http://www.asyura2.com/18/senkyo246/msg/499.html
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6・12「米朝和解」以降も、表向きは北朝鮮との関係改善が進んでいない日本では、対北朝鮮制裁が緩み圧力がなくなれば、非核化も拉致問題解決も進展しないのではないかと騒ぐ識者もいる。(米国でもそういう論調がある)
一方で、安倍首相をはじめ政府メンバーは、「米朝和解」後も「国連安保理が制裁解除に向かうことはない。ポンペイオ長官は『完全な非核化まで制裁を解除しない』と明言した。G7でも理解を得た」と、北朝鮮にこれからも強い圧力が続くかのように説明している。
トランプ大統領も、6・12の記者会見で、「今は制裁をやめるときではない。核の脅威がなくなるまで制裁は続く」と表明した。その一方で、「中朝国境は緩んでいるようだが、それほどは緩まないだろう」とか「北朝鮮の核の脅威はほぼなくなった」とまで言っている。
トランプ大統領の発言は、「シンゾウのために制裁は続くと言ってやっているが、シンゾウはとくにかく早急に日朝国交正常化にメドを付けろよ」と言っているように聞こえる。
トランプ大統領は、安保理「北朝鮮決議」(俗に言う制裁決議)が残っていても、すっきりはしないだけで、北朝鮮に与える実質的な障害はそれほどないと考えている。
なぜなら、これまでも書いてきたが、06年から始まった累次の安保理「北朝鮮決議」は、米国が得意とするお馴染みの「核を利用した瀬戸際作戦」の一環であり、朝鮮半島問題を解決に向かわせようとしている米国と、それを知って追随している中露との“談合”を基礎に採択された決議だからである。
(わかりやすく一言で言えば、「番の制裁決議」である)
北朝鮮問題を包括的に論じている安保理「北朝鮮決議」を、制裁決議と限定的に呼ぶことがそもそもフェイクなのである。
ほとんど報じられていないが、決議の後ろのほうには、「北朝鮮国民の生活に悪い影響が及ばないように」という内容が明記されるとともに、関係諸国が平和的に解決をめざすことや北が核放棄・日米が対北朝鮮国交正常化を約束した05年9月の六者会合共同声明の履行に務めるよう要請されている。
今のところ最後の安保理「北朝鮮決議」は、昨年12月の火星15号試射に伴うものである。
この決議は、原油及び石油製品に対する厳しい供給制限が盛り込まれた最強と制裁と言われ、この制裁が完全に履行されれば北朝鮮の体制が崩壊する(息の根が止まる)とまで言われた。
しかし、6・12「米朝和解」を知っている我々は、決議が採択された昨年12月という時期を冷静に考えなければならない。さらに、最強の制裁と言われながら、北朝鮮の後ろ盾になってきた中国やロシアもあっさり決議の内容に合意した背景を。
遅くとも昨年8月から9月には間違いなく始まった今回の「米朝和解」につながる米朝の本格的協議は、昨年12月の時点ではほぼ最終ゴールにさしかかっており、その時点では、今後表立って進めるための細かい手順(流れ)を詰める状況にあった。
今年2月に南北双方で軍事境界線をまたぐ航空機の運航が行われたが、それに伴う南北間の航空管制取り決めは昨年12月中旬の時点ですでにまとまっていた。
今年元旦の金正恩委員長の平昌五輪に関する「代表団の派遣を含めて必要な措置を講じる用意があり、そのために北と南の当局が至急会うこともできる」と新年の辞で述べるに至った“前提”や“背景”として、水面下で進められてきた米朝・南北の協議があったのである。(中国や日本も協議の進行状況について大まかな情報を得ている)
だからこそ、金正恩委員長の新年の辞を受け取り組まれた南北高官級会談も、とんとん拍子に1月9日板門店で開催された。
これまでの例なら、会談の準備だけで南北が数ヶ月から半年かけて実務者レベルで協議される。(しかも、メンツに絡む微妙な対立で会談直前で破綻することも稀ではなかった)
