2018年9月4日(火) 沖縄知事選 玉城デニー氏に聞く 翁長氏の遺志継ぎ新基地阻止へ 豊かで誇りある「新時代沖縄」を 告示まで10日と迫った沖縄県知事選(13日告示、30日投票)。故・翁長雄志知事の遺志を引き継ぎ、「オール沖縄」の代表としてたたかう玉城(たまき)デニー予定候補に思いを聞きました。(沖縄知事選取材団) https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-09-04/2018090401_01_1.jpg
――立候補を決意するにいたった思いと、今回の県知事選の意義について。 玉城 翁長知事の急逝を受けて協議をする中、知事が私に期待を寄せていただいたことをうかがい、オール沖縄「調整会議」から全会一致の要請をいただきました。 8月11日の県民大会で、知事の次男・翁長雄治さんが、知事が繰り返し語った言葉を紹介しました。「県民が心を一つにすることを深く望み、県民が持つ力を誰よりも信じ、そして揺らぐことのない自らの決意がいつも県民とともにある」 最後の瞬間まで命がけで、「ウチナーンチュ、マケティーナイビランドー」(沖縄県民よ、負けてはならないぞ)という思いを発信し続けた知事の強さ、優しさ、沖縄への愛情が私の胸にも強く語りかけて、私の決意と県知事選への覚悟をもたらしてくれたと感じています。 今回の知事選では、翁長知事の遺志をつないで、知事が進めていた「21世紀沖縄ビジョン」と「アジア経済戦略構想」をさらに前進させつつ、私なりの考え方も入れて、県民のみなさんにしっかり示したい。 辺野古新基地建設の是非は絶対に避けて通ることができない争点です。私は辺野古埋め立て承認の撤回を強く支持し、新基地建設の阻止をやり抜いていくということを県民のみなさんにブレることなく訴えていきたい。 私にも2歳ともうすぐ1歳になる2人の孫がいますが、これから生まれてくる子どもたちや、明日を担う若いみなさんに平和で、本当に心から豊かだと言えるような誇りある沖縄=「新時代沖縄」を託せるように精いっぱいがんばっていきます。 ――どのような県政を目指しますか。 玉城 翁長知事は行政の長としてあらゆる手段を尽くして辺野古の新基地建設を止めるとおっしゃっていました。私も当然、1ミリもブレることなく、その立場を受け継いでいきます。 さらに、これからの沖縄の未来のために、21世紀沖縄ビジョンやアジア経済戦略構想などを前進させていきたいと思います。観光客がまもなく1000万人、国税は3000億円近くという規模まで成長してきて、失業率も大幅に改善されています。そうした経済の状況をもっと生活につなげていくことが私の目標です。「県民の生活が第一」―これは私の政治活動における最も大事な理念です。 優しさと支え合う心 県政に反映させたい https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-09-04/2018090401_01_1b.jpg (写真)事務所開きでガンバロウをする人たち。右から5人目は玉城デニー予定候補=8月31日、那覇市
玉城 「イデオロギーよりアイデンティティー」という言葉は、翁長知事から受け継いだ大事な理念です。子どもや女性、若い人たちにもっと力を注ぎ、広く海外にも羽ばたいていこうとする若い人たち、あるいは国内でその先端的なリーダーになろうとしている人たちの人材育成の拠点にしたい。 合わせて、この島の芸能・伝統・文化・自然をもっと世界に発信して、小さな島だけど、沖縄がまるで地球のおへそみたいな、根っこみたいな、すべての人々が沖縄に何か自分のルーツを感じるという、そういうものを発信していきたいなと思います。 沖縄は99%が中小零細企業です。地元の企業を大切に育成し、そこで働いているすべての人たちの雇用の安定を図り、自立と共生、それぞれが自立をしていくけども、みんなで支え合っていくという社会。優しさと支え合いを本当に実感できるような社会を構築していきたいと思います。 ――相手陣営の佐喜真淳氏と安倍政権にただしたいことは。 玉城 佐喜真さんは翁長知事とまったく違う考え方のはずなのに、翁長知事の遺志を引き継ぐかのようなこともおっしゃっている。その点は選挙戦で明らかにしていくべきだと思います。ぜひ公開討論会に出ていただき、あらゆる機会で県民のみなさんにお互いの考えをしっかりと示して信を問いたいですね。 