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独り勝ちを狙うトランプの北朝鮮外交、恐ろしいツケを払わされる日本と韓国《前編》
2018.06.17 星の金貨 new
西側各国が考える以上にしたたかな北朝鮮外交、関係各国に法外な対価を要求する算段
歴史的なツーショットのシャッターチャンス以外、米朝首脳の直接会談が何をもたらすかはっきりしない
エコノミスト 2018年6月7日
アメリカが他の国に「ウィンウィン」の関係を持ちかけたとしたら、アメリカは「ウィン」を両方とも取り上げて一方的利益を手にする、と言うことを意味する。
ひとりの外交官がこう語りました。
しかしながら6月12日にシンガポールで開催された米国と北朝鮮の首脳会談は、例外的に2つの国の主要な主人公が2人とも勝利宣言することを可能にするかもしれません。
そして同時にその行方を固唾を飲んで見守っているオブザーバー諸国を喜ばせることになるかもしれません。
言うまでもなく韓国と中国はこの階段に大きな期待を寄せています。
一方の日本はやや懐疑的です。
しかしもし会談が不成功に終わった場合、無数にまたたくフラッシュと膨大な数の報道関係者が作り出す喧騒の中で、最大の敗者の姿はその中に紛れて存在意義不明のものになってしまう可能性があります。
最大の敗者とはアジアに何十年もの安定をもたらした米国主導型の安全保障体制です。
米朝首脳会談が行われたのはシンガポールの他の地域と橋、ケーブルカー、モノレールで結ばれたリゾート地区であるセントーサ島の超高級ホテルです。
近くには多くのゴルフコース、ビーチ、ろう人形物館、そして「銀河系の正義と悪との戦い」と「ハムナプトラの復讐」と銘打たれた宇宙船に乗って暗黒の宇宙に突入するイベントを売り物にしたユニバーサルスタジオのテーマパークがあります。
「セントーサ」とは「平和」「静謐」を意味するマレー語です。
こうした事実は預言者や占い師の社会的地位が高い韓国では物事が好転する前兆と見なされています。
しかしこの島の名前はシンガポール観光局の助言もあり1972年に変更されたばかりです。
それ以前はこの島は『プラウ・ブラキング・マティ(Pulau Blakang Mati)』という名で知られていました。
『死が背後から忍び寄ってくる島』という意味です。
アメリカと北朝鮮の外交はいつも非常に奇妙で理解し難いギリギリの線を走ってきました。
2000年に北朝鮮の首都平壌を訪れたマドレーヌ・オルブライト米国国務長官は、大量動員された人々によるマス・ゲームと兵士による捧げ筒の歓迎を受けました。
現在の独裁者の金正恩(キム・ジョンウン)祖父であった金日成(キム・イルソン)が権力の座にあった1992年以降初めて、米朝両国は2000年に北朝鮮の核兵器開発計画について話し合いをすることになりました。
北朝鮮は核兵器開発計画を放棄するという約束を繰り返し反故にしてきました。
韓国の北朝鮮問題の専門家たちは、核兵器が北朝鮮にとって金一族体制維持のための切り札なのか、それとも国際社会における国家の位置を押し上げるためのものなのか、長い間議論を戦わせてきました。
いずれが正解であるにせよ、核兵器がなくても北朝鮮はいつでも韓国の首都ソウルに砲弾の雨を降らせることができる軍事力を有しており、数十年の間抑止力として機能してきました。
いずれにしても、アメリカが求める「完全で検証可能で不可逆的な軍縮」はおそらく実現不可能です。
しかしドナルド・トランプ大統領と金正恩総書記は互いが平和の実現を熱望しているように演技することにより、直接首脳会談が「成功だった」と宣言することができます。
トランプもキム・ジョンウンも相手をテーブルの向こう側に座らせ、面と向かって直接会談さえすれば、自分たちの勇気ある決断と先見性についておおいに宣伝することが可能になるのです。
ホワイトハウスが大声で自画自賛する権利を6月4日早々に手にしました。
