2018年12月8日 国のあり方を根本から変貌させる改悪「出入国管理法」は認められない(談話) 社会民主党幹事長 吉川はじめ 1.社民党は、技能実習生の劣悪な実態の解決もないまま、なし崩し的に安価な外国人労働者を拡大する「出入国管理法」改悪案の成立を阻止するため、参議院法務委員長解任決議案、法相問責決議案を野党共同で提出して闘ったが、安倍政権と与党は、本日の参院本会議で「出入国管理法」改悪案の採決を強行した。熟議を求める声に背を向け、良識の府・再考の府である参院の自殺行為が繰り返されたことに激しい憤りを感じるとともに、民主主義を破壊する安倍政権の相次ぐ暴挙に満身の憤りを込めて抗議する。 2.人手不足の業種をどう判断するのか、どのような技能水準や日本語能力を持つ労働者を何人受け入れるのか、試験はいつどこでどのような手段で実施するのか、誰が何を根拠に人手不足解消を判断するのか、日本人と同等以上の報酬を含む雇用契約基準や日本語習得支援・住宅確保・入国前の生活ガイダンス提供などの生活支援策、受け入れ機関の条件、新たな在留資格と永住権との関係など、受け入れの根幹となる重要項目をことごとく先送りし、政府に制度設計を白紙委任するよう求める杜撰極まる法律を施行することなど、断じて認められない。 3.法務省は、外国人技能実習制度をめぐるデータのねつ造と実態隠しまで行っていたほか、受け入れ先への監督を強化した昨年11月の「技能実習適正化法」施行後も実習生の失踪が多発している現実も明らかになった。2015年からの3年間で、69人の技能実習生が溺死や凍死、自殺などで亡くなっていた実態も浮き彫りになった。人権侵害が今なお横行する技能実習制度を温存したまま見切り発車することは、日本の国際的な信用低下にも直結しかねず、強く憂慮する。 4.わずかな国会審議の中でも、安倍政権が日本で働く外国人労働者を生活者として受け入れる意向が皆無で、「安価な労働力」としかみなしていない事実が浮かび上がった。山下法相は「特定技能1号」の外国人に家族帯同を認めない理由を、「家族の支援も検討する必要が生じ、人手不足という喫緊の課題に即座に対応できない」と耳を疑う答弁を行った。また施行を来年4月と急ぐ理由について、「法改正が半年遅れれば万単位の方々が帰国してしまう。我が国経済に深刻な影響を与え対応は待ったなし」とし、技能実習生らを在留期限が切れる前につなぎ止めたい本音を露わにした。さらに安倍政権は、日本で永住資格が得られる条件の1つである「就労資格」について、「特定技能1号」で働く期間はこれに含めない方針を打ち出したが、労働者なのに「就労」と認められないとは一体どういうことなのか。こうした理不尽な扱いは、「特定技能1号」は技能実習制度の延長にすぎず、実習生をより長く便利に使い続けるための制度とするのが法改悪の真の狙いであることを如実に物語っている。 5.改悪法が施行されれば、国内外で大きな混乱が懸念される。例えば、「特定技能1号」資格導入が見込まれる14業種のうち、初年度に5000人、5年間で5〜6万人と最大規模の受け入れを見込む介護業は、既にインドネシア・フィリピン・ベトナムからの「特定活動(EPA)」、昨年介護が追加されたばかりの「技能実習生」と「在留資格・介護」の3種類の在留資格があり、そこに「特定技能1号」も加われば、4種類の資格者が日本国内に存在することになる。在留資格更新に上限のない「在留資格介護」、原則4年以内に介護福祉士の資格を得なければならない「特定活動」、最長5年間の「特定技能1号」、最長5年で1・3・5年目に技能評価試験を受けなければならない「技能実習生」など、在留期間も境遇も介護の技能も日本語能力もバラバラの4種類の資格取得者に、介護職場は全て対応できるのか。 6.全ての業種で、万に一つにも無用な混乱を生まないようにするあらゆる責任は、安倍政権の側にある。社民党は、今後具体化する制度設計を厳しく監視し、追及を継続する。そして改悪法に反対する国内外の幅広い団体・個人と一層連携を強め、一刻も早い廃止に向けて全力を尽くすとともに、技能実習制度を本来の国際貢献の目的に叶うよう抜本改革するなど、全ての外国人労働者の権利保護と生活支援、そして劣悪な雇用環境の一掃を急ぐ。 