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官僚や政治家は庶民から高等教育を受ける権利を奪い、富裕層の子を優遇してきた
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201807060001/
2018.07.06 櫻井ジャーナル
東京地検特捜部は7月4日、文部科学省の科学技術・学術政策局長だった佐野太を受託収賄の容疑で逮捕した。私立大学支援事業の対象校に選定されることの見返りに、自分の子を大学入試で合格させた疑いが持たれている。同日、佐野局長は解任され、大臣官房付になった。
日本医科大学から同大学を対象校に選定するよう佐野が依頼を受けたのは文科省官房長だった2017年5月。その見返りと知りながら、自分の子が今年2月に同大を受験した際、点数の加算を受けて合格させてもらった疑いがあるとされている。
言うまでもなく、検察、特に特捜部は信頼に値しない集団。裁判も行われていない段階であり、今回の出来事について語れる段階ではない。ただ、日本の受験が公正でなくなっているとは言える。学費の高騰で経済的に余裕のない家庭の子どもは圧倒的に不利な状況だが、それだけでなく試験の仕組みも不公正になっている。
今でも以前と同じような「一般入試」は残っているが、出身校から推薦された学生を選抜する「推薦入試」や出願者の個性や適性に対して多面的な評価を行って選抜するという「AO入試」など学校側の主観で合格者が左右される方法が多用されている。出身校でランク付けされることから受験の山場は小学校とも指摘されているが、勝負所が早くなればなるほど親の経済力の差が出る。
安倍晋三内閣の私的諮問機関だという「教育再生実行会議」が提出した「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」には次のような記述がある:
「各大学は、学力水準の達成度の判定を行うとともに、面接(意見発表、集団討論等)、論文、高等学校の推薦書、生徒が能動的・主体的に取り組んだ多様な活動(生徒会活動、部活動、インターンシップ、ボランティア、海外留学、文化・芸術活動やスポーツ活動、大学や地域と連携した活動等)、大学入学後の学修計画案を評価するなど、アドミッションポリシーに基づき、多様な方法による入学者選抜を実施し、これらの丁寧な選抜による入学者割合の大幅な増加を図る。その際、企業人など学外の人材による面接を加えることなども検討する。」
大学側が主観的に能力とは関係なく合格者を選べるわけで、「裏口入学のシステム化」のように見える。
かつて教育課程審議会の会長を務めたことのある三浦朱門は「ゆとり教育」について次のように語っている:「平均学力が下がらないようでは、これからの日本はどうにもならんということです。できん者はできんままで結構。戦後五十年、落ちこぼれの底辺を上げることにばかり注いできた労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。百人に一人でいい、やがて彼らが国を引っ張っていきます。限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえばいいんです。」(斎藤貴男著『機会不平等』文藝春秋、2004年)
こうした方針で教育した結果、大学や大学院の学生の能力は大幅に低下しているという声が企業サイドから聞こえてくる。三浦が言うところの「学力」は能力と別物で、「できる者」は優秀でなかった。
日本の「エリート」はアメリカを追いかけ、新自由主義を導入してきた。そのアメリカでは公教育が崩壊状態にある。これはかなり前から進んでいたことで、アメリカの上院議員で元ハーバード大学教授のエリザベス・ウォーレンによると、アメリカでは医療とならび、教育が生活破綻の原因になっているという。
アメリカの場合、低所得者の通う学校では暴力が蔓延して非常に危険な状態で、学習どころではない。少しでもまともな公立の学校へ通わせようと望むなら、不動産価格の高い住宅地に引っ越す必要がある。
私立の進学校へ通わせるためには多額の授業料を払わなければならない。トーマス・カポーティは『叶えられた祈り』(川本三郎訳、新潮文庫)の中でウォール街で働いているディック・アンダーソンなる人物に次のようなことを言わせている。
「二人の息子を金のかかるエクセター校に入れたらなんだってやらなきゃならん!」
エクセター校とは「一流大学」を狙う子どもが通う有名な進学校で、授業料も高い。そうしたカネを捻出するため、「ペニスを売り歩く」ようなことをしなければならないとカポーティは書く。アメリカの中では高い給料を得ているはずのウォール街で働く人でも教育の負担は重いのだ。結局、経済的に豊かな愚か者が高学歴になり、優秀でも貧しい子どもは落ちこぼれていくことになる。
イギリスも似たような状況で、例えば、2012年にイギリスのインディペンデント紙が行った覆面取材の結果、学費を稼ぐための「思慮深い交際」、日本流に表現するなら「援助交際」を仲介するビジネスの存在が明らかにされた。ギリシャでは食費を稼ぐために女子学生が売春を強いられ、売春料金が大きく値下がりしていると伝えられているが、こうした傾向は各国に広がりつつある。
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