多くの国家が否応なく絡んでくる6・12「米朝和解」のような歴史的な動きと合意が、今年前半のたった5ヶ月で仕上げられたと思っている人は、ボーッと生きているんじゃないとチコちゃんに叱られるだろう。
「米朝和解」は、そもそも、昨年8月といった近い過去ではなく、下地としては30年近く前から進められており、90年の金丸訪朝もその一環だった。
「制裁」の話に戻ろう。
まず、表での通商がまったくない米国の独自制裁は、ドル決裁などで不便はあるが、北朝鮮の経済活動にほとんど影響を与えない。
日本も、在日朝鮮人の本国への送金が北朝鮮に影響を与えるが、貿易は壊滅状態なのであまり影響を与えない。
北朝鮮に大きなダメージを与える「制裁」は、中国とロシアそして韓国のものである。
中国とロシアは、貿易と北朝鮮国民の労働力受け容れという生命線に関与している。加えて中国は、丹東と新義州をつなぐ石油パイプラインに原油などを供給する決定的な生殺与奪権を握っている。
韓国は、パククネ政権時代に表立った対北支援はなくなっており、今後、まずはケソン工業団地の再開などを通じて栄養剤を補給する役割を担う。
米国は少しだけ言及したが、ほぼ日本だけが、瀬取りなどの“制裁破り”を見つける活動に励み、関係国にクレームを付けたりした。
まず、瀬取りだけをもって安保理決議違反とは言えない。品目と総量の規制であり、北朝鮮にある方法で物資を与えてはならないという規制はないからだ。
北朝鮮制裁の基本は、石炭と鉄鉱石をベースに1、2品の追加鉱物そして海産物や衣類といったあまりに古めかしい北朝鮮からの輸入制限である。
核燃料向けのウラン関連製品、EV向けなどの電池で重要なコバルトなどのレアメタルは、ちゃんと対象から除外されている。
北朝鮮への輸出は、ミサイルや核兵器を製造するために使える工作機械などが制限されている。
昨年秋ころからけっこうくっきり見えてきた「制裁破り」は、
●石炭は、安保理決議でも認められているロシアの羅津港などからの積み出しに紛れるかたちで輸出
(参考)
昨年12月の安保理決議で、
「16.〈中略〉ロシアと北朝鮮の間の羅津・ハサン港及び鉄道事業を通じた、他国へのロシア原産の石炭の輸送についてのみ、適用されない」となっている。
●海産物は、輸出(輸入)ではなく、北朝鮮近海で中国漁船に“販売”
●衣類は、ケソン工業団地を使って、衣類の輸入ではなく北朝鮮に加工賃を支払うかたちでクリア
(ケソン工業団地及びケソン地域には韓国から電力が供給されており、ケソン工業団地には一時撤退時にミシンなどの機械装置が置かれたままになっている)
[参考記事]
北朝鮮、秘密裏に稼働か 南北事業の開城工業団地
【ソウル=山田健一】北朝鮮のインターネットメディア「メアリ」は6日、韓国と北朝鮮の経済協力事業で、昨年2月から稼働を中断している開城(ケソン)工業団地について「われわれがそこで何をしようとも、誰も関与すべきことではない」との論評を掲載した。韓国との協議なしに団地内の衣類工場を秘密裏に稼働させたことを示唆した。朝鮮通信(東京)が伝えた。
開城工業団地を巡っては、米政府系の自由アジア放送(RFA)が中国消息筋の話として「団地内の19の衣類工場をひそかに稼働させた」と報じていた。北朝鮮は稼働が外部に知られないために、工場の照明の光をカーテンで遮断するよう徹底しているという。
北朝鮮メディアは目的を「人民の生活向上のため」とした。RFAは稼働は6カ月以上におよび、輸出用の衣類製造が狙いとの見方を示す。ただ繊維類の輸出は国連安全保障理事会の制裁対象になっており、国内向けの衣類を製造している可能性もある。
同団地は南北境界の近くに立地。韓国企業が建て北朝鮮の労働者を雇って運営していた。北朝鮮の外貨獲得手段の一つで、中断前の生産額は年5億ドル(約565億円)超だったとみられる。核とミサイルの開発資金に使われているとの批判を受け韓国が中断を決めた。