この日はトランプが大統領に就任してからちょうど500日目にあたり、過去18ヶ月間かつてない程強力な圧力をかけた結果、北朝鮮は大量破壊兵器の保有を諦める決心をしたのであり、チーム・トランプは「ドナルド・J・トランプ米国大統領の偉大なる500日間」 がそのことを可能にしたのだと持ち上げました。
トランプ大統領の下でアメリカは北朝鮮にいつでも北朝鮮全土に『炎と怒り』の雨を降らせると脅しながら、一切の妥協に応じないことを繰り返し強調し、「最大限の圧力」をかける政策を徹底して行ってきました。
一方、年間何度も北朝鮮を訪問している中国政府が資金を提供するシンクタンクの研究者は、キム・ジョンウン委員長はスターリン主義的独裁政治を続けながら、矛盾する状況の中で絶えず揺れ動いていると語りました。
「昨年、核兵器やミサイル実験をクリエしていた際、金正恩(キム・ジョンウン)委員長は北朝鮮のエリートに対し、目的はとにかくアメリカを交渉のテーブルにつかせることだと語っていました。」
「ですから今回の会談の実現について、北朝鮮の人々は金正恩が勝利したのだと考えるでしょう。」
《中編》に続く
https://www.economist.com/asia/2018/06/07/talks-between-america-and-north-korea-might-succeed-at-a-terrible-price
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前編の方には日本や韓国にどのような法外なツケが回ってくる可能性があるのかは書かれていません。
肝心な話しは後編になります。
ご容赦ください。
会談後、キム・ジョンウンを褒めちぎったトランプはメディアから
「キム・ジョンウンは国民を迫害し、基本的人権を踏みにじる独裁者じゃないのか?」
と追求されました。
これに対する返答は、まるでこう言っているようでした。
「北朝鮮国民がどのような状況に置かれているか、そんなことには興味はない。大切なのはヤツが俺にとって役に立つ人間かどうか、それだけだ。」
トランプがいかなる国民の基本的人権にも関心がない、ということは早くから欧米のメディアが指摘してきました。
上の発言(と言っても実際にこう入ってませんが)の北朝鮮国民を日本国民に、ヤツを安倍首相に置き換えると、トランプの日本への見方そのものになると思うのですが。
独り勝ちを狙うトランプの北朝鮮外交、恐ろしいツケを払わされる日本と韓国《中編》
2018.06.18 星の金貨 new
北朝鮮はこれ以上は無理だというところまで、自分たちに有利な条件を要求した
米国との和解を経て中国への対抗勢力に加わることにより、急速に成長したベトナムに倣った経済発展の道を模索するキム・ジョンウン
エコノミスト 2018年6月7日
▽ 世界が注目する瞬間
しかし歴史的なツーショットのシャッターチャンス以外、米朝首脳の直接会談が何をもたらすかははっきりしません。
朝鮮半島情勢に詳しい米国の専門家は、キム・ジョンウン委員長に非核化を迫るための手段はいくつかあるとテレビ番組の中で語りました。
制裁措置の緩和、多額の財政援助と投資、朝鮮戦争を終結させる正式な平和条約の締結、「利害」に基づく外交関係確立(互いに大使館を置く一歩手前の外交関係)などです。
トランプはキム・ジョンウンが武装解除に同意すれば、キム一族の体制は米国からの攻撃を一切受けないという「非常に強い」保証を提供されることになると話しています。
しかし最も大きな問題は、これまでにすべて試みられたことがあることばかりだということです。
韓国と北朝鮮は1992年に互いに核兵器を持たないことについて正式に合意を交わし、その直後アメリカは韓国内の米軍基地から戦術核兵器を撤去しました。
しかし1994年、高齢化した「偉大なる指導者」、金日成(キム・イルソン)は国際機関の査察団を追い出し、原子炉から取り出したプルトニウムを使って6発の原始爆弾に転用すると脅しました。
1994年後半「合意された枠組み」の下で北朝鮮はアメリカが原油と商業用原子炉を援助することを条件に、プルトニウムを使った不法な作業を放棄すると約束しました。
