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複数税率+プレミアム商品券等=愚策博覧会
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2018年11月 1日 植草一秀の『知られざる真実』
消費税増税について、増税を強行しようとする勢力がメディアを使って既成事実化しようと試みている。 消費税増税の際に「プレミアム商品券」を販売するとか、2%の還元を国が負担するとかしないとか、さまざまな話が浮上している。 さらに事態を複雑化させるのが「複数税率」の話だ。 複数税率の設定は混乱を招く元凶になる。 事業者がコストをかけて複数税率への対応を進めて、実際には消費税増税が延期されれば、その準備費用をどうするのかという問題も生じる。 複数税率を強硬に主張しているのは公明党である。 公明党が自分たちの手柄にするために、与党内で複数税率が強要されているようにも見える。 すべての議論が本末転倒である。 消費税増税の税収増を何に充てるかの議論もされてきたが、これもナンセンスである。 日本の財政は総計主義によって運営されており、所得税も法人税も消費税も「一般財源」であって、特定の支出に充てる「目的税」ではない。 「消費税の税収を特定の支出に充てる」という説明は、総計予算主義に反するものなのだ。 重要なことは、消費税増税の正当性の欠如を認識することだ。 日本の過去30年間の税収構造推移は消費税増税に正当性がないことをはっきり示している。 この点を正確に認識することが最優先されるべきだ。 安倍首相は消費税増税を実施する考えを有していない。 同時に安倍首相は、消費税増税延期を2019年夏の参院選に活用することを目論んでいる。 2014年と2016年に、消費税増税延期で選挙を有利に展開した。 三匹目のドジョウを狙っている。 来年の通常国会終了時に記者会見して、消費税増税の延期を発表するだろう。 これで選挙を有利に展開しようと考えているのだろう。 しかし、複数税率の話を放置しておいて、来年夏の段階で消費税増税延期を示すことに対しては批判が沸騰することになる。 複数税率を導入することが検討されているが、この発想自体が誤りだ。 そもそも、生活必需品であるなら消費税率ゼロとするべきである。 8%と10%の二本立てという発想自体もあまりにも貧困だ。 そして、品目の線引きが大きな混乱を招く。 消費税を導入する際に、「簡素」な税制が強調されていたことを完全に無視する議論でもある。 生活必需品を無税、あるいは軽減税率とするのは、所得の少ない層への配慮である。 このことを考えるなら、所得税に給付付き税額控除制度を導入すればよいのだ。 「簡素な税制」を検討するのに、「複数税率」を導入するのは真逆の対応になる。 1989年度と2016年度の税収構造変化の実態は以下に示す通り。 税収規模は1989年度が54.9兆円、2016年度が55.5兆円だった。 このなかで主要税目の税収が激変した。 所得税 21.4兆円 → 17.6兆円 法人税 19.0兆円 → 10.3兆円 消費税 3.3兆円 → 17.2兆円 すなわち、 法人税=9兆円減少、 所得税=4兆円減少、 消費税=14兆円増加 これが、日本の税収構造変化の実態である。 つまり、消費税増税は、ただひとつ、所得税と法人税減税のためだけに実施されてきたのである。 この消費税をさらに増税する正当な根拠は存在しない。 消費税増税は、社会保障拡充のためでも、財政再建のためでもなかった。 一般歳出からの社会保障支出が33兆円程度存在する。 消費税収がこの水準に達するまでは、「消費税収は全額社会保障支出に充てる」という「言い回し」が可能になるが、この言葉には何の意味もない。 消費税増税は今回もまた延期されるだろうが、日本の主権者は増税延期ではなく、減税・廃止を実現させるべきである。 |
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