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「佐賀県・山口知事の大裏切り オスプレイ20年100億円で「合意」 知事選前にした保身と自民党への忖度
社会2018年8月28日
・用地買収進まぬなかでの勇み足
佐賀空港へのオスプレイ配備計画をめぐって山口祥義知事が24日に記者会見をおこない、「県は国防政策に協力する立場で、県としても一定の負担をする必要がある」としてオスプレイ配備の受け入れを表明した。佐賀空港のある川副町では住民による根強い反対運動がくり広げられており、地元住民や漁民を通りこした佐賀県知事の突然の受け入れ表明に対して怒りの声が上がっている。しかしいくら県知事が受け入れを表明したところで、予定地の地権者である佐賀県有明海漁協は反対を表明しており、土地買収など実際には進んでいないのが現実だ。
山口知事は記者会見に先立って、24日午前に県庁で小野寺防衛大臣と面談し、オスプレイを導入すれば、着陸料として国が佐賀県に20年で100億円(年間5億円)を支払うことを明記した合意文書を交わした。主な合意事項としては、@国は着陸料として20年間で100億円を県に支払う、A県は着陸料で「漁業振興基金(仮称)」や事故などに備えた「補償基金(同)」を創設する、B国、県、有明海漁協などが環境保全と補償について話し合う協議会を設置する、C事故など重大事案に備え、防衛省と県の間でホットラインを設置する、としている。
2014年7月に突如として浮上した佐賀空港のオスプレイ配備計画は、有明海に面した県営佐賀空港(佐賀市)の西側用地33fを買収し、新規導入する陸上自衛隊のオスプレイ輸送部隊(17機)の常駐、陸上自衛隊目達原基地(神埼郡吉野ヶ里町)の対戦車攻撃ヘリコプター部隊(50機)を移転配備、沖縄・普天間基地に常駐している米軍のオスプレイ部隊の訓練基地としても使うというもので、実現すれば国内最大級の軍事拠点施設となる。
これに対して、地元佐賀市川副町の自治会や老人会などの住民組織、有明海のノリ漁業者や農業者などの生産者が一体となって「佐賀空港への自衛隊オスプレイ等配備反対地域住民の会」(古賀初次会長)を立ち上げて、住民集会や陳情、反対署名をおこなってきた。配備先である空港西側用地を所有する佐賀県有明海漁協(徳永重昭組合長)もオスプレイ配備に対して反対を表明している。特に用地の大部分を保有する南川副支所(田中浩人運営委員長)では、運営委員会が全会一致で反対を決議しており、地権者の組織である「国造搦(がらみ)60f管理運営委員会」の総代会でも反対を決議している。
また、オーストラリア沖や名護市沿岸で在日米軍のオスプレイ墜落事故があいつぎ、川副町に近い神埼でも陸上自衛隊のヘリコプターが民家に墜落するという大事故が起きたため、国と県との協議も停滞していた。
・上層部の手続きのみ先行して諦め誘う手口
反対する地域住民の会の古賀初次会長は、「小野寺防衛大臣が佐賀に来ているのは知っていたが知事の受け入れ表明は寝耳に水で、話を聞いた瞬間は頭が真っ白になった。これまで知事は“佐賀のことは佐賀で決める”など、綺麗事ばかりいっていたが、これで化けの皮が剥がれたという思いだ。住民と話し合って了解を得たうえで受け入れを表明するのならまだわかるが、大臣が来たからといって一方的に容認するというのは順序が逆ではないか。県民が選んだ知事であって、国から使命された知事ではない。どちらの立場に立っているのか。これは県民に対する裏切りだ」と憤りを語った。
着陸料である20年間で100億円という金額は、「それなりのインパクトを与えて漁業者を揺さぶらないといけない」として佐賀県側から防衛省に申し入れたという。「私たちが反対しているのは金額の問題ではない。住民や漁民を馬鹿にしているとしか思えない。国や県はお金をちらつかせて住民や漁師、地権者を分断しようとしている。川副町全体が一つになって反対運動を今以上に強めていかないといけない。県知事は国防のために県は協力しないといけないというが、“お国のため”といって多くの人が殺されていった第2次大戦と同じような状況ではないか。南北会談や米朝会談など東アジア全体が対話という平和的な外交を始めているなかで、オスプレイやイージス・アショア、辺野古基地の新設など日本だけがおかしな方向に進んでいる」と指摘した。