1999年には北朝鮮は制裁措置の緩和を条件にミサイル開発の放棄を約束し、続いて2000年には南北首脳会談が行われ、ビル・クリントン大統領の訪問が表明されました(しかし在任中には実現せず、大統領職を退いたクリントン氏が訪問することになりました)。
しかし2002年には極秘裏にウランを使った核兵器を行っていることが明らかになると北朝鮮は国際査察官を追放し、その結果事態は「6カ国協議」と呼ばれる多国間交渉の開催によって解決が図られることになりました。
そして北朝鮮は2009年から2017年の間に5回の核兵器実験を強行しました。
さらに北朝鮮は国連安全保障理事会の決議に反し、アメリカ本土に到達可能な弾道ミサイル実験も行いました。
アメリカの元外交官クリストファー・ヒルは、2005年に米国、中国、日本、北朝鮮、ロシア、韓国が合意した6カ国協議の「朝鮮半島の恒久平和体制」の合意に向け文言について感慨を込めて思い出しました。
この協定では北朝鮮が核兵器を放棄し、国際査察を受け入れ、先に脱退した核不拡散条約(NPT)に再度加入するという約束をしたはずでした。
当時、米国は核兵器はもちろん通常兵器であっても武力による北朝鮮への攻撃・侵攻意図は全くないことを明言し、韓国国内の米軍基地に核兵器は一切装備されていないことを確約しました。
同時にヒル氏は当時中国が強く主張した、米朝双方の利害関係を調整するという手法も実現に向けた検討が行われたと語りました。
彼は北朝鮮に対し懐疑的だったブッシュ政権にこの考えに同意するよう説得し、2007年に北朝鮮側に条件提示を行いました。
「しかし北朝鮮側は土壇場でそれを拒否したのです。」
元駐韓米国大使であるヒルはこうため息をつきました。
「北朝鮮はこれ以上は無理だというところまで、自分たちに有利な条件を要求したのです。」
▽期待できるものは単なる偶然
しかしこれまでとは異なり、北朝鮮は今度こそは対米交渉を成功させたいと熱望していると考えるのに十分な根拠があります。
核兵器は依然として金氏一族の支配体制の屋台骨であり北朝鮮の一般国民の支持も得ていますが、北朝鮮のエリート層はキム・ジョンウンがもう一つ力を入れているまだ小規模な経済発展への取り組みの方に期待しています、ソウル国民大学のアンドレイ・ランコフ氏がこう指摘しました。
金氏はこれまでの数年間武器製造に心血を注いできましたが、いずれ経済成長と両立させると約束していました。
金総書記は経済政策よりも軍事政策を優先する一方で、国内に大規模にはびこる闇市場を半ば黙認し、国有企業内の運営を実質的に民間企業に委ねることにより、北朝鮮経済のバランスをとってきました。
金総書記は自身の方針にさえ逆らわなければ、私的な投資も奨励しています。
「眠ったのままの一般住民の資金の活用と動員」を呼びかけている政府の方針すら明らかにされています。
韓国中央銀行がまとめた統計によると、2011年にキム・ジョンウンが政権を引き継いで以降、北朝鮮の経済成長は毎年1桁台の前半に留まり低迷を続けています。
こうした数字は信頼できるものではありませんが、父親の金正日体制時代の経済破綻や広範な飢饉に苦しんでいた時代とは一線を画しています。
キム・ジョンウン総書記は、米国との和解を経て、そして中国への対抗勢力の一翼を担うことによって急速に成長したベトナムを先例とする国家の経済発展の道を模索していると、北朝鮮当局者が海外から視察に訪れた人々に語ったことがあります。
少なくともキム・ジョンウン総書記は制裁の緩和には真剣です。
首都平壌の住民たちはいつ停電するかわからない電力供給から解放されるため、中国からの太陽光発電パネルの輸入が昨年まで急激に増え続けていましたが、英国人のチャッド・オーキャロル氏が運営する北朝鮮関連のニュースを専門とする独立系ニュースサイトのNK Newsが分析によれば今年3月8年ぶりにゼロに落ちこみました。
4月初めには燃料価格が高騰し、人道支援を行っていたNGOの各団体は農村部での肥料不足が深刻になっていることを把握するようになりました。
こうしたすべての問題が北朝鮮の準資本主義的経済発展の気分に水をさすことになりました。