以上 http://www5.sdp.or.jp/comment/2018/12/08/%e5%9b%bd%e3%81%ae%e3%81%82%e3%82%8a%e6%96%b9%e3%82%92%e6%a0%b9%e6%9c%ac%e3%81%8b%e3%82%89%e5%a4%89%e8%b2%8c%e3%81%95%e3%81%9b%e3%82%8b%e6%94%b9%e6%82%aa%e3%80%8c%e5%87%ba%e5%85%a5%e5%9b%bd%e7%ae%a1/ 2018年12月8日 「漁業法」改悪案の参院採決強行に抗議する(談話) 社会民主党幹事長 吉川はじめ 1.本日、安倍政権と与党は、参院農林水産委員会と本会議で「漁業法」改悪案(漁業法等の一部を改正する等の法律案)の採決を強行した。「出入国管理法」改悪案の強行に続く数に奢った暴挙に、社民党は厳しく抗議する。衆参のわずかな審議を通じても、安倍首相が言い募る「70年ぶりの抜本改革」とは、地域の漁業者の共同により長年営まれてきた沿岸漁業に資金力に勝る企業を参入させ、長期的に漁業権を独占させる「企業が一番活躍しやすい国」づくりの水産業版との本質が露わになった。社民党は漁業者と漁村が守り通してきた里海の環境を悪化させ、国土保全の機能も損ないかねない改悪漁業法を一刻も早く廃止し、地元の漁協や漁業者に漁業権を優先的に割り当てる民主的な水産業の復活へ全力を尽くす。 2.今回の改悪法の最大の問題点は、養殖漁業や定置網の沿岸水域の漁業権について地元の漁協や漁業者に与えてきた優先割り当ての廃止である。免許更新の際は漁場を「適切かつ有効に活用」しているかを基準に都道府県知事が判断し、新たな漁業権は「地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者」に与えるとするが、いずれも基準が極めて曖昧で知事の胸先三寸で地元外企業への付与に道が開かれる。様々な魚種が重なり合う沿岸水域の漁業権を地元漁協が適切に管理し、必要に応じて海を休ませ、水産資源を維持し水質悪化を防いできた地道な取り組みが困難となりかねない。知事の判断次第でいつ漁場が新規参入企業に奪われかねないとなれば、漁業者の後継者不足に拍車がかかる恐れもあるなど地域の衰退も懸念される。「水産資源の管理」を名目に魚種ごとの漁獲可能量を設定し個々の漁船ごとに割り当てる制度も導入されるが、割当量の配分に沿岸漁業者の意見を反映する仕組みはなく、禁漁を余儀なくされた場合の補償もないなど、日本の水産業を支えてきた小規模漁業者への配慮を著しく欠いた改悪法が海や漁村の荒廃につながる事態を強く憂慮する。 3.昨年の漁獲量は430万トンで1984年の3分の1にまで落ち込むなど、日本の水産業に実効性のある振興策が求められていることは確かだが、漁業者が規模の大小を問わず安心して漁を営める環境整備が第一歩であり、水産現場の実態や意見を踏まえない安倍政権は方向が全く逆である。社民党は、「資源管理・漁業経営安定対策制度」を着実に推進・拡充するとともに、漁獲枠も大・中型巻き網漁船に的確な規制を講じ漁業資源保護と小規模漁業者支援のバランスを取ったものとするなど、漁業者の所得向上と持続可能な水産業の確立へ全力を挙げる決意である。 以上 http://www5.sdp.or.jp/comment/2018/12/08/%e3%80%8c%e6%bc%81%e6%a5%ad%e6%b3%95%e3%80%8d%e6%94%b9%e6%82%aa%e6%a1%88%e3%81%ae%e5%8f%82%e9%99%a2%e6%8e%a1%e6%b1%ba%e5%bc%b7%e8%a1%8c%e3%81%ab%e6%8a%97%e8%ad%b0%e3%81%99%e3%82%8b%ef%bc%88%e8%ab%87/ 2018年12月8日 日欧EPAの承認成立について(談話) 社会民主党幹事長 吉川はじめ 1.本日の参議院本会議で、日EU経済連携協定(日欧EPA)の締結についての承認案件の採決が行われ、与党などの賛成で可決・承認された。貿易品目の9割超の関税を撤廃しようとするものであるにもかかわらず、協定発効による国内の農林水産物への影響についての試算の根拠は極めて曖昧で、交渉経過についても全く情報公開されていない。安易に承認すれば、日米交渉で米側をさらに勢いづかせかねない。