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安田さん解放 人命の為に使う税金ほど有意義なものはない 二極化・格差社会の真相 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/241088 2018/11/07 日刊ゲンダイ 自国民の救出に全力を尽くすのが政府の仕事(会見する安田純平氏)/(C)日刊ゲンダイ 「解放に向けて尽力していただいた方々に、おわび申し上げますとともに、深く感謝申し上げます」 ジャーナリストの安田純平さん(44)が2日、記者会見した。堂々たる心情を聞いてなお小ざかしい自己責任論を振りかざし、誹謗中傷を浴びせ続けている人々に言おう。 いいかげんにしろ。少しは恥というものを知れ。 私は安田さんと格別に親しい仲でもない。10年も前に何かの集まりで同席し、多少の会話を交わしたことがあるだけだ。 とはいえ彼がシリアで拘束された時には当然、複雑な思いが錯綜した。本人も会見で「自業自得」だったと述べていたが、ああなる危険も覚悟の上で、彼は戦場に足を踏み入れたのである。 だが“自己責任”の報いは、3年4カ月にも及んだ地獄の日々で、すでに十分すぎるほど受けている。それでも許されないと叫ぶ者は、「殺されればよかったのに」と残念がっているのと同じだ。 こんなものは、もちろん右だの左だのの問題とは本質的に異なる。単なる人でなしの所業である。 ジャーナリストは戦場に出かければよいというものではない。イラク戦争に特派されて米軍に取り込まれ、民家まで砲撃した連中を「私たちの部隊」と称えてみせるに至った大手紙やテレビの記者も珍しくなかった。 安田さんは、そうなる可能性を排除した方法で、戦場に渡った。成果も必ず公にされよう。 つまり本物だ。だから、たとえば4日付の毎日新聞に、英紙「タイムズ」や仏紙「ルモンド」、韓国紙「朝鮮日報」の東京支局長らが、彼に惜しみない敬意を払いつつ、「報道の使命、理解して」と訴える談話を寄せてくれているのだ。 私はジャーナリストを特別扱いしろと言いたいのではない。拘束された人間が誰であろうと、自国民の救出に全力を尽くすのが政府の仕事だ。税金? 日本政府が今回果たした役割はまだ不明だが、人命のため一定の金額を負担したとすれば、これほど有意義な税金の使い道がまたとあろうか。 安田叩きをもくろんだらしい「週刊文春」と「週刊新潮」(11月8日号)が、タイトルとは裏腹の温かい記事を載せていた。当たり前だ。取材して、にもかかわらず“自己責任”をわめき立てていられる記者や編集者なら、もはや人間失格である。 ここまで書いてもわかってもらえない人は仕方がない。一生、必死に生きる他人をあざ笑い続けていくがいい。いざ自分の命が絶たれる時に、己がどういう人間だったかを理解できるだろう。 斎藤貴男 ジャーナリスト 1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。
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