「北朝鮮で一定程度以上の資産を持つ人々は金を稼ぐことに執着しており、それが不可能になったり不自由になったりすれば、その不満は現在の指導体制に向けられることになるでしょう。」
ソウル国民大学のアンドレイ・ランコフ氏がこう語りました。
しかしキム・ジョンウン体制は画期的な可能性を認識できるかもしれません。
北朝鮮はトランプ政治を理解するため、かなりの努力を続けてきました。
北朝鮮当局者は、最近アラバマ州の上院議員選挙で共和党が議席を失った影響などについて、接触できる外国人からできるだけ詳しい情報収集を行ってきました。
中国の研究者によれば、キム・ジョンウン政権はトランプ氏にはイデオロギーと呼べるほどの信念を持っておらず、歴代アメリカ大統領とは異なり言わば商売人(ディールメイカー)であると判断しました。
しかしイランとの核開発疑惑に関する交渉から突然撤退を表明したトランプのやり方を見ると、苦労して積み上げてきた交渉を瞬時にダメにしてしまうこわし屋(ディールブレイカー)としての側面も持っています。
結局、今回北朝鮮としては、十分に検討に値する機会を手にしたと感じているとこの研究者が語りました。
現在のアメリカと中国の間のライバル関係をうまく利用すれば、北朝鮮はそれぞれから思惑通りのチャンスを手に入れることができます。
一方トランプ大統領側は今回は柔軟な対応を行うと決断したように見えます。
5月下旬、北朝鮮の「敵対的姿勢」のために首脳会談を取りやめると一度宣言したにもかかわらず、トランプは金総書記の随員の一人をホワイトハウスに温かく迎え入れました。
この直後トランプは、北朝鮮側が軍縮に関する具体的公約を何も明確にしていないにもかかわらず(トランプ政権はキム・ジョンウン委員長からの親書の中身を結局は公開しませんでした)、米朝首脳会談の開催を復活させました。
トランプの国家安全保障担当顧問のジョン・ボルトンは、完全非核化のモデルとしてリビア方式を導入するよう提案して北朝鮮を激怒させたましたが、解任もされずトランプの顧問としてその背後にとどまっています。
ジョン・ボルトンが主張したやり方に同意したリビアの指導者ムアマール・カダフィは、結局なぶり殺しの目に遇いました。
最も重要な点はトランプが現在、これまでの『オール or ナッシング』という主張を取り下げてしまっていることです。
トランプは現在の米朝関係の良好なことを考えれば、もはや『最大限の圧力』といった類の政策を口にするべきではないとも語っています。
6月12日に近づくにつれトランプは朝鮮半島の非核化はすぐには実現しないとの見方を示すようになり、約65年の不安定な停戦を解消するために朝鮮戦争を正式に終結させる平和条約の締結を視野に入れた象徴的な勝利の可能性を語るようになりました。
こうした態度の変化はより重要な問題について、交渉が長引く結果につながる可能性があります。
トランプはシンガポールでの米朝会談について、「まずは互いについて知る」機会になるべきだろうと語るようになりました。
《後編》に続く
https://www.economist.com/asia/2018/06/07/talks-between-america-and-north-korea-might-succeed-at-a-terrible-price
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1960年代〜70年代、まだ高度成長期の延長上にあったセピア調ともいうべき日本社会にビートルズに代表される極彩色の欧米の文化がなだれ込む社会で成人したのが私たち世代です。
その私たち世代は社会はどこまでも民主主義を発展させていく場所である、とごく自然に考えてきました。
それが今になって第二次世界大戦で精算されたはずの国家主義が台頭する場面に遭遇しようとは、30年前、20年前には想像もしていませんでした。
どころかディールメイカー、要は近視眼的な利益主義者のトランプと抜け目のない独裁者キム・ジョンウンに挟まれ、無定見な安倍首相は必要性についての厳密な検証のないまま何十億何百億もする米国製武器を次から次へと買い込む姿勢をあからさまにしています。
間違っていた、そう反省するしかありません。
