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「政界再編の核は自民党から出る」という田中秀征の真贋
http://kenpo9.com/archives/4199
2018-09-18 天木直人のブログ
まず、次の記事を黙ってお読みいただきたい。
「・・・対抗勢力たる野党の責任はもちろん重い。何よりも、民主党が自分たちの政権の失敗を総括したかどうかだ。民主党という割れた甕がある。その破片を拾って復元しようという話しだが、きちんとした総括がない限り、決して蘇らない。(きちんとした総括とは)当時、指導的な立場にあった人たちが責任を取る事だ。そもそも責任を取って議員を辞めるべき人たちがまた指導者になっている。厳しい言い方だが、それはむしろ邪魔だ。次の者が生まれない。だから政界再編の核は、自民党の中から出て来るのではないか・・・」
これは、石橋湛山に源流を発した自民党の保守リベラル派に身を置く元衆院議員の田中秀征氏が、発売中のサンデー毎日(9月30日号)誌上で倉重篤郎毎日新聞専門編集委員に語った言葉である。
民主党について語る部分は私が書いて来た民主党批判とまったく同じだ。
しかし、政界再編が自民党を核として起きるという点については、そうなれば面白いと思うが、私は懐疑的だ。
権力を握った自民党が二つに割れる事はない。
自民党の中の派閥交代による疑似政権交代が復活するというのがせいぜいだ。
安倍一強はやがて終わるだろうが自民党一強は続く。
野党の崩壊によって、これまで以上に半永久的に続く。
そんな政治状況の中で、野党の存在意義をどこに見出せばいいのか、そういう時代が来るという事である(了)
「自民党総裁選」直前特集! 安倍晋三首相と石破茂元幹事長 どちらが真の保守本流か!
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/society/2018/09/30/post-2102.html
サンデー毎日 2018年9月30日号
倉重篤郎のサンデー時評
「自民党総裁選」直前特集! 元経済企画庁長官・田中秀征の"憂国"提言
◇安倍晋三首相と石破茂元幹事長 どちらが真の保守本流か!
戦後リベラルの理論的支柱ともいえる知性派、田中秀征・元経済企画庁長官が、総裁選に直言。安倍独裁によって抑え込まれたかつての良質な政治の伝統を掘り起こし、いまそれを担い得る石破茂氏に、保守本流の迫力を示せと迫った。倉重篤郎が訊く。(一部敬称略)
自民党総裁選の投開票日(9月20日)まであとわずか。世に言われるように、安倍晋三氏が圧勝するのか。それとも石破茂氏が善戦するのか。はたまたさらなるサプライズがあるのか。日本にとっては、決定的に重要な日となるであろう。この日を迎える前に、元経企庁長官の田中秀征氏(77)に話を聞く。
氏によると、日本の戦後保守には二つの系統がある。その一つは、石橋湛山に源流を発し吉田茂、田中角栄、大平正芳、宮沢喜一らに連なる保守本流であり、もう一つは、岸信介を軸とし福田赳夫、安倍晋三につながる自民党本流である。
その違いは、まずは歴史認識に表れる。保守本流は石橋湛山に代表されるように、あの戦争を誤った膨張主義的国策によるものと明確に否定、それに代わる選択肢として小日本主義的生き方、つまり、軽軍備・通商重視の立場を取るが、自民党本流は、始祖である岸信介の満州官僚、戦時内閣の商工相であった経歴から戦中の国策の全面否定には至らず、なお大アジア的、膨張主義的志向を残している。
外交・安保についても両者は異なる。憲法9条については、前者が護憲・軍縮的であるのに比し、後者は改憲・軍拡的であり、対米関係は、同じ同盟基軸であっても、前者には一定の距離感があるのに対し、後者には日米一体論的な従米主義の癖がある。経済政策も前者ができる限り自由経済をベースに考えようとするのに対し、後者には統制色、計画色が残る。
戦後の日本政治はこの2大潮流が、勢力的に拮抗(きっこう)しながら、政権を交互に担当し、バランスを取りながら、かじ取りをしてきた。そこにはそれぞれの路線の行き過ぎ、行き詰まりをけん制、是正するシステムが内在化されていた。ところが、2000年以降、保守本流は有力な政治家の相次ぐ死、「加藤(紘一氏)の乱」の失敗で指導者を失い、急速に勢力を弱体化させていく。
その結果、21世紀の日本政治は森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三といった自民党本流系統の政権が十数年も続き、今回の総裁選を迎えた。田中氏からすると、この総裁選こそ自民党本流に対し保守本流が総力を結集して挑み、保守の中でのバランスを回復すべき場である。また、その絶好のチャンスでもあるはずだ。
にもかかわらず、今回もまた安倍氏ら自民党主流派が圧倒的優位と言われている。いったい、保守本流はどうなってしまうのか。以下は、元新党さきがけ代表代行として、自民一党支配を終焉(しゅうえん)させた冷戦後の政界再編で主導的役割を果たし、宮沢喜一、細川護熙、小泉純一郎氏ら歴代首相の顧問格として戦後保守政治のあり方を考え抜いてきた人物による、現政局への辛口の直言である。
総裁選もすでに終盤戦。もう逆転はない?
