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本心はどこに?今になって小沢一郎に近づく橋下徹の「皮算用」
https://www.mag2.com/p/news/376792
2018.11.16 新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』 まぐまぐニュース
先日、「橋下徹前大阪市長と自由党の小沢一郎代表が、国民民主党の前原誠司氏を介して会食した」との報道がなされ、さまざまな憶測を呼んでいます。政界復帰を完全否定し続けている橋下氏ですが、ではなぜ今、小沢氏と会ったのでしょうか。元全国紙社会部記者の新 恭さんが自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、橋下氏の本心を探ります。 今なぜ橋下氏は野党結集を論じ小沢氏と会ったのか 小沢一郎氏と橋下徹氏のたった一度の会食が、いくつものメディアに取り上げられている。 一部新聞に「終わった人」扱いされている老政治家が、政界を引退したタレント弁護士と会ってフランス料理を食べた。それが、どうしてニュースになるのか。 安倍政権べったりの産経新聞と、かつて「政治とカネ」をめぐるデッチ上げ事件で小沢バッシングを続けた朝日新聞に、こう書かれている。
安倍政権の補完勢力とみられている「維新」の生みの親が、野党結集を論じているのには違和感を持つ方も多いだろう。 報道によると、橋下氏の新著に書かれた「強い野党の作り方」の中身が話題になり、橋下、前原、小沢の三氏は、共鳴し合うところがあったようだ。 橋下氏は、週刊FLASH11月6日号のインタビュー記事で、著書に関しこう語っている。
つまり、野党陣営が自民党に対抗するには、各選挙区で野党統一候補を立てる必要があり、党の垣根を超えて予備選を行えば、候補者選びの“見える化”で国民の関心も高まるというわけだ。 周知の通り、政権交代可能な二大政党制を実現するため、小異を捨てた野党の結集を、ぶれることなく唱えているのが小沢氏だ。いつの間にか小沢氏は、民主党時代に対立していた国民民主党の前原誠司氏や、立憲民主党代表の枝野幸男氏と、野党結集について忌憚なく語り合う仲になっている。もちろん、共産党や社民党とのパイプも太い。 その小沢氏を、前原氏が仲をとりもつ形で、橋下氏との会食に招いた。 橋下氏が小沢氏に会うのは、筆者の記憶する限りでは、2009年に鳩山政権が誕生したあと、大阪府知事として国会内の民主党幹事長室を訪問して以来のことではないかと思う。 その時、小沢氏の印象を「すごいとしか言いようがない」と興奮気味に語っていた橋下氏の紅潮した顔が思い浮かぶ。 官僚支配体制や既得権構造の解体をめざすなど、いくつかの点で橋下氏は小沢一郎的な面を持っている。 しかし、検察権力に弾圧された小沢氏が政治力を失っていく過程で、橋下氏はしだいに小沢氏から遠ざかり、石原慎太郎氏と手を組んで党勢拡大に利用しようとし、失敗した。安倍晋三氏が首相になると、大阪の府政、市政への支援を求める代わりに政権に協力するという打算先行の政治手法を採ったが、これも結局のところ、維新人気の凋落につながっていった。 『政権奪取論』で橋下氏は、維新について、大阪の地域政党として成功したが、国政では失敗したとはっきり書いている。
「政治ごっこで終わってしまった」とまで書いているところをみると、もはや維新国会議員の存在価値を認めていないようである。よほど、反省の念が強いと見える。 良いように解釈するなら、政界を引退して維新とやや距離を置いたことにより、見えてきた部分も多いのではないだろうか。松井大阪府知事は、親分肌で地方議員ながら政治経験も長い分、維新の党運営を任せるのに重宝したが、彼らとの議論だけでは視野が狭すぎる。 その点、民主党政権の失敗を経験した前原氏との定期的な会食で得た教訓や、国政に関する知識、情報はかなり中身の濃いものだったに違いない。 いまは国民民主党の一員として雌伏する前原氏だが、橋下氏とはなぜかウマが合う。