仲井真前知事、そして安倍政権が支援をする佐喜真さんですから、安倍政権と佐喜真さんの姿を重ね合わせて、県民が判断することも必要になってくると思います。 安倍政権は選挙で示された民意を、地方自治の本旨を踏みにじり、基地と振興を絡ませて県民の中に対立と分断を持ち込んでいます。佐喜真さんは、その対立と分断を持ち込んでいる側の候補者であることは明らかです。 そして辺野古新基地建設の強行。これが本当に法治国家と言えるのでしょうか。県が公有水面埋立法に基づきさまざまな行政指導をしても沖縄防衛局は答えない。サンゴや海草の保全もしない。活断層や軟弱地盤の存在、高度制限違反などの新たな事実が出てきているのに、それを無視して工事を続けている。加えて、ふるさとの海を守ろうとしている人々を強制的に排除するやり方が法治国家と民主主義の姿なのかということを厳しく問いたい。 普天間飛行場(宜野湾市)の問題ですが、沖縄の空を飛びたい放題飛んでいるヘリの下で、子どもたちがおびえながら授業をし、校庭にシェルターをつくって子どもたちを避難させるという学校が全国のどこにありますか。政府はこの不条理をしっかり受け止めるべきです。私は、来年2月の期限までに普天間飛行場の運用を停止させ、閉鎖・返還することを日米両政府に求めていきます。 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-09-04/2018090401_01_1c.jpg (写真)沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前座り込み行動に参加し、激励をうける玉城デニー予定候補=1日
――勝利のために必要なことは。 玉城 まずは候補者本人が死に物狂いで政策を訴え、有権者と握手をする、その熱を徹底的に伝えていかなければなりません。ただ、私1人ではおのずと限界があります。保革を超えた「イデオロギーよりアイデンティティー」という選挙態勢で、さらにウイングを広げて、翁長知事の遺志を引き継いでほしいという県民の皆さんの思いを託していただけるように訴えていきたいと思います。 ――出馬表明のなかで、「10本の指」「人間は皮一枚」という幼少期の逸話が非常に印象的でした。 玉城 私には、実の母とは別に、1歳から10歳ごろまでの育ての親がいます。実の母親を「あんまー」と呼び、育ててくださった方を「おっかあ」と呼んでいます。 そのおっかあが、小さい僕がいじめられて泣いて帰ってきたときによく話してくれたのですが、10本の指はみんな違う。同じ長さでも同じ太さでもない。でも10本の指がそれぞれあるから、指として手としてちゃんと動いているでしょうと。要するに、社会にはいろんな人たちがいるけれども、みんな大切な仲間なんだよという意味ですね。 それから、私は父がアメリカ人、母が沖縄の人で、小さいころは赤に近いぐらいの金髪で容姿が目立つものですから、いじめの対象にもなりました。おっかあが僕に言ったのは、「見た目は皮一枚」なんだと。あなたの顔も皮を取ればみんな同じ人間。青い血や黒い血が流れているわけではない。だから気にしないでと言われて、「ああ、なんだ。皮一枚か」と思うと、私は人を差別する意識を持つことはありませんでした。 ウチナーンチュにはそういう気持ちがあって、「チムグクル」=優しさを大切にする、「ユイマール」=支え合いという言葉を沖縄の皆さんが大切にしているのは、そういうお互いの信頼関係があれば、いい世の中になるよねという思いがあるのだと思います。 この二つは沖縄の多様性を象徴する言葉だと思います。LGBTやマイノリティーに対するヘイトが問題になっていますが、もともとは人が人として信頼を持ってふれ合えば何の問題もないのです。沖縄県民の心の源流に流れているチムグクル、ユイマールの精神を、いかにして政策・政治に反映させていくか。この点を丁寧に心がけたいと思います。 玉城デニー氏(たまき・でにー) 1959年10月13日生まれ。うるま市(旧与那城村)出身。上智社会福祉専門学校卒。老人福祉センターや音楽関係企画事務所の勤務、ラジオパーソナリティーなどの活動を経て2002年に沖縄市議に初当選(1期)。09年の衆院選で初当選。現在4期目。辺野古新基地建設などに反対する沖縄県選出の国会議員でつくる「うりずんの会」事務局長。
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