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12月 02, 2018
<11月30日開幕した20カ国・地域(G20)首脳会議では、泥沼となった貿易戦争の中で緊迫した論戦が繰り広げられた。米中は首脳会談を前に神経戦を続け、米国に「ドナルド、関税の取り下げが必要だ」(カナダのトルドー首相)と直訴する首脳も現れた。世界景気に減速感がにじむ中、米国発の「自国第一主義」は各国に広がり始め、対立の構図は一段と複雑だ。
「各国と幅広く協議すべきだ。ワンマンはいけない」。ブエノスアイレスで2日間の日程で始まったG20首脳会議。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は単独主義を批判してみせた。名指しこそ避けたが、矛先にあるのは翌日に首脳会談で相対するトランプ米大統領だ。
トランプ氏もG20開幕前、アルゼンチンのマクリ大統領と会談した。ホワイトハウスは「両首脳は中国の略奪的な経済行為について話し合った」とあえて対中批判を盛り込んだ声明を発表。両国は首脳会談を前に、ぎりぎりの圧力を加え合う。
トランプ氏は「中国は取引したがっている。何が起きるかみてみよう」と期待感も持たせる。日本の安倍晋三首相も米中に割って入り、11月30日の習氏との首脳会談では「産業補助金や技術移転の強要などで具体的な措置が重要だ」と、米国側に立って背中を押した。
米中の首脳会談が決裂すれば、貿易戦争はますます出口が見えなくなる。習氏はG20会議で「知的財産の保護などを強化する」と柔軟姿勢もみせたが、首脳外交に必要な実務レベルでの協議は進まないまま、1日の会談当日を迎える。
貿易戦争の渦中にあるのは米中だけではない。
「ドナルド、鉄鋼の関税取り下げに尽力する必要がある」。北米自由貿易協定(NAFTA)を改定した「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の署名式。カナダのトルドー首相は記者団の前で突然、トランプ氏に関税撤廃を要求した。
カナダは米国の強い圧力でNAFTA改定に応じたが、鉄鋼などには高い関税を課されたまま。トルドー氏は来年に総選挙を控えるが、カナダでは米国製品をボイコットする「カナダ第一主義」が持ち上がる。他のG20参加国でも自国主義を訴えてブラジルやメキシコでは政権交代が起き、欧州でも英国やイタリアなど多国間協調に背を向ける動きが相次ぐ。
G20会議は1日に閉幕するが、トランプ政権に各国が反発する構図は変わらない。首脳宣言のとりまとめは難航し、G20の交渉筋は「貿易、気候変動、多国間主義を巡って意見調整ができていない」と明かす。
「多国間主義」との文言を入れれば、世界貿易機関(WTO)ルールを軽視するトランプ政権への批判と映る。米国はそのリスクを嫌って声明から「多国間主義」との文言を落とすよう求める。
気候変動問題も国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱を決めた米国と19カ国・地域の対立が続く。急先鋒(せんぽう)はマクロン仏大統領。同氏は支持率が2割台まで急落し、G20の舞台で失地回復を狙う。米国の排除もいとわず「気候変動を巡るG20合意は、米国をのぞく19カ国・地域だけとなるかもしれない」(交渉筋)。
G20会議の冒頭、トランプ氏はロシアのプーチン大統領をあえて無視するような態度をとった。ウクライナ艦船の拿捕(だほ)事件でトランプ氏は米ロ首脳会談を急きょ中止。マクロン仏大統領はサウジアラビアのムハンマド皇太子に、著名記者の殺害事件をG20会場で追及した。貿易戦争で大揺れのG20だが、火柱は各所で上がる。
世界景気は減速の兆しがあり、過大債務の問題や新興国の通貨安などで、再び国際協調が求められる局面だ。G20会議でも国際通貨基金(IMF)が「想定を超えて経済成長が鈍化する懸念がある」と警鐘を鳴らした。
6月の日米欧7カ国(G7)首脳会議では、閉幕前に席を立ったトランプ氏が「首脳宣言を承認しない」と一方的にツイッターで通告する異常事態となった。11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)は、発足以来初めて首脳宣言の採択に失敗した。G20までも協調の欠如を露呈すれば、下を向き始めた世界経済の重いリスクとなる>(以上「日経新聞」より引用)
いまの世界が良く分かるようにG20に集まった各国首脳の様子をオムニバム形式で取材した記事を長々と引用させて頂いた。それぞれの国の首脳が必ずしも各国民のために働いているのではないのがお解りだろうか。
