http://www.asyura2.com/18/senkyo254/msg/156.html
Tweet |
領土確保が国益とは限らない…縮小で成長した日本と西独 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/242303 2018/11/24 日刊ゲンダイ 会談前にロシアのプーチン大統領(右)と握手する安倍首相(C)共同通信社 11月14日シンガポールで安倍首相とロシアのプーチン大統領が会談、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約を締結する方針で合意した。だが、この共同声明はロシアが歯舞、色丹両島を平和条約締結後に日本に引き渡す――という内容だから、従来、政府が唱えてきた国後島、択捉島を含む「4島返還」とは大差がある。「まず2島を還してもらい、他の2島はその後に交渉」との論もあるが、ロシアにとっては、それでは日本との対立が今後も続く状態になるからのみそうにない。 日本政府は1960年頃までは、北海道の一部である歯舞、色丹の返還を求め、国会は2島返還で合意した日ソ共同宣言を批准した。だが、60年代に沖縄で本土復帰運動が高まると、日米両政府は、それが日本全土での反米感情につながるのを警戒、「4島一括返還」を要求する「北方領土問題」に国民の目を向けさせて沖縄問題とのバランスを取ろうとした。 1950年の対日講和条約で日本は当時、すでにソ連が支配していた「千島列島」と南樺太の放棄を宣言していたから、ソ連が国後、択捉を返還する可能性はなかった。それだけに日本国民の反ソ感情を永続させる効果を狙ったのだろう。 これが今日、裏目に出て、安倍首相が2島返還だけで終止符を打てば、自民党内や支持層から相当激しい非難を受けそうな形勢となった。 猿でも蟻でも動物はテリトリー争いをするから、領土問題になると、大衆は本能的にナショナリズムに傾きがちだが、いまや領土は国力の主たる源泉ではない。第2次世界大戦後、台湾、朝鮮、南樺太などを失った日本の領土は戦前の約54%に縮小、事実上、日本の支配下にあった満州を含むと面積は約20%になった。だが日本は1968年には戦前には思ってもよらなかった世界第2の経済大国に躍進した。ドイツも同様で、東ドイツ、オーストリアと分離した西ドイツの面積は戦前のドイツの42%になったが1961年に戦勝国の英、仏をしのぎ欧州1位、世界第2の経済大国になった。商工業、サービス業が主体の今日の経済では資本(外資導入を含む)や技術、労働力(質と量)、国外市場(友好関係)などが国力を決める主な要素だ。 米国は戦後の欧州の復興のために「マーシャルプラン」で資金を供与し、英、仏はそれぞれ西独の約2倍の額を得たが、英、仏が植民地放棄の後始末や、保持のために資金を使い果たす一方、西独は産業復興に集中できたから急速に興隆した。 特にフランスはベトナムで負け、アルジェリアでも反徒制圧に歳出の4割を使う愚行を続け破綻寸前になった。第2次大戦の英雄ドゴール将軍が再び登場、何度もの右翼の暗殺計画をものともせず、アラブ人と交渉を続け、植民地ではなくフランスの3省だったアルジェリアを独立させ、フランスを立ち直らせた。放棄した領土はフランス本土の4倍以上、領土を守り抜いたのではなく、切り離しに成功して再び「救国の英雄」となったのだ。 イギリスでは19世紀から「植民地経営は全体として赤字、放棄すべきだ」との小英国主義を一部の学者、経済人が唱えた。当時の英国は帝国主義の最盛期で、多くの植民地から利得を得ているように思われていたが、実は経費倒れだった。英国の繁栄は最先端の工業国、最大の金融、海運国だったからで、その利益を植民地のインフラ整備や防衛、行政費に浪費していたのだ。儲けた人もいたが、それは税金を間接的に横領していた形だ。 日本でも東洋経済新報の社長で、戦後1956年に自民党総裁、首相となりながら病気のため2カ月で辞任した石橋湛山が戦前から属領の赤字を指摘し、「すべて捨てよ」と公言し、加工貿易、科学立国を重視する「小日本主義」を唱えていた。その正しさは戦後、証明された。 現在、政府は領土問題教育を推進しているが、政府には他国と妥協する必要がある場合もある。日本の主張の正当性だけを教えたり、領土を神聖視するのは自縄自縛になりかねない。内政問題で他国の介入を受けない「政治的主権」と「領域主権」は同一ではない。領土はかつて米国がフランスからルイジアナ、ロシアからアラスカを購入したように売買されたり、譲渡や王家の分割相続の対象となったこともあって、領域主権は不動産の所有権に近い。 むしろ、日本が領土の約半分を失っても経済大国となった事実は諸国に対し誇るべき模範であることを示し、その成功の原因を生徒に考えさせる方が長期の国益に資すると考える。 田岡俊次 軍事評論家、ジャーナリスト 1941年生まれ。早大卒業後、朝日新聞社。米ジョージタウン大戦略国際問題研究所(CSIS)主任研究員兼同大学外交学部講師、朝日新聞編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)客員研究員、「AERA」副編集長兼シニアスタッフライターなどを歴任。著書に「戦略の条件」など。
|
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK254掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK254掲示板 次へ 前へ
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/
since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。