http://www.asyura2.com/18/senkyo246/msg/853.html
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竹中平蔵だけじゃない!「残業代請求は、権利の乱用」とトンデモ主張する経営者たち…必要なのは高プロでなく使用者教育だ!
LITERA 2018.06.26
http://lite-ra.com/2018/06/post-4091.html
これまでも、ビックリな会社の主張が掲載されてきたが、私からは、いわば「高度プロフェッショナル制度」の先取りともいうべき仰天な会社の主張や社長の弁などを取り上げたいと思う。
それは某残業代請求事件で起きた事件であった。会社側の主張の第1は、「そんな大変な労働じゃないんだぜ」(手待時間的な主張)というものだ。まあ、これは想定されなくもない反論だろう。
ふむふむ。と読み進めると、第2の主張は、「業界的に歩合給には割増賃金も含まれてるんだぜ。歩合給に残業代を含むという契約上の根拠は全くないし、会社から説明もしていないけど、長くこの業界で仕事をしてきた原告なら分かるだろ」(みなし残業代的な主張)というものだ。これも「説明すらしていないのに残業代含むんだ」という主張は初めだったが、まあ国際自動車事件のような裁判例もあることから(結論は不当と考えているが)、苦しい主張ではあるけども主張としては、あり得るのかなあと思った。
そして、第3の主張……目を疑った。「権利の濫用」と書いてあるではないか。それによると、基本給として最低保証給を払い、かつ、歩合手当も含めると、それはそれは、大層な金額を支払っているのだから、原告の残業代請求は「権利の濫用」に当たるというものだった。「給料が高ければ、一切の残業代・休日手当を支払う必要はない。労働者が請求したとしても、それは権利の濫用で許されない」のだそうだ。正に「高度プロフェッショナル制度」ではないか! ちなみに、原告の方の収入は、年間1075万円もなかった。まだ国会での議論すらされていなかった「高度プロフェッショナル制度」を先取りし、その要件以上の主張をしてくるとは、非常に先進的な主張だと思えないだろうか?
労働基準法は労働時間を定め、原則として刑事罰をもって残業を禁止している。36協定の締結によって、例外的に適法化されているが、それでも割増賃金を支払わなければならない。その趣旨は、労働者にとって、長時間に渡る労働は、大きな肉体的・精神的な負担を課すことから、割増賃金の支払い義務という「ペナルティ」を課すことによって、これを抑止しようとするところにこそある。当然のことながら、残業代を払えば働かせていいというものではない。「高度プロフェッショナル制度」に関しても同じことがいえるが、「高い賃金を払っていれば、労働者をいくらでも残業させていい、深夜・早朝・休日に働かせてもいい、その場合にも、高い賃金をもらっているんだから残業代なんか支払わない」ということが許されてしまえば、労働者の安全・健康を守るためのはずの労働基準法や労働安全衛生法が、かえって労働者の安全・健康を損なうことになってしまう。到底許されるものではない。
なお、この他にも突っ込みどころのある主張をしてくる例は、特に残業代請求の事件で後を絶たない。
ある事件の会社代表者の弁では、定年まで全うせず、働いていたときは残業代請求をせず、自分から辞めていったくせに残業代を請求するような労働者は(それをサポートする代理人弁護士も含めて)、精神的におかしいのだそうである。本来労働者が残業代の支払いを会社に請求しなければならないこと自体おかしいが、きっとこの会社は、働いていたときであれば、残業代請求すれば、直ちに支払ってくれる「ホワイト企業」なのだろう。
また、ある事件では、こちらから残業代請求をしたら、もともと支払った残業代が多すぎたのだから、不当利得に当たるから逆に返還しろといってきた。給与明細上も残業時間等が記載されていたが、それは会社の計算の誤りだったという主張である。賃金請求権の時効は2年、不当利得返還請求権の時効は10年であるから、これを意図的に会社がやっていたのであれば、法の網をかいくぐった、頭脳的な主張といえるかもしれない。
■ 36協定も法定休日も理解していない経営者だらけ!これで高プロが導入されたら…
また、壮絶な誤解をしている社長さんもいらっしゃる。その例を2つ紹介しよう。
1つめ……
「うちは36協定をきちんと結んでいるから、そこで定めた上限いっぱいまでなら、残業代を払わなくても残業させていいのだ!!」
おわかりのことと思うが、上記のとおり、36協定の効果は、そこで定めた上限まで残業等をさせても、刑事罰を科されないという免罰効であって、残業代を払わなくていいという民事効は生じない。国会で議論されようとしている、残業時間の上限規制の問題は、この36協定でも規制できていない、罰則付きの「上限」に関する例外(1日8時間などの法定労働時間を「原則」とすれば、いわば「例外」の「例外」)に法律の枠をはめようというものである。従って、36協定で残業時間の上限を定めたからといって、労働者を残業させた以上、使用者は残業代を支払わなければならない。
2つめ……
「労働者が、自ら残業させて欲しい、土曜も日曜も働きたいと言っているのだから、これは残「奉仕」(もしくは歩合給稼ぎのための請負)であって、残「業」ではない!!」
これもおわかりのことと思うが、労働と奉仕活動・ボランティアとは違う。法的には、使用者の指揮命令に従って、労働者が労務を提供している以上、賃金が支払われるべき労働時間になる。指揮命令の有無は実質的に判断され、使用者側が直接残業を命じていなくても、残業している実態を黙認していれば、それは使用者の指揮命令下の時間、すなわち労働時間に当たるということになる。「サービス残業」というものは許されない。まあ、労働者の方でも進んで会社にサービスするつもりのサービス残業なんてあり得ないと思われるが……。ちなみに、売上等に応じて支払われる、いわゆる歩合給・請負給の定めがあったとしても、歩合給部分について残業代を支払わなくていいというわけではない(時間単価の計算が、所定労働時間ではなく総労働時間に基づくという違いだけである)。
以上のとおり、法律の枠組に関する理解不足(曲解・牽強付会を含む)から、法律家が参加した事件においてですら、ビックリ仰天な主張がされていることからすると、実際の労働実態はもっとすさまじいものがあるのではないか(本連載第12号http://lite-ra.com/2018/04/post-3946.html)によると、「うちは法定休日ないから」という社長さんがいたようである)。いまこそ、労働者のみならず、使用者に対しても「ワークルール」を学ぶ機会を与える、「ワークルール教育」の実践が必要なのではないか。ワークルール教育を国や行政、事業主の責任で実践する、ワークルール教育推進法の早期成立を祈念して、私からの報告とさせていただく。
【関連条文】
安全配慮義務→労働契約法5条
労働時間規制→労基法32条、35条〜37条
(金子直樹/早稲田の杜法律事務所http://wasedanomori.com )
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ブラック企業被害対策弁護団
http://black-taisaku-bengodan.jp
長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。
この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。
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