こうした重要案件を十分な審議も行わないまま、押し通す姿勢は断じて許されない。 2.農水省によると、日欧EPAでの農林水産物の関税撤廃率は、品目数ではTPP並みの82%となっている。影響が最も懸念されるのは、TPPでの合意を大幅に上回る譲歩を余儀なくされたチーズである。EUはチーズの競争力・ブランド力が強く、輸入増で競争が激化し国産チーズの消費減が危惧される上、需要をEU産に奪われチーズに使う加工用の国内産生乳が飲用に回り、国内の生乳全体の需給が乱れれば、乳価にも甚大な影響が出かねない。また国産チーズの需要を確保するため、一定割合の国産ナチュラルチーズ購入を条件にプロセスチーズ原料用に輸入するチーズの関税を無くす「抱き合わせ制度」の形骸化も憂慮される。 3.EU最大の輸出品目である豚肉も、日本への冷凍豚肉の2割強を占めるデンマークや、イベリコ豚ブランドが近年急伸しているスペインからの輸入が、低価格で大幅に増加する恐れが強い。さらに欧州産ワインの関税撤廃による国内産地への打撃や、欧州産木材製品の市場開放で3割超まで回復した木材自給率に水を差す懸念など、安易な合意の弊害は農畜産業や林業にとどまらず地域経済にも広く及びかねない。 4.安倍政権は協定発効による国内の農林水産物への影響について、生産額が最大1100億円減少すると試算しているが、その根拠は極めて曖昧である。TPPと同じく8割超のかつてない農産物市場開放を迫られるのに、国内対策の効果で価格の安い輸入農産品への置き換えは一切生じず、輸入量が増えても国内の生産量も農家所得も維持され食料自給率にも何ら変化はないとの筋立ては到底信じ難く、試算の根拠について不明確なまま承認するのは論外である。 5.今年7月の日欧首脳によるEPA署名後に、「協定発効後5年目の見直し規定」が判明した。欧州産農産物の輸入関税や低関税輸入枠の取り扱いについて、発効後5年目か、双方が合意した年のいずれか早い年に、「市場アクセス(参入)の条件を改善する観点から」見直すと規定している。対象となるのは、低関税輸入枠を設けたソフト系チーズや長期の関税撤廃期間を確保したハード系チーズ、差額関税制度を維持した豚肉、牛肉、砂糖菓子などで、いずれも欧州の輸出関心品目であり、強い市場開放要求によるものである。日欧EPAで、日本はTPPと同水準の市場開放を認めた上、TPPの「7年目」より早い期間での見直しを約束させられたことは看過できない。さらに、他の協定で他国に一層の市場開放を認めた場合は、同等の待遇を与えるために、その協定発効から3か月以内に日欧EPAでも見直しを始め、6か月以内に結論を目指すとも定められている。2019年1月から始まる見通しの実質FTAの「日米TAG」交渉で、上回る合意を余儀なくさせられれば、日欧EPAでも直ちに見直し協議が始まりかねず、際限のない市場開放を強いられかねない。 6.政府調達分野では、TPP以上に日本の譲歩が目立つものとなり、地元の中小企業の排除によって地域経済への影響が生じるとともに、多くの公的機関の調達において、商業ベースでの事業を強制されかねないことが懸念される。、また、公契約条例などの地域政策や地域内経済循環への制約を強め、地域の自治権を損ないかねない。 7.農業の「競争力強化」・「成長産業」化、種子法の廃止、TPP11、漁業法改悪等、安倍政権は新自由主義的農政改革路線を展開し、農林水産業の切り捨てを進めてきた。そして今回の日欧EPAによってまたもや、日本の農林水産業をさらに窮地に追い込み、地域に打撃を与えようとしている。社民党は、安倍農政と徹底的に対決し、戸別所得補償制度の復活・拡充など、真に有効な農林水産業振興策の実現を求めて全力で取り組む決意である。 以上 http://www5.sdp.or.jp/comment/2018/12/08/%e6%97%a5%e6%ac%a7%ef%bd%85%ef%bd%90%ef%bd%81%e3%81%ae%e6%89%bf%e8%aa%8d%e6%88%90%e7%ab%8b%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%ef%bc%88%e8%ab%87%e8%a9%b1%ef%bc%89/
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