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アベノミクスが成功したという真っ赤なウソ
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2018年6月20日 植草一秀の『知られざる真実』
第2次安倍政権が発足してから5年半の時間が経過した。
この間の日本経済の変化について、安倍政権はアベノミクスが成功したかのような説明をするが、まったく正しくない。
たしかに枝葉の部分では成果としてアピールしたがることがないとは言えないのだが、根幹の部分、幹の部分での評価は最悪に近い。
国民にとって、もっとも切実な経済問題について、私たちは正しく事実を把握し、そのうえで、適正な政策の遂行を求めなければならない。
安倍政権が経済運営の実績として強調するのは以下の五点である。
1.雇用者数が増えた、有効求人倍率が上がった
2.名目GDPが増えた(2013年503兆円から2017年547兆円に)
3.企業利益が増えた
4.株価が上昇した
5.外国人訪日者が増えた
これらは事実であるが、経済運営の評価としては「枝葉」に関わることだ。
悪いこととは言えないが「木を見て森を見ず」である。
まったく賞賛にあたらない。
経済運営の実績を評価するうえで、根幹の二つの指標を提示するなら、実質GDP成長率と実質賃金の変化ということになる。
実質GDP成長率が全体としての日本経済のパフォーマンスを示す。
他方、実質賃金の変化は、国民の大多数を占める労働者の実質的な実入りの変化を示している。
実質GDP成長率は四半期ごとに発表されているが、第2次安倍政権発足後の実質GDP成長率平均値は+1.3%である。
これに対して、民主党政権時代の成長率平均値は+1.8%である。
民主党政権時代に東日本大震災が発生し、福島原発事故も発生した。
極めて経済が停滞した時代だが、第2次安倍政権発足後の日本経済の実績は、その民主党政権時代をはるかに下回っている。
総合点は劣悪極まる。
試験に不合格になった生徒が、「あの漢字の読み方の問題はできた」、「1問目の計算問題は解けた」と言っているようなものである。
一人あたりの実質賃金指数は、民主党政権時代はほぼ横ばいだったが、第2次安倍政権発足後に約5%減少した。
国民にとっての最重要の経済指標が実質賃金指数の伸びであり、この数値が最悪を記録しているのであり、全体としての経済政策の評価は、優、良、可、不可の「不可」にあたる。
名目GDPが2013年の503兆円から2017年の547兆円に増えたというが、名目GDPは2007年に532兆円だったものが2009年に490兆円に急減している。
自民党政権下で名目GDPが急減し、2015年にようやく2007年の水準に回復しただけなのだ。
しかも重要なのは実質GDPであって名目GDPではない。
経済全体の推移が「不可」の状況下で、労働者一人当たりの賃金が実質で5%も減少した。
その一方で、企業収益はリーマンショックに伴う激減からV字型で回復して史上最高水準を更新している。
その大半を占めているのが一握りの大企業である。
株価が上昇したというが、上場企業数はすべて合わせて約4000社。日本の法人数全体の0.1%に過ぎない。
雇用者が増えたというが、労働者全体の所得が伸びないなかで、その所得を分け合わなければならない人数が増えただけなのだ。
だから、一人当たり実質賃金は5%も減っている。とても政府が自画自賛できる状況でない。
外国人旅行者が増えたのは国が巨大な観光関係予算を投下したことと、円安で日本旅行が割安になったことによるものだ。円安で日本からの輸出が増えたことと同義である。
ただし、円安は日本全体の価値減少をもたらすもので、政府が「成功」としてアピールするべきものでない。
アベノミクスには全体として「不可」の評点しか与えられない。
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