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「豊洲新市場 残された課題は」(時論公論)/合瀬宏毅・nhk
2018年10月11日 (木)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/307083.html
合瀬 宏毅 解説委員
2年間にわたって移転を延期していた、豊洲の中央卸売市場が今日(11日)開場しました。首都圏だけでなく全国の農水産物の流通を支える、近代的な新市場です。
しかし汚染物質や巨額の建設費を、どう返済するかなど、新市場を取り巻く環境は厳しく、直面する課題も山積しています。
新たにスタートした、豊洲新市場の今後と課題を考えたいと思います。
今日、オープンした豊洲市場は、広さおよそ40ヘクタール。築地市場の1.7倍という広さに、5700億円をかけて、水産物や野菜などのせりを行う施設や、加工などを、一貫して低温で処理できる、最新式の施設が整備されました。
今日は朝から、マグロなどの競りが行われ、たくさんの、市場関係者で賑わっていました。
豊洲市場が目指すのは、国際的な衛生基準で管理できる、水産物物流のハブ拠点です。
では、実際に築地市場と比べ何が変わるのでしょうか。
まずは効率的な物流の実現です。
これまでの築地市場は、80年以上前に鉄道輸送を想定して作られました。
トラック輸送が主流となった現在では、産地から水産物を送ろうとしても、駐車場などが狭すぎ対応できませんでした。
新市場では、荷捌き場を含め十分な輸送体制を整えました。
また、建物全体を閉鎖空間としたことで、高度な品質、衛生管理が可能となりました。
荷受けから競り、出荷までを、外気に触れず低温で管理することが出来、鳥や害虫などの侵入も防ぐことができます。
さらに今回、新たに加工パッケージ棟を設けました。水産物は、店頭に並べるために切り身に加工したり、小分けにパック詰めする必要があります。
これまで、スーパーや外食店がやっていたこうした作業を、市場が請け負うことで、使い勝手の良い市場を目指しています。
東京都では、こうしたこととともに、輸出用の衛生基準にも対応できたことで、取り扱う水産物、築地のおよそ1.4倍に増えるとしています。
築地市場の移転問題を巡っては、開設者である東京都も含め、現地での建て替えか、移転かで、長い間迷走してきました。
それだけに、ようやく開場にこぎ着けた市場関係者の安堵と、新たな市場にかける決意の表情を、あちこちで見かけることができました。
ただ、豊洲新市場を巡る環境、そう楽観的ではありません。
まずは豊洲市場に対する信頼回復です。
豊洲市場は2年前、小池東京都知事が突然、築地市場からの移転を延期。
その後、地下空間に盛り土が無かったり、地下水から基準を大きく超えるベンゼンなど有害物質が検出されました。
東京都の専門家会議は去年3月、豊洲市場は、「科学的・法的に安全」としながらも、安全性を高めるため、地下空間にコンクリートを敷いて、有害物質の侵入を防止したり、地下水の管理システムの強化などの追加対策を決め、工事を進めていました。
そして、今年7月、専門家会議が改めて、汚染物質が地下でも地上でも国の基準を下回っていることや、地下水位も全体的に低下していることを確認。
小池知事はこれを受けて、「豊洲市場は安全で安心して利用できる」と、安全宣言をした経緯があります。
しかし相次いで見つかった汚染と、都のこれまでの対応に、信頼が回復したとは言いがたく、今後も徹底した、地下水検査と情報公開で、都民や流通関係者の不安を、どこまで払拭できるか問われてくることになります。
また、減り続ける取扱量への対応も課題です。
東京都は豊洲市場の取り扱い量が、今後増えるとしています。しかし、これまで水産物の取扱量は、減り続けてきました。これは築地市場の取扱量ですが、平成2年には85万トンあった水産物の取扱量は、おととしには、43万トンと半分近くに下落しました。
仲卸など市場関係者の経営は悪化し、数も急速に減っています。
背景には水産物の消費が減ったことに加え、産地とスーパーなどの場外取引や、インターネット取引など、市場外流通に対抗できなかったことがあります。
東京都が描いたように、取り扱い量を増やさないと、市場の賑わいは薄れ、築地ブランドを受け継ぐことも出来ません。
そして何より、この市場を東京都が、どう支えていくのかです。
豊洲市場はその巨大さ故に、維持費も巨額で、業者からの利用料などで賄っても年間92億円の赤字が発生します。
そうした赤字と、巨額の建設費は、築地市場をおよそ4400億円で、売却することで、穴埋めすることになっていました。
しかし小池知事は、去年6月、「築地は守る 豊洲を生かす」として、築地は売却せず、5年後をめどに、食のテーマパークとして再開発する方針を示しました。
そして、再開発した築地からの借地料、年間160億円を投入して累積赤字を解消する試算を示しています。
とは言え、1年経つ今も築地市場の跡地をどう利用するのか、具体策は決まっていません。
それにそもそも160億円もの借地料を、毎年稼ぐことができるのか、専門家の中には疑問視する声もあります。
そうなれば豊洲市場の赤字は、都民の税金で埋めざるを得ません。
言うまでもなく、豊洲市場は、国内外から農林水産物や産地の情報が集まるほか、多数の買い手が競りに参加することで、価格を決める。そしてそこで決まった価格は全国の取引指標ともなる、重要な役割があります。
しかも外国人などが多く集まる、新たな日本食文化の発信地との期待もあります。
しかし赤字が年々積み上がっていけば、本当に自治体が維持する必要があるのか、不要論が吹き出しかねません。
市場を維持する目途が立たなければ、そこで働く人たちも安心して仕事を続けることは出来ないでしょう。
小池都知事としては、まずは築地跡地の青写真を早急に示し、豊洲市場の持続的な運営のあり方を示す必要があります。
そして、市場関係者としては、産地と消費者を結びつける市場としての魅力を発信し続け、取引量を増やしていくことが重要です。
折しも、そうしたことを可能にする、規制緩和が進んでいます。
政府は先の国会で、卸売市場法の改正案を提出し可決成立しました。
大きな柱は、それまで市場関係者を縛ってきた農水産物を、産地から卸、仲卸、小売りの順で流通させる市場内の取引ルールを開設者の判断でなくし、自由な市場作りが出来ると、したことです。
これが可能になれば、例えば、卸が直接、小売りと取引したり、仲卸が産地から直接水産物を仕入れたりして、産地とスーパーなどの場外取引に対抗し、市場の賑わいを取り戻すことが出来ます。
これまでの築地には、目利きが水産物を選ぶことで、一定の品質を保証する、築地ブランドがありました。しかしそこにあぐらをかいて、取り扱い量減少に歯止めを、かけられていません。
市場関係者としては、今後、豊洲市場の持つ、高い衛生管理と効率的な物流拠点を生かしながら、規制緩和をチャンスとして、新たな魅力作りを模索することになります。
様々な課題を抱える中で、豊洲市場がこれまで以上の賑わいを取り戻すことができるのか。東京都と市場関係者の力が試されていると思います。
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