[日経新聞2017年10月7日朝刊P.9]
北朝鮮の輸入に関しては面白のは、工作機械などが、米国の準同盟国でありUN(国連)には非加盟の台湾から給されていることだ。
平壌で開催される貿易フェアに台湾企業が数多く出展していることはよく知られている。台湾は、UN非加盟なので安保理「北朝鮮決議」に縛られない。
米国は、当然そのような取り引きを知っているが、ずっと放置してきたのである。
このように、「強力な制裁が効いたので北朝鮮は対話に応じざるを得なくなった」という日本政府の説明や日本のメディアが報じている強力な制裁措置という掛け声と制裁の実態は大きくかけ離れている。
安保理の「北朝鮮“制裁”決議」が、P5の談合で作られたということもあるが、そんな陰謀論的考察に頼らなくても、安保理の「北朝鮮決議」をきちんと読めば、いくらでも制裁緩和ができることがわかる。
最強最高で北朝鮮の息の根を止めると一部からは“喝采”された昨年12月の安保理「北朝鮮決議」(俗に言う制裁決議)の内容を簡単に説明する。
決議を読めば、制裁が名ばかりでほとんど効果がないことがわかる。
6・12を知っているものなら、そう遠からず制裁解除がなされることを見越して採択された制裁であることもわかるだろう。
[2017年12月UN安保理決議2397(昨年11月28日の弾道ミサイル発射に対する非難)]
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000325985.pdf
(1)原油供給制限
北朝鮮の息の根が止まると北朝鮮強硬派が勝手に喜んだ制裁の内容は、決議の項目4に規定されている。
強力で無慈悲と思われているが、まず、「専ら北朝鮮国民の生計目的のため」のものや「北朝鮮の核若しくは弾道ミサイル計画」などに関する過去の安保理決議と無関係のものは除くと禁輸の目的に限定がなされている。
北朝鮮国民の生活に必要なものや核ミサイルの開発製造に使われないものであれば、供給制限はないのだから、実質、何も制裁をしていないに等しい。
さらに、そう遠くない時期(今年11月まで)に制裁が解除されることを見越しているのか、「この禁止は、この決議の採択の日から12か月間及びその後は各12か月間、12か月間毎の総計が400万バレル又は525、000トンを超えない原油には適用されない」と規定している。(これは、核ミサイルに使われる可能性がある原油の話:無償の原油供給が150万トンほどある)
このようなことから、現時点について言えば、供給量をまったく気にすることなく、北朝鮮に原油を送ることができる。
(2)石油製品
決議の項目5に規定されているガソリンや航空燃料に関する制裁は、北朝鮮の国民生活や核ミサイル開発製造以外の用途に使われることを条件に、(この規定は原油より厳しい制限を意味する)
「2018年1月1日から12か月間及びその後は各12か月間、総量50万バレルまでの石油精製品(ディーゼル及びケロシンを含む。自国の領域を原産地とするものであるか否かを問わない。)の、〈中略〉北朝鮮による調達又は北朝鮮への直接若しくは間接の供給、販売若しくは移転には適用されない」
とあるから、規定の総量に達するまでは北朝鮮に供給を続けてもよいということになる。
(北朝鮮への供給に関して供給量の各段階で報告しなければならないという規定はある)
これも、6・12「米朝和解」を知っていれば、今年11月頃までに制裁が緩和もしくは解除されるのなら、現時点でほとんど気にすることなく石油製品を北朝鮮に供給できる決議であることがわかる。
(3)北朝鮮人労働者の受け容れ
決議8に、加盟国が北朝鮮国民を労働者として雇うことの規制が書かれている。
中国やロシアさらには欧州・中東などで働く労働者は、北朝鮮にとって重要な外貨獲得手段である。