「万々が一の逆転があるとすれば、小泉方式しかない、と思っている。まずは、世論を味方につけ、それを背景に自民党員を味方にして、さらにそれを背景にして国会議員を味方にする。通常とは逆のやり方だ」
2001年4月の「小泉純一郎vs.橋本龍太郎」の総裁選だ。
「小泉氏にその直後、勝因を聞いたことがある。党員にはほとんど回ってないし、国会議員対策も議員会館のあいさつ回りさえしなかった、という。やったのはひたすら街頭演説で国民世論に訴えること。自民党をぶっ壊せと。これが効いた。あるテレビ番組で、「小泉vs.橋本」の支持率の調査結果を連日発表、小泉氏がグングンと伸ばし、ついに橋本氏が一ケタにまで落ちた。これでは3カ月後の参院選で自民党が負ける。その危機感から本来、橋本氏が強かった自民党の支援組織、団体も小泉氏で動かざるを得なくなった」
世論を味方につけ、それをテコに党員票を動かした。
「国会議員票も然(しか)りだ。"この前の総選挙ではアンタに入れたが、今回総裁選で小泉氏に入れないと次はアンタにも入れないよ"という電話が地元事務所に無数にかかって来て、総裁選の風向きを変えてしまう。週末に地元に戻るたびにそういう声を背負わされ、小泉氏に入れざるを得なくなった」
◇保守本流はパワーを結集できるか
石破陣営もそれを期待しているが、さすがに小泉氏にはなり切れない。
「確かに、離党経験があり自民党をぶっ壊す、とは言えない。しゃべり方も違う。つまり、可視的なもので小泉方式は難しい。石破氏は政策で勝負するしかない」
保守本流を奮い立たせる政策は?
「例えば、選挙が重なっている沖縄県知事選(9月30日投開票)だ。思い切ってオール沖縄、玉城デニー側に立てば二つの選挙戦が連動し、思いもかけぬプラス効果が出てくる。それが無理でも、沖縄の声に耳を傾け、寄り添う姿勢を明確にすることだ。そうすれば、橋本龍太郎や小渕恵三以降、途絶えていた保守本流の沖縄重視の姿勢が蘇(よみがえ)る」
「それにしても自民党本流はなぜ沖縄に冷たいのか。知事が上京しても会わない。橋本氏や小渕氏の時のように腹を割った話もない。日米一体化路線の縛りが強すぎるのだろうが、これでは沖縄問題はいつまでたっても解決しない。保守本流路線への転換が必要だ」
「沖縄問題」以外では?
「先の戦争は間違いだった、と歴史認識を明確にすることも論議を呼ぶし、安倍改憲に対しては真正面から反対することも大事だ。集団的自衛権の憲法解釈変更についても間違いだったと認めてほしい。要は、保守本流の立場から思い切った政策論争に踏み切ることだ。森友・加計(かけ)問題も遠慮なくやってほしい」
「森友・加計問題に関連すれば、小泉進次郎氏ら若手グループの提案が光っている。国政調査権を背景に国会の議院運営委員会の元に独立した調査・提言委員会を作る、という考えだ。原発事故の際の国会事故調(黒川清委員長)がそうだった。規制すべき役所が業界の虜(とりこ)になってしまった、と原因を衝(つ)き、結果的に人災的側面が強かった、と言い切った。役所や業界から独立した組織だからそこまでやれた。他の問題にも援用できる。与野党が一緒になって行政の無駄遣いをチェックする委員会を作ってもいい。石破氏もこの議運を活用する若手提言に乗り、進次郎氏と一緒にやればいい。これはウルトラCだ」
「要は、保守本流の流れに期待するパワーを結集することだ。そうなればまた情勢は変わる」
ただ、岸田文雄氏の不出馬、安倍氏への支持表明で、せっかくの保守本流パワーが割れてしまった。
「岸田氏は判断を間違えたのではないか。広島県福山市でときおり政治塾をやっているが、『広島県というのは池田勇人先生が宏池会を起(た)ち上げ、宮沢喜一先生が中興の祖と言われた。同じ広島県選出の岸田さんはいったい何をやっているんだ』と言ったら大きな拍手が出た。残念なことです」
保守本流勢力はなぜここまで細くなったのか。
「加藤の乱の失敗が大きかった。宏池会が加藤氏という総裁候補を失っただけでなく、四分五裂した。あれが2000年の12月だ。振り返ると、保守本流にとっては悪夢の年だった。小渕恵三(5月14日死去)、梶山静六(6月6日同)、竹下登(6月19日同)といった竹下派の有力者たちが次々に鬼籍に入り、最後は加藤の乱だ。宏池会が保守本流の理念派だとすれば、竹下派は保守本流の武闘派だ。本来は協力すべき両派が権力闘争でつぶし合い、保守本流という大きな塊が一気にしぼんでしまった」
その竹下派は、今回「安倍1強」政局に唯一逆らった。そのおかげで石破支持の参院と安倍支持の衆院側とに分断される傷も負った。
「竹下亘さんの判断には敬意を表する。保守本流のかぼそい炎を維持した」
この続きは2018年9月30日号本誌をご購入ください。
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