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自民党総裁選、満面の笑みの石破氏、顔面蒼白の甘利氏、無表情の進次郎氏 https://hbol.jp/175323 2018.09.21 及川健二 ハーバー・ビジネス・オンライン 総裁選・当選を受けて、全議員を前に挨拶する安倍晋三・自民党総裁 茶番劇に終わるはずが大どんでん返しとでもいうべきことか。安倍晋三・総裁が9月20日に三選を果たした自民党・総裁選のことである。 安倍晋三・総裁が任期2期6年という自民党総裁の任期を3期に延長させ、3選を目指したこの闘いは、現職に石破茂・元幹事長がひとり挑むという構図になり、投開票日のはるか以前から結果は決まっていた。 通常国会が閉会して総裁選モードが始まると、安倍氏を石破派以外の派閥が続々と支持を表明。竹下派だけが参院議員は石破支持にまわり、派としては自主投票となったものの、竹下派衆院議員の大多数は安倍再選支持に回った。安倍氏が総裁選出馬宣言をしてから行われた総決起集会には85%の国会議員(代理出席を含む)が参加した。 「石破氏が次の総裁選に出られないくらいに徹底的に惨敗させる」 安倍氏がそのような思いを秘めていることを何人もの側近が口にした。再選でなく、石破氏の政治生命を絶たせるほどの圧倒的勝利が安倍陣営の目標だった。 そして20日、国会議員による一時間近くの投票が済んで、20分ほどの集計が終わり、総裁選の選挙管理委員会結果が結果を発表した。すると記者から、かすかなどよめきが起きた。 結果について記者の問いかけに答えず、無言を貫いた小泉進次郎氏 議員票は安倍氏329票、石破氏73票(無効3票)と大差がついたが、党員・党友票の得票数に応じてドント方式で比例配分される地方票は安倍氏224票、石破氏181票と僅差。 パーセンテージにすると党員・党友票は55%:45%だ。合計で安倍氏553票、石破氏254票と首相のダブルスコアを超える圧勝だったが、その場にいた議員・記者は誰もが思ったであろう。 「石破氏は想像以上に大善戦した」と。 想定外と思った人もいよう。 私の取材席の隣の隣には、偶然にも小泉進次郎・衆院議員が座っていた。 結果が出て思わず、私は 「進次郎さん、石破さんが大健闘ですがどう思いますか?」 と声をかけた。彼は一瞥だにせず表情を変えず黙ったままだった。投票日当日になって石破支持を表明して1票を投じた進次郎氏は、結果を見て何を思っていたのだろうか。 顔面蒼白だった安倍選対の責任者・甘利氏、満面の笑みの石破氏 投開票結果を受けて、手を取り合う石破茂・元防衛相と安倍晋三・総裁 総裁選は石破茂・元防衛相が8月10日に出馬会見を開いて始まった。私はその日以来、できうる限り、石破氏に番記者のごとく張り付くようになった。自民党では異例なことでフリー記者にも会見は開放し、告示日まで一時間を超える会見をテーマごとに6回もやった。 石破茂氏は総裁選特設サイトで「47都道府県のみなさまへ」という動画も公開し、話題になった。石破氏が47都道府県についてそれぞれ5〜8分、原稿も読まず、自身の体験したエピソードや思い入りを織り交ぜ語るもので、計47本の動画が公開された。選対スタッフは準備も入れて製作に30時間を要したと語った。ラサール石井さんが絶賛するなど、各方面で話題になった。 石破派議員は「こちらには組織も議員もいない。地道に有権者に訴えていくしかない」と戦略を語ったものだった。 石破陣営は主に党員・党友票を狙い、「20%台だったら次はない。30%だったら、まあまあ。40%を超えたら実質勝利だ」(石破派幹部)というように、40%の得票を目指していたのだ。はじめは手応えが感じられなかったが、投票日が近づくにつれ、支持率が伸びていき、演説会場にも聴衆が増えていき、陣営は手応えを感じているようだった。 安倍選対として実質的な最高責任者だった甘利明・元経済再生担当相 そして、蓋を開けたら45%の得票という、想像以上の結果。さらに、19日までに石破支持を表明した議員は50名弱。議員票73票という結果は、20名近く“隠れ石破系”がいることを示した。 広報を担当した平将明・衆院議員は会場を出るときに満面の笑みを浮かべていた。それは石破茂氏も同様だった。記者のぶら下がり取材を受けた石破氏は終始、笑顔を浮かべ、結果について 「未来永劫、続く政権はない。今回のありがたい結果に満足することなく、改めるべき点は改め、国民の思いに反することがないようさらに努めていきたい」 と語った。総裁選後に集まった石破系グループの会合は祝勝ムードが漂っていたという。 一方、3選を果たした安倍晋三・総裁も支持議員を集めて会合を持ったが、司令塔だった甘利明・選対事務総長は顔面蒼白。石破氏が安倍氏より票を上回った県選出の議員は苦虫を噛み潰したような表情だったという。安倍氏は笑みを浮かべていたが、陣営は沈痛な面持ちだった。 全国紙記者は語る。 「石破氏の政治生命を絶つどころか、自民党員・党友からすら、安倍さんへの不信が強く、さして支持されていないことが明らかになってしまった。全面的に信任を得られたとはとうてい言い難く、安倍一強の脆さが露呈してしまった。陣営が諸手を挙げて喜べないのは当然ですよ。10月1日にも内閣改造・党役員人事刷新が行われる予定ですが、安倍さんの選対内では猟官合戦が激しかったですから、求心力を取り戻せるか。人事によって躓いてしまう可能性もあります」 「野党は攻勢のチャンス」と山本太郎 総裁選の結果を受けて、新宿駅西口地下で演説する山本太郎「自由党」代表。「野党は攻勢のチャンス」と訴える 安倍総裁のなんともビミョーな3選を受けて、野党は攻勢をかけ始めた。まず、参議院で安倍首相に暴力団との関与について質した山本太郎「自由党」代表が18時40分から、緊急街頭演説を行った。 その山本氏に総裁選の結果について見解を聞いた。 「国民のみならず、自民党員からすら、安倍総理が支持されていないことがわかった。野党の攻勢によってレームダック化していくこともありうる。今回、出馬した安倍さんも石破さんも緊縮財政・増税路線です。これは野党にとってチャンスです。 野党が金融緩和で刷ったお金で財政出動し、貧困層や子育て世代、高齢者など、アベノミクスの恩恵にあずかっていない層を財政的に支援していく経済政策の対案を出せば、国民から支持される。 デフレ脱却給付金として貧しい層に給付するのも一つの案です。そして、消費税増税凍結でなく、むしろ、5%に戻せと主張すれば、明確な対立軸になる。どちらが庶民の側を向いているか、明らかになるでしょう」 内閣改造が終われば臨時国会が開かれ、来年1月からは通常国会で、激しい与野党の論戦が期待される。 今回の総裁選によって、はたして安倍政権の落日になるのか、陽はまた昇るのか。要注目だ。 <文・写真/及川健二(日仏共同テレビ局France10日本支局長)>
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