日本は戦後の民主主義を、敗戦をきっかけにアメリカからバーゲンセール並みの手軽さで手に入れました。
その点、革命を繰り返し多数の犠牲を払いながら民主主義社会を組み上げてきた英国やフランスと異なっています。
その代わり軍国主義の非人間的所業に苦しみ、最後は人類史上わたしたち日本人だけが核兵器攻撃まで受ける羽目になりました。
その言葉では表現できないほどの苦痛の果てに日本の民主主義は実現したのだ、という意識を持って誠実に日本の民主主義について考え続けてこられた人々もいらっしゃいます。
自分ももっともっと誠実に真摯に民主主義の質的向上について考え、努力を重ねるべきだった、今はそう反省しています。
しかしここで日本の民主主義を諦めてしまうわけにはいきません。
ひとりでも多くの方に立ち上がり続け、声を上げ続けていただくしかないと思っています、日本の民主主義をこれ以上劣化させないために。
独り勝ちを狙うトランプの北朝鮮外交、恐ろしいツケを払わされる日本と韓国《後編》
2018.06.20 星の金貨 new
アジア太平洋地区におけるアメリカの影響力を劇的に低下させるトランプの対北朝鮮外交
北朝鮮に中短距離ミサイルを残し、その防衛のため日韓両国に米国製の武器を大量に買わせるトランプのひとり勝ちシナリオ
エコノミスト 2018年6月7日
▽平和を希求する
中国の研究者はキム・ジョンウン委員長は軍の了承なしに核兵器開発計画を放棄することはできない、ただし北朝鮮の軍当局はアメリカが提示している体制保障など信用していないと語りました。
6月4日、キム委員長は3人の軍高官を解任しました。
キム委員長はこの措置により新しい外交政策に対する反対を抑え込もうとしたと見られています。
変わらない方針もあります。
キム委員長はアメリカに対し、2つの選択肢を与えました。
一つはアメリカ大陸を射程内に収める大陸間弾道弾の即時廃棄です。
そしてもう一つがこれまでも何度か試みられた核兵器開発計画の段階的廃止です。
その手続きがオープンなものであっても、北朝鮮が何も企んでいないと考える方に無理があります。
これまでもそうでした。
北朝鮮は時間をかけて譲歩をしながらも核兵器は温存し、先に制裁の緩和を要求しながら着実に自分たちが得点を重ねようとするでしょう。
考え得るいかさま - そして未来に問題を作り出す種は、北朝鮮が核施設をすべて放棄せずに、軍事施設ではなく発電施設として原子力施設を持ち続けるという選択肢です。
それでもこれはトランプにとっては見た目に好都合な結論です。
長距離ミサイルがない以上、アメリカ本土の安全を確保するという約束は果たしたと言い張ることができるからです。
しかしこの種の取り引きは相変わらず北朝鮮の中・短距離ミサイルの射程内に置かれたままの、アメリカの『重要な同盟国』である日本と韓国にとっては悪夢でしかありません。
北朝鮮の中・短距離ミサイルに装着できる核弾頭が残される可能性すらあるのです。
これまでの同盟国を売り飛ばそうとする意図をアメリカが持っていることが明らかになれば、長期的に見ればアジアにおける戦略的バランスを変えることになるでしょう。
例えば日本あるいは韓国が中国を相手に紛争を発生させた場合、アメリカが同盟国を守るために立ち上がるかどうかについて疑問を抱かざるを得なくなります。
当然の成り行きとして日韓両国は、中国に対する外交関係を再考せざるを得なくなり、結果的にこの地域におけるアメリカの影響力は劇的に低下することになるでしょう。
トランプ・キムの首脳会談の後、中国はいくつかの分野で有利になる可能性があります。
もし北朝鮮が核兵器を減らせば、中国はその裏庭の安全保障上の頭痛が緩和することになります。
米政府関係者の要求通り北朝鮮は地下核実験場の一部について解体爆破を行いましたが、それが仮に偽りであったとしても、破壊された実県施設は中国との国境に非常に近い場所にあります。
北朝鮮がその場所での核実験を中止すれば、中国にとっても脅威が去ることになります。
さらに北朝鮮の譲歩の見返りとして韓国におけるアメリカの軍事プレゼンスが低下することになれば、中国にとってさらに有利な状況が作り出されることになります。