彼らはあるいは軍部を代表し、あるいは経済界を代表し、あるいは自らの「政治権力」を維持・拡大するためにG20にやって来たようだ。ただ日本の首相だけがトンチンカンな立場を表明しているようだ。
安倍氏は11月30日の習氏との首脳会談で「産業補助金や技術移転の強要などで具体的な措置が重要だ」と注文を付けたようだ。中国が赤字でも低廉な鉄鋼を大量生産するのを可能にしている「産業補助金」を止めるように言ったのだろう。
それは正しいが、それなら反対に日本の農業に対する補助金や関税なども批判されるだろう。中国にとって鉄鋼や自動車などの「基幹産業」は各企業に社会保障義務を負わせた国策産業でもある。同時に、それらの多くは各地の軍部利権でもあるから、中国政府は「合理化」出来ないでいる。
知的財産への侵害は中国だけではない、韓国も日本企業にヘッドハンティングを掛けて、日本の家電や太陽光発電の知的財産を人ごと奪った。今後ともそうした戦略を中国や韓国が放棄しないのなら、日本の国益を守るために「技術者等の一定期間海外渡航禁止法」を制定するしか防御策はないだろう。それは安倍氏の主張する自由で公正な貿易の理念に反しないのだろうか。
また習氏は米国の「自国第一主義」を批判したが、まさしく「一帯一路」こそが自国第一主義ではないだろうか。さらに「一帯一路」は経済侵略から軍事侵略へと続く道程でもあり、世界平和を目指す日本が最も強く批判すべきことではないだろうか。
世界各国は同じ人類が暮らしているが、それらは地理的にも経済的にもそして文化的にもすべて異なる。共通しているのは、かけがえのない命を繋ぐ「ヒト」が暮らしているということだけだ。
だから世界各国にはそれぞれ個別的な事情があるのは当然だろう。しかし特定の個人や団体の利益のための大勢の国民を踏みつけにする社会のありようには賛成できない。いかに立派な理念を掲げようと、いかに立派な立ち居振舞いをしようとも、彼らに拍手を送る気にはなれない。
安倍氏はいかなる立場に立っているのだろうか。消費増税を画策している彼は少なくとも国民の側の人ではない。「社会福祉のため」とお為ごかしの言い訳をしているが、これまで消費増税して社会福祉は後退の一途ではないか。
超過累進税率の廃止や配当分離課税を廃止しないなど富裕層を優遇する税制や、無目的な法人減税をしている面から判断すれば、安倍氏は一握りの「富裕な財界人」の立場に立つ政治家だ。そうした立場は米国の1%に奉仕してきた歴代大統領と軌を一にしている。ただし、米国には国税としての消費税はない。
米国には消費税はなく、各州が「小売に課税する」小売税があって、州税率と“平均”郡市税率の合計で、アメリカで一番税率の高い州がルイジアナ州の10%、一番低い税率の州がオレゴン州・モンタナ州・デラウェア州の0%となっている。
貿易戻し税といった税の複雑・不透明化を避けるために、米国では製品製造から卸を経て小売業者までは課税されないで、消費者の手に渡る最終の「小売り」の段階で課税する。欧州や日本の消費税や付加価値税の複雑怪奇な税制とは随分異なる。
日本国民は日本中はすべての社会負担が単一だと思い込んでいるが、実際はそうではない。水道料金は地方自治体によって数倍の格差があるし、国民保険料も地方自治体間では同一所得でも保険料が大きく異なっている。医療費も地方自治体によって義務教育者は無料になっていたり、幼児だけ無料であったりと格差がある。
ある地方自治体では水洗トイレ化を推進するために浄化槽設置補助金を出して無料化にしているところもあれば、バキューム汲み取り業者を温存するために浄化槽設置補助金を都道府県で定めるだけにとどめている地方自治体も存在している。
それぞれの地域にそれぞれの事情がある、というのは理解できるだろう。自由貿易で関税を撤廃すれば日本の農業が壊滅する。農業は保護して、他の貿易だけ「自由だ」と叫ぶのは自由でも公正でもない。しかし自国民の生命と国家の命運を食糧が握っていることに鑑みれば、農産物を他国に全面的に依存してはならない、というのは先の大戦の開戦に到った米国の「禁輸」制裁という残酷な仕打ちだった、というを忘れてはならない。
いかに日本企業がカネを稼ごうと、カネで国民の腹が膨れるわけではない。食糧が買えなければカネなど単なる紙屑だ。国家は国民のために存在する、というのが近代国家のあり方の基本だ。つまり「国民の生活が第一」の政治こそが基本だということを忘れてはならない。G20で各国首相の発言を紹介している上記記事を、誰が誰のために発言しているのか、という観点から精読されることをお勧めする。
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