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「圧倒したイージス・アショア反対 防衛省が阿武町や萩市むつみで説明会
2018年6月21日
「緊張緩和のもとでなぜ必要なのか?」
安倍政府が新型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備を進めようとしている陸上自衛隊むつみ演習場の地元住民に対する初めての防衛省の説明会が、阿武町福賀(17日)、萩市むつみ地域(18日)、萩市中心部(19日)でおこなわれ、多くの市民が会場につめかけた。
皮切りとなった阿武町福賀の「のうそんセンター」には、約200人の町民が会場を埋めつくした。住民の不安や懸念、憤りの思いが引きも切らずに語られ、賛同の拍手が随所でわき起こるなど、配備計画に反対して撤回を求める町民の思いを共有しあう場となった。
はじめに、これまでの経過を花田憲彦町長が報告したのち、防衛省中国四国防衛局の赤瀬正洋局長がイージス・アショアの必要性、配備候補地として選定した理由、レーダーの人体への影響などについて約30分間にわたって説明した。
このなかで赤瀬局長は、「北朝鮮がわが国を射程に収める弾道ミサイルを数百発保有しており、しかも発射台付き車両や潜水艦を用いて、より奇襲的に弾道ミサイル攻撃ができる能力を急速に高めており、24時間365日、わが国を弾道ミサイルの脅威から守る体制の構築が急務になっている」とイージス・アショアの必要性を説明した。
また、配備候補地の検討として、「わが国全域を防護する観点から、北と西に2基をバランス良く日本海側に設置すること、弾道ミサイルの探知に支障が出るため、なるべく山など遮蔽がない場所に設置すること、レーダーと発射台を適切に設置するため、広くて平坦な敷地をなるべく確保できる場所に設置すること、レーダー等の運用のため、電気・水道等の安定的な供給が見込める場所に設置すること」などをあげ、「秋田県の陸自新屋演習場と山口県のむつみ演習場を候補地とした」と説明した。そして、「レーダーの電波は細胞の遺伝子を損傷するようなX線やガンマ線と異なり、無線LANなどと同じ周波数帯域であるSバンド帯を用いており」「人体に影響を与えないよう、電波防護指針等を遵守し、設計・運用する」とした。
これに対する質疑応答では、おおよそ90分間にわたって住民からさまざまな不安や懸念、憤りが語られた。
「演習場から100b、200bのところに住んでいる住民の感情として、今の説明は何だ! 戦争のために使うものを何でうちの後ろ100bのところにつくらないといけないのか。防衛省は住民のことをどう思っているのか説明願いたい」と口火が切られると賛同の拍手が起こり、以後の質疑でも随所で思いを共有する拍手が送られた。
農業を営んでいる男性は、「私が一番懸念していることは、先の大戦のときに国民を守るという観点はひとつもなかったことだ。今の防衛省にそれがあるのだろうか。防御をするということは、攻撃目標になるということだ。住民の安全はどのように守られるのか、非常に懸念している。10年、20年したらここの部落はなくなるという考え方は、私は嫌な気がする。高齢化は非常に進んでいるが、そのなかで地域の振興をどうにかして図っていきたいとやってきた。危険なところという烙印を押されると、だれも来なくなって地域振興どころでなくなる」と語った。
70代の男性も、「イージス・アショアの話が出たのは昨年だが、とんでもない話が出たなと受けとめた。今日の説明は聞こえなかったので配られた説明書を読んだが、ますます納得がいかない。こんなことはやってもらってはたまらない。800億円かかるということだったが、今はそれが1000億円とも2000億円ともいわれる。話にならない。田舎にはこういうものは全然そぐわない。住民のみなさんもおおいに不安を感じているのは間違いない。だからこうしてたくさんの方方が集まっておられる。私はこれを撤回してもらいたいという立場で発言した」と続いた。
「むつみ演習場を一望できるところで農業をしている」という男性は、「私がここに帰ってきて23年になるが、4人の子どもたちに継がせるために、親の後ろ姿を見せるために、農業を一生懸命やっている。福賀の農業を活性化するために、魅力ある農業、もうかる農業を実践しているつもりだ。安倍首相のお膝元だから反対するのは言語道断という記事が載っていて憤りを覚えた。私は保守的な人間だが、この件についてはすごく憤りを感じている。もう一つの候補地である秋田県の新屋演習場は周囲1`のなかに小学校が1校、高校が1校ある。2`圏内には中学校が1校、それに付随する学校施設、3`圏内には秋田県庁といった行政施設がある。福賀地区にも3`圏内に小人数とはいえ小学校があるし、高齢者の福祉施設が建設中だ。2つの候補地がどのようにして絞り込まれたのか聞きたい」と語った。
ミサイルの標的になるじゃないか!