そして「県知事が住民の頭越しにいくら受け入れを表明したところで、地権者が予定地の土地を売らなければ話は進まない。国や県は受け入れを表明することで、住民のあきらめを狙っているのだろう。これから防衛省はあらゆる手を使って土地の売却を迫ってくるだろうが、絶対に負けるわけにはいかない」と力強く語った。住民の会としては9月4日から始まる県議会前に県知事に抗議をおこなう予定だという。
自治会関係者の男性は「腹立たしさを通り越して何ともいえない気持ちだ。佐賀空港へのオスプレイ配備は国防のためというが、結局はアメリカのいいなりで高額の武器を買わされて配備させられるということだ。佐賀のオスプレイも山口のイージス・アショアも沖縄の辺野古も全部一緒だ。沖縄を見ていてわかるように、日本政府はアメリカに対して米軍機が落ちてきてもまともに抗議すらできない。このままでは日本は滅びる。オスプレイの問題は日米安保の問題だ」といった。
農業者の男性は「農政協議会としても空港建設のさいに県と公害防止協定を結んでいて、空港の仕様変更のさいにはきちんと話し合いをおこなうとしている。今回の受け入れ表明は、住民に対して一切話はなかった。一体何のための協定なのか。四年前の県知事選では、自民党推薦でオスプレイ受け入れを表明していた樋渡元武雄市長の対抗馬で“佐賀県の事は佐賀県で決める”といっていた山口知事に票を入れた。県知事はその県民の思いを裏切っている。あまりにも急な受け入れ表明で、県知事選を含んだ裏が何かあると思っている。しかし知事が容認しても予定地の地権者である漁師が土地を売っていないから実際の話は進まない。川副町全体の問題として、土地を売らずに頑張っている漁師をわれわれ住民で応援しなければならない。川副町は農業と漁業の町だ。この平和な佐賀にはオスプレイも基地もいらない。今でも川副町民の8割はオスプレイに反対している。今回の知事の受け入れ表明はオスプレイ反対の運動をもっと多くの人に広げていくチャンスでもある」と話した。
地元漁師の1人は「諫早湾干拓事業でも漁業被害を受けたら補償するという約束をしていたが、結局“因果関係がわからない”といって被害が出ているのに国は何の補償もしていない。これまでの経験上、国のいうことは全く当てにならない。海は私たちの仕事場だ。佐賀空港にオスプレイが配備されれば、仕事をしている上をオスプレイが飛び回ることになる。オスプレイそのものが欠陥機と呼ばれてあちこちで墜落事故を起こしているなかで、もし有明海に墜落するようなことがあれば有明海のノリ漁は壊滅的な被害を受ける。青森県でも米軍の戦闘機が小川原湖に燃料タンクを投げ捨ててシジミ漁がまったくできなくなっているが、私たちは子どもや孫にこの綺麗な海を残していきたいという思いがある。絶対に土地を売るわけにはいかない」と強い口調で話した。
予定地である空港西側用地の大部分を所有している南川副支所の田中運営委員長は、「運営委員会で決議したとおり、私たちは土地を売るつもりは一切ない。防衛省が何をいってきても答えは同じだ。そもそも着陸料として100億円を国が支払ってそれを漁業振興に使うというが、空港は県が運営しているものであって県民全体の財産だ。その着陸料100億円全てを漁師だけで使えるわけがない」と話した。
そして「私たち漁師は別にお金が欲しくて土地を売らないといっているわけではない。神埼の民家にも自衛隊のヘリコプターが墜落するという事故が実際に起きている。あれを見て賛成などできるわけがない。漁協が県と結んでいる公害防止協定には“自衛隊との共用はしない”という一文がきちんとある。先輩たちが後世のために盛り込んだこの一文を今こそ生かすときだ。佐賀の空にオスプレイはいらない。いつまでもバルーンが飛ぶ平和な空であってほしい」と話した。」
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/9097
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