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庶民の懐直撃の10連休と消費増税 日本経済にトドメの恐れ https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/241079 2018/11/06 日刊ゲンダイ 浅はかな人気取り(C)日刊ゲンダイ 来年のゴールデンウイークは、予定通り“10連休”になりそうだ。安倍政権は、皇太子が新天皇に即位する来年5月1日を祝日とする法案をこの国会に提出する方針を固めた。 さっそく、大手メディアは「海外旅行の予約 前年の5倍」「経済効果9265億円」などと大ハシャギしている。もちろん、日本のサラリーマンは働き過ぎだから休日が増えることは結構なことだ。しかし、10連休を手放しで喜んでいいのかどうか。 安倍首相のことだ。どうせ狙いは、人気取りと、改元ムードを盛り上げることで世の中が変わったという空気を醸成し、ついでに改憲ムードも高めることなのだろうが、生活がカツカツの庶民にしたら「海外でバカンスとは一体どこの国の話だ」という気分に違いない。 朝日新聞の声欄に、57歳の契約社員の投書が載っていた。 「私は、日給制の契約社員です。来年4、5月の10連休は地獄です。手取り額が10万円くらい減りそうです。安倍晋三総理、いい加減にしてください。何の不自由もなく生きてきた方には分からないでしょうが、日給制の者にとっては死活問題です」 実際、10連休で月収が3分の2になったら、海外旅行どころか、生活が困窮するのは間違いないだろう。すでに労働者の4割は非正規である。大手メディアは、景気のいい話をふりまいているが、いまから10連休の恐怖に身構えている国民は、相当数いるのではないか。 ■足元の日本経済は急速に悪化している そもそも、いま日本は10連休などと浮かれている場合じゃないはずだ。足元の景気が一気に悪化しているからである。 日経新聞によると、企業業績に急ブレーキがかかっているという。決算発表を終えた3月期企業641社の4〜9月期の純利益は、わずかに5%と、23%だった前年同期を大きく下回っている。さすがに日経新聞も1面トップで「企業業績に減速感」と報じている。 さらに、9月の「新規求人数」は、主要産業すべてで前年同月を下回ってしまった。主要産業すべてで下回るのは、2009年11月以来のことだ。 「7〜9月のGDPは、マイナス成長に落ち込む恐れがあります。すでに発表されている7〜9月の鉱工業生産がマイナス1.6%だったからです。企業の生産活動は目に見えて低下している。最大の要因は、外需の縮小です。トランプ大統領が“保護主義”に走ったために、世界の貿易がシュリンク(縮小)してしまった。日本企業は、外需に頼って業績を伸ばしてきただけに、輸出がストップしたら業績は急降下してしまいます」(経済評論家・斎藤満氏) しかも、来年以降、日本経済はさらに悪化する恐れが強い。年明けから「日米交渉」が本格的にはじまるからだ。アメリカが「貿易黒字を減らせ」と強硬に要求してくるのは間違いない。アメリカのターゲットは、もちろん自動車だろう。稼ぎ頭である自動車の輸出がストップしたら、打撃は計り知れない。 そのうえ、ムニューシン財務長官は「為替条項が必要になる」と明言している。有無を言わさず「円高」にするつもりだ。「円安」は5年つづいたアベノミクスの生命線である。「円安」にすることで輸出を拡大してきた。「円高基調」となったら、アベノミクスは逆回転しはじめるだろう。 大手メディアは、10連休に浮かれているが、日本のことを経済大国だと勘違いしているのではないか。 庶民は海外旅行などと騒いでいられない(C)共同通信社
日本経済の崩壊は、もう目の前に迫っていると覚悟した方がいい。来年、国民生活は深刻な危機を迎えておかしくない。 なのに、安倍首相は来年10月、消費税増税を実施するつもりなのだから、どうかしている。景気が悪化している時に増税するとは、狂気の沙汰だ。 消費税率を8%から10%にアップしたら、景気が悪化するのは明らかである。4年前、消費税率を5%から8%にアップした時も、消費が冷え込み、不況に突入してしまった。GDPは4〜6月、7〜9月と2期連続のマイナス成長だった。 安倍首相が消費税増税を2回延期したのも、景気が悪化すると分かっているからではないのか。 「本来、増税は好景気の時に行うものです。来年10月の消費税増税は、最悪のタイミングです。ただでさえ、その頃は、オリンピック特需がピークアウトし、日本経済は下降局面に入ると予測されているからです。加えて、年末商戦の直前でしょう。そのうえ来年は、いよいよトランプ大統領が、日本との貿易交渉に乗り出してくる。すでに株式市場では、来年を見越して自動車株は買われなくなっています」(斎藤満氏=前出) しかも、アベノミクスの5年間で日本企業は、すっかり国際競争力を失っている。世界各国のコンピューターなどの輸出額は、10年間で3割増えているのに、日本は上位10カ国のなかで唯一額を減らしている。2017年の輸出額は1404億ドルと10年前に比べ14%も激減している。順位も3位から6位にまで落ちた。アベノミクスの「成長戦略」が、すべて失敗に終わったからだ。 訪日外国人も減少し、インバウンドにも陰りが見えはじめている。 よくも安倍首相は、この状況で消費税増税を実施できるものだ。来年10月の増税は、暗転する日本経済にトドメを刺すことになるはずだ。 ■法人税減税の穴埋めに使われる消費税増税 いったい安倍首相は、誰のために消費税増税をやるつもりなのか。 「全世代型社会保障」などとテキトーなことを口にし、社会保障費の財源を確保するためだと訴えているが、大嘘もいいところだ。“大企業”と“富裕層”のためなのは明らかだ。税収の中身を見れば、一目瞭然である。 1989年度と2016年度の税収規模は、ほぼ同じだ。 1989年度54兆9000億円、2016年度55兆5000億円。ただ、内訳は大きく変わっている。 所得税は21兆4000億円↓17兆6000億円。法人税は19兆円↓10兆3000億円。消費税は3兆3000億円↓17兆2000億円。 要するに、法人税と富裕層の所得税を大幅減税し、その穴埋めとして逆進性の強い消費税を増税したということだ。 筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)が言う。 「安倍首相の発想は、一貫しています。とにかく大企業を儲けさせて株価を上げればいいという発想です。働き方改革も、大企業が労働者を安く酷使できるようにするためです。外国人労働者を日本に入れることも同じ発想でしょう。消費税増税は、低所得者ほど負担が重くなる逆進性の強い制度です。消費税増税が実施されると、1世帯あたり年間5万円前後の負担増になると試算されています。いまでもギリギリの生活を強いられている国民が多いのに、負担増に耐えられるのか。財源が必要なら、消費税より法人税でしょう。恐らく、安倍首相の頭の中に庶民はいない。ゴールデンウイークを10連休にしたら、非正規労働者の生活がどうなるかも、考えていないのだと思います」 危機が迫っているのに「10連休だ」と浮かれ、消費税増税も実施するとは、恐るべき能天気というしかない。
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