さらに発言があいついだ。「インフラの観点ということで、レーダーの運用のためには電気と水道等の安定的な供給が見込めるところと書いてあるが、この山間地に住んでいて、落雷などで年間に数回停電を経験する。むつみ地域ではどのくらい停電があるのか。そのようなことも把握していないのか」(男性)、「迎撃するためにミサイルを発射するさいにどれだけのガスを噴出し、それにともなう影響はどれほどあるのか」(男性)、「イージス・アショアは弾道ミサイルのみに対応するといったが、イージス・アショア自体を狙って向かってくるミサイルは想定していないのか」「敵国側からすれば、ここを最初にたたくことになると思う。海上や潜水艦発射の巡航ミサイルで狙われたとき、被害は莫大なものになるが、そういうことを想定していないというのはまったく説明にならない」(男性)などと追及した。
さらに、「高齢者が多いことからペースメーカーやICD(植え込み型除細動器)をつけている人が多いが、そういう方はどうなるのか」(男性)、「ペースメーカーやICDにはメーカーのマニュアルに下記の場所、機器に近づくことは絶対に避けてくださいと書いてある。誘導型溶鉱炉、溶接機、発電施設、レーダー基地、強い電磁波を発生する機器。本当に影響が出ないのか疑問に思う。影響はないのではないかというようないい加減な回答では困る」(女性)、「ドクターヘリについても影響はないのではないかというような説明だが、米軍のXバンドレーダーがある京丹後市では停波の連絡が遅れてヘリの到着が遅れたという事例がある。住民の健康、安全、命を第一に考えてもらいたい」(女性)などの意見が出た。
そして最近のアジア情勢にも関連して、「国際情勢が半年前ならいざ知らず、今あのような形で緊張緩和がされつつあるなかで、本当にこれだけ住民にリスクをかけてまでつくらなければいけないのか、そのことを大変疑問に思っている」(女性)、「イージス・アショアの導入については2015年に安倍さんがアメリカに行ってトランプさんとゴルフをしながらアメリカの軍需産業をもっと支援してくれということで、そうしましょうといきなり閣議決定で決めてしまった。国会ではまったく議論されていない。どうしてそんなに設置を急ぐのか」(女性)、「今までの意見を聞いても、住民の意見は撤回してほしいということしかないと思う。それなのにどうしても調査をするという。調査をするにしてもお金がかかる。北朝鮮の核兵器をなくすために安倍さんがまた何千億円もの経済支援をするという。イージス・アショアにも何千億円を出すという。日本はそんなにお金があるのか」(女性)と質した。
また、「今日の説明会の配布資料が6月1日に県知事、萩市長、阿武町長が説明を受けたときのものと同じということで驚いた。その後、知事も市長も町長も理解が不十分なままではいけないということで、文書による回答を求めていたが、その回答が出る前に地元説明会の日程が設定されている。その回答文書が出たということは今朝の新聞で知った。慌てて県庁のホームページで見たが、この場でそれが配られないということは、住民の私たちはそうした詳しいことは聞かなくてもいいということなのか。しっかり、ていねいな説明をすると防衛省の人は何度もいっているが、住民は置き去りにされるのではないのか」(女性)と問いただす意見も出た。
これらの意見に対して、防衛省側は「住民のみなさまのご意見は重く受けとめさせていただく」「しっかり調査し、ていねいに説明して、ご理解をいただく」とくり返すばかりで、基地に保有するミサイル基数や電磁波の度合いなどの具体的なことには「軍事的な能力をあかすことになるので答えられない」とし、住民の声に背を向けてあくまでも配備のための調査を進める姿勢を崩さなかった。
むつみでも質問相次ぐ
萩市むつみ地域の地元説明会は18日午後7時から、萩市むつみコミュニティセンターの多目的ホールで開催された。参加者はここでも当初準備していた席数を大幅にこえる約230人が集まった。
住民からは「ここはコメとトマトなど農産物の産地だ。農作物に対する影響や生育への影響、あるいは食べたときに差が出ることがあるのか。ない場合も風評被害が出るときは何か対策を講じてもらえるか」と質問があった。
二十数年前に京都から就農者として来た住民は「むつみ村は日本の原風景が残った美しい村だ。そこにミサイルとか戦争の話が出てきて驚いている。平穏な生活がこんなことで脅かされるのはたまらない。私は20年間農業一筋できた。最近は毎日寝られないくらい考えている。平穏で美しい日本の国を残してもらいたい」と意見をのべた。
むつみ演習場の真下の集落で農業をやっている住民は「私たちの集落では、5つの湧水をもって田んぼに水を引いている。イージス・アショアをつくることによって、湧水がどうなるのか、大変気にしている」「5月15日に京都の方でアメリカ軍のXバンドレーダーによってドクターヘリが17分遅れたという記事が載っていた。むつみには高齢者がたいへん多く、いつどのようにドクターヘリを要請するかわからない」とのべ、最後に「イージス・アショアについては配備の撤回をお願いしたい」と訴えた。
むつみ演習場から直線距離で4`の場所に住む住民は「千石台という部落があって、そこで路地野菜のダイコンを中心につくっているが、今日も山口県内を中心に5万本くらい出荷した。山口県最大の路地野菜の産地でそこで農業専業でやっている。先日、この会場で電磁波と健康についての講演があった。そのときに専門家が動植物に重大な影響があるといわれた。今日の資料と説明によると人体に影響がないし、できるだけ少なくするとある。専門家によって多少見解が違うと思うが、人体と動植物に影響があるという話だ。とくに男性の生殖機能に影響がある。うちの産地では新規就農者がたいへん多い。そういう人たちに本当に人体に影響がないのかということを大変懸念している。せっかくこちらに戻ってきた20代、30代の人、また乳幼児もいる。イージス・アショアは農家にとってはまったく必要ない」などの意見があいついだ。」
https://www.chosyu-journal.jp/yamaguchi/8412
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