北京にあるシンクタン、カーネギー清華国際政策センターの趙洞(Zhao Tong)氏がこう語りました。
かりにトランプ大統領が再び態度を翻し交渉を打ち切ることになれば、アメリカの国益を優先させることは難しくなります。
米朝首脳会談はどちらに転んでも、北朝鮮に対する国際社会の制裁を緩和することになるからです。
特にトランプが周囲が想定していない駆け引きをしようとして失敗に終わった場合は、北朝鮮の立場は楽になります。
趙氏は、トランプ氏がキム委員長と直接会談をすると決定したその時点で、これまで苦労して作り上げてきた対北朝鮮の厳しい制裁体制が一気に緩み、それとともにアメリカ側は切り札を失ってしまうことになった、趙洞(Zhao Tong)氏がこう語りました。
趙氏によれば中国の当局者は仮に仮に米朝首脳会談が物別れに終わったとしても、北朝鮮の軍事力を無力化するためにアメリカが軍事力の行使に踏み切る可能性はほとんど無くなりました。
韓国は如何なる軍事行動も拒否するだろうし、中国とロシアも強硬に反対するだろう、と趙氏は見ています。
東アジア地区の安全保障問題の専門家も同様に、米朝首脳会談が不調に終わったとしても北朝鮮がこれ以上厳しい国際的な制裁を受ける可能性は低いと見ています。
「北朝鮮はアメリカと直接会談を行ったという実績を手に入れることになり、これまで同様の制裁措置が継続したままの状態に置かれることになります。それで構わないのです。会談の失敗によって、制裁措置がこれまで以上に厳しいものになるわけではないのですから。」
特筆すべきは中国は経済制裁だけでアメリカが目標としている北朝鮮の武装解除は決して実現しないと確信していることです。
むしろ逆に武装強化を図る可能性があります。
今週、昨年の北朝鮮による核実験とミサイル発射実験により休止していた北京と北朝鮮の間の航空路が再開されました。
アメリカが再び敵対的姿勢に戻っても、韓国は北朝鮮との緊張緩和に向けた取り組みを継続する決意のようです。
先週、両国は開城工業団地にある連絡事務所の再開について合意しました。
この事務所も2016年に北朝鮮が核実験を行ったことにより閉鎖されていました。
韓国企業は両国を分断する非武装地帯付近の土地を買い入れてきました。
中には南北協力のために独自の事務所を設置している企業もあります。
国際的なシンクタンクであるISSのマーク・フィッツパトリック氏が次のように述べました。
「韓国人は制裁の回避し、あるいは南北の協力的な経済時器用を再開できるような合理的根拠を探っている可能性があります。」
結論を言えば、キム・ジョンウン総書記は米朝首脳会談の実現によって失うものはほとんど何もありません。
トランプ大統領も普段は彼を嫌っている報道機関から好評価を引き出せるかもしれません。
しかしトランプ個人のことは別として、アメリカという国にとっては決して良い結果を生まない可能性があります。
《完》
https://www.economist.com/asia/2018/06/07/talks-between-america-and-north-korea-might-succeed-at-a-terrible-price
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この記事の中身に加えて日本の安倍首相が米朝会談の直前に渡米し、武器を始め数千億円ものアメリカ製品の購入を約束してきたことを考え合わせると、私たち日本人はアメリカ人ともども詐欺やペテンまがいのことを平気で行う首相や大統領をいただいてしまっていることの悲哀を感じます。
おまけに日本では官房長官も記者会見で
「日本はこれから ト ラ ン プ 様 の ご 意 向 に 従 っ て、なんでもハイハイやってくつもりです。」
みたいな発言をし、国民としては
「一体どうなっているんだ、どこまで日本という国を劣化させるつもりなのだ!」
と憤らざるを得ません。
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