民主党政権の国交大臣だった時代、橋下大阪府知事と協力して関西空港、大阪空港の経営統合をして以来の付き合いだ。 前原氏と互いに刺激しあううちに、橋下氏は維新に欠けているものを明確に認識し、野党結集の必要性を感じて、『政権奪取論』を書いたのではないか。 小沢氏はいまでも橋下氏の稀有な弁舌の才能と決断力を高く評価している。事実、今月13日の記者会見では、橋下氏について「彼は国民の心を捉え、アピールする。政治家の非常に大事な資質を備えている」と語った。 前原氏が橋下氏と小沢氏の会談をセットしたのは、両者の再会で何らかの“化学反応”が起き、野党再編の起爆剤になることを期待したからであろう。 橋下氏もまた、『政権奪取論』のなかで、小沢氏を次のように評価している。
来年夏の参院選の時点では、安倍政権も自民党総裁任期満了の2021年9月まで2年余りとなり、選挙結果次第ではレームダック化する可能性がある。安倍政権に力を貸してきた日本維新の会も、国政では存在感を示せず、このままいくと、いずれ消滅しかねない。 橋下氏が政界に戻りたいと思っても、維新の現国政メンバーの力量と、全国各地の地方組織が整っていない現状を考えれば、前途はきわめて厳しい。 そこで橋下氏は、提案型野党を標榜し始めた国民民主党と手を組んで維新の第二自民党的イメージを刷新し、野党結集の核となる戦略を描いているのかもしれない。 もし両党の連携が成立すれば、次にどうやって立憲民主党を仲間に引き込むかということが問題になる。立憲民主党はそうそう簡単には乗ってこないだろうが、一時の党勢が下火になってきているだけに、政権交代をにらんだ野党連合が現実味を帯びるなら、柔軟な対応に転じることもありうるだろう。 民主党政権時代の前原氏はいわゆる“反小沢系”議員の一人だった。その点では枝野氏も同じだ。かつて自由党が民主党に合流したとき、最も反対したのが枝野氏だったといわれる。しかし、枝野氏もまた昨今では、小沢氏と定期的に会食しているようだ。 小沢氏が各野党をつなぐキーパーソンであることは確かなのだ。その人と食事をしないかと前原氏に誘われた時、橋下氏は何を思っただろうか。 野党統一候補を立てるために「予備選」を行うべきという橋下氏の考えを小沢氏にぶつけ、意見を聞きたいと思ったかもしれない。 「予備選」が実現すれば面白いだろうが、具体的にどのようなやり方をするのかが明確ではない。各党の考えをまとめるのはかなり難しい作業になるだろう。 小沢氏の唱える野党のゆるやかな選挙連合体「オリーブの木構想」とのかねあいで、小沢氏がどのように言ったかを知りたいところだが、会談の細部は明らかになっていない。 ともあれ、自民党から政権を二度も奪った小沢氏との接触は、ポスト安倍時代をにらみ、橋下氏が政界に再び躍り出る下準備の第一歩に見えなくもない。 かつて民主党政権の中枢を担った政治家たちについて、橋下氏が新著に以下のように綴り、期待を寄せるのも、これからの活動をスムーズに進めるための布石ではないだろうか。
それにしても橋下徹という人物は、評価するのが難しい。自分を批判する識者をツイッターでこきおろすトランプ的なやり方を、「正しい炎上」といってはばからない。モリ・カケ疑惑への安倍政権の対応を批判する半面、安倍首相のポピュリズム的な「政治マーケティング」とやらを絶賛し、大阪の知事や市長時代に国政側から援護射撃してもらったことへの恩義をいまでも大切にしている。 「野党内には待望論がくすぶる」と朝日は書くが、もし政界復帰ということになると、いわゆるリベラル派を中心にアレルギー反応も起こるにちがいない。 野党の連携に手詰まり感のあるなか、なにかと注目を浴びやすい橋下氏の動きが、膠着した局面を打開する導火線となるかどうか…。 image by: 大阪維新の会 − Home | Facebook 新恭(あらたきょう) この著者の記事一覧 記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。
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