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日米貿易交渉、北方領土、消費増税で追い込まれる安倍政権 日本外交と政治の正体 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/240373 2018/10/27 日刊ゲンダイ 安倍首相(C)日刊ゲンダイ 9月末の自民党総裁選で、安倍首相が国会議員票で圧倒し、石破元幹事長に勝って3選を果たした。任期は2021年9月までの3年間である。 「国家の破滅に近づいている」。福田康夫元首相は安倍政権を酷評していたが、日本がどこまで破滅に近づいていくかと考えるとぞっとする。 ただ、最近の安倍政権の周囲をみると、明らかに「黄信号」がともり始めていると言っていい。 激しい世論の批判を受けながらも、安倍政権が安穏としていられたのは公明党の協力があったからだ。しかし、公明党は沖縄県知事選で大きな痛手を負った。同党は自民と一緒に佐喜真淳前宜野湾市長を推薦。選挙支援のために全国各地から5000人を沖縄に送り込んだといわれているが、出口調査では自公支持層の2〜3割が野党候補の玉城デニー現知事に投票したとみられている。 公明党の支援者と別途、玉城氏を支援する創価学会員が大阪などから乗り込んでいた。彼らは今回の知事選挙で、公明党に反旗を翻すことの成功体験をしたので、これが今後、憲法論議などで影響するだろう。 これは改憲に前のめりになっている安倍政権にとっては衝撃だろう。公明党の協力がなければ改憲どころか、国会発議さえできないからだ。 安倍政権は別の火種もくすぶる。まずは来年1月から始まる日米貿易交渉だ。トランプ政権は「自動車や農産品、サービスといった重要分野で関税や非関税障壁の困難に直面している」と説明し、パーデュー農務長官は「TPPと同等以上の水準を期待している」と強気の姿勢である。押し切られれば、日本の農業関係者から抗議の声が上がるのは間違いない。 日本は自動車輸出でも厳しい制限がつけられる可能性があるが、忘れてならないのは「日本叩き」はトランプの大統領選挙の重要な公約だったことだ。日本メディアは安倍政権のもとで日米関係が良好に推移してきたと喧伝してきたが、幻想に過ぎない。 幻想といえば、北方領土問題も同じだ。「日ロ首脳会談は22回に及ぶ」とか「安倍首相とプーチン大統領は互いをファーストネームで呼び合う」といった報道ばかり目立ち、領土問題の解決は時間の問題――のような雰囲気をつくり上げてきたが、プーチン大統領は「我々はもう70年もそうやって足踏みし、先が見通せずにいる」と不満を漏らしている。行き詰まりは明々白々だ。 そして消費増税だ。安倍首相は来年10月の消費税率10%への引き上げを早々と明言したが、消費増税に喜ぶ国民はいない。 来年は参院選がある。安倍首相は「選挙の顔」になれず、野党共闘が実現すれば自民党の敗北は間違いない。 孫崎享 外交評論家 1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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