンでみんなが社会保障を支えるという考え方でないと、やっていけないという感じを強く持ちました。
もう1つは、日本の財政に対する国際的な信頼が揺らぎかねなかったからです。
その後、菅政権で財務相になり、G7などの国際会議に出ましたが、欧米なども税収が落ちる一方で、経済を支えるための財政出動で財政赤字が拡大していました。ギリシャ危機や欧州債務危機が続く中で、成長と財政再建の両立をどう図るかが、毎回の重要テーマになっていました。
各国が、財政健全化の中期目標や計画を作ってお互いが出し合う状況でしたが、他国は国債費などを含めた財政収支を黒字化する目標を掲げているのに、日本だけは、国債費などを除いた基礎的収支の黒字化という甘い目標でした。しかも目標達成の期限なども、他国に比べて突出して遅いわけです。
G7の共同声明に、日本の財政再建計画は「Unique」だと特記されそうになりました。日本の財政問題だけに焦点が当てられるのはまずいと、その文言を削除してもらうために水面下で懸命に折衝しました。国際会議に出ると、日本だけがノーテンキな財政運営をしていられないという思いになったのです。
──菅政権時代、10年の参院選直前になって、菅直人首相が突然、「消費税率10%」を言いだしました。
野田 菅さんは、首相になる前に財務相をしていましたが、首相になってからも国際会議で各国から日本の財政への懸念を多数聞かされ、私と同じような危機感を持っておられたと思います。
選挙に入る直前に電話があって、消費増税について自分も語ろうと思う、信を問う時だから国民にきちんと正面から言うのが責任ある政党だよねと言われて。ただ、税率引き上げの具体的な数字まで言われるとは思っていませんでしたから、驚きました。
ただ、その心意気はよしだと思いましたが、数字などは理詰めでいかないと大変なことになると。実際、そうなってしまいました。
10年の参院選に向けたマニフェストでは、消費増税による財政健全化を次期総選挙後に超党派で取り組むことが、最後に書かれていました。しかし、菅首相が前のめりになり「税率10%」まで言及したため、民主党は無駄を徹底的に省くといっていたのにもう増税かと、国民の反発が強まってしまいました。
もともと民主党が政権をとった時の09年総選挙のマニフェストに増税は掲げていませんし、その選挙で当選した議員もいましたので、党内も混乱しました。結局、参院選は惨敗に終わり、増税問題を機に党内の内部対立が激しくなって菅さんは求心力を失ってしまいました。
重い代償にはなったが
党内融和より改革を優先した
──後を引き継いだ野田政権は、12年1月には政府・与党社会保障改革本部で一体改革の素案を決定、3月には関連法を閣議決定して国会提出にこぎつけましたが、小沢一郎氏らのグループが離脱する事態になりました。
野田 消費増税は09年選挙のマニフェストには載っていませんでしたが、逆に言うと、消費税を上げないとも書いていません。政権を預かった段階で財政が苦しい状況になれば、それにきちんと対応するのが政権のあるべき姿です。
それに衆院と参院の違いはあるにしても、菅首相時代に公党としてそれで選挙を戦うことを打ち出したのですから、私が首相になっても、そのことは重く受け止めてやるしかないと考えました。
しかし一体改革の素案決定から、関連法案の閣議決定、国会提出後の3党合意まで、ほぼ3ヵ月ごとに修羅場がありました。
素案決定は11年年末でしたが、インド訪問から帰国しても党内でまだ合意ができないというので、その足で党本部での議論に加わりました。5時間ぐらい計23人から質問を受けてやり取りをして、最後は拍手でもって受け入れられたのです。それで大きな山場を越えたと思っていたら、閣議決定の時に議論がぶり返した。
自分も入って党内で議論して決めたという自負もありましたから、そこですごろくのように元に戻すわけにはいきませんでした。党から出てしまった人たちもいましたが、あの時は51対49の多数決でも決めないといけないと思っていました。
野田元首相
Photo by N.Y.
──結局、一体改革の関連法案は「3党合意」(12年6月)の下で可決・成立しましたが、法案採決では民主党の反対派が欠席や棄権をし、その後、離党しました。
野田 増税は苦しい決断だけれど、みんなについてきてほしいと思いました。党内でまとまり、各党と合意するというのがベストでしたが、改革をもう先送りはできないという気持ちでした。
離脱者が出て党内で多少こぼれ落ちたとしても、踏み出した以上、途中でやめたら消費増税をまた10年、下手をすれば20年やれなくなると思いました。そんな無責任なことはできませんから、多少、傷を負ってでも前に進めようと、最後は党内融和よりも、あえて3党合意、一体改革を優先する決断をしたということです。
結果的に重い代償にはなりましたが、そのこと自体は間違っていなかったと思っています。
https://diamond.jp/articles/-/189246
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- 平成後期の政治振り返る 民主党政権の功罪、歪んだ安倍一強 「国民を失望させた」民主党の3首相 うまき 2018/12/25 17:05:02
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