この規制も、「この決議の採択の日から24か月以内に、当該加盟国の管轄権内において収入を得ている全ての北朝鮮国民及び海外の北朝鮮労働者を監視する全ての北朝鮮政府の安全監督員を北朝鮮に送還すること」というものだから、現時点でもまったく制裁効果がないものとわかる。
一方で、国連加盟国とりわけ北朝鮮に深い関わりを持つ六者協議参加国には様々な注意と義務が求められている。
(1)北朝鮮への人道支援
決議の項目25に、
「この決議により禁止されていない活動(経済活動及び協力、食糧援助及び人道支援を含む。)並びに北朝鮮の一般市民の利益のための北朝鮮における支援及び救援を実施している国際機関及び非政府組織の作業に悪影響をもたらす若しくはそれを制限することを意図するものではないことを再確認し、北朝鮮にいる人々の生活必需品を完全に提供する北朝鮮の一義的な責任及び必要性を強調する」
と規定されている。
経済活動や北朝鮮に対する支援を阻害しないよう求めるとともに、北朝鮮当局に軍事ではなく国民への必要物資供給を優先政策にするよう求めている。
(2)05年6月六者協議共同声明の合意事項履行
決議の項目26で、
「六者会合への支持を再確認し、その再開を要請するとともに、中国、北朝鮮、日本、大韓民国、ロシア連邦及びアメリカ合衆国によって2005年9月19日に発出された共同声明に定める約束(NPTの締約国の権利及び義務に留意し、NPTの全ての締約国が自国の同条約上の義務を引き続き遵守することが必要であることを強調しつつ、六者会合の目標が、平和的な方法による朝鮮半島の検証可能な非核化並びにNPT及び国際原子力機関の保障措置への北朝鮮の速やかな復帰であること、アメリカ合衆国及び北朝鮮が相互の主権を尊重し、平和裡に共存することを約束したこと、六者は経済協力を推進することを約束したことを含む。)並びにその他の全ての関連する約束への支持を改めて表明する」
と規定している。
重要なのは、「平和的な方法による朝鮮半島の検証可能な非核化並びにNPT及び国際原子力機関の保障措置への北朝鮮の速やかな復帰」とされていることだ。
昨年春のような軍事力を展開したかたちでの北朝鮮への圧力は、安保理決議違反なのである。
さらに、「アメリカ合衆国及び北朝鮮が相互の主権を尊重し、平和裡に共存することを約束したこと」と、今回の「米朝和解」を実現することを求めている。
そして、「六者は経済協力を推進することを約束したこと」も実行に移せと決議している。
最後に、「その他の全ての関連する約束への支持」とあるが、そのなかには日朝国交正常化も含まれている。
※参考
[05年9月六者会合共同声明内容]
1)北朝鮮は、すべての核兵器と核計画を放棄
2)北朝鮮は、核拡散防止条約及び国際原子力機関の保障措置に早期復帰すことを約束
3)米国は、北朝鮮に攻撃・侵略を行う意思がないことを確認
4)米国は、北朝鮮の核平和利用の権利を尊重して適当な時期に軽水炉提供問題を議論
5)米朝は、相互の主権を尊重、国交正常化のための措置をとる
6)日朝は平壌宣言に従って、懸案の解決を基礎として国交正常化のための措置をとる
7)6ヶ国は、適当な場で朝鮮半島の恒久的な平和体制について協議
これらの合意のうち、1)〜4)は既に履行されたが(4)は裏口からのようだが)、5)〜7)は未だ履行されていない。
米国は6・12で安保理決議を履行したかたちになっているが、日本は、未だ、安保理決議を履行していないのである。
(3)平和的外交的政治的解決
6・12「米朝和解」後でも、北朝鮮がCVIDに同意しそれに向けて動かなければ、トランプ米国は北朝鮮に軍事行動を仕掛けるかもしれないという“願望の寝言”を拡散している識者もいる。
しかし、安保理決議は項目27で、
「朝鮮半島及び北東アジア全体における平和と安定の維持が重要であることを改めて表明し、事態の平和的、外交的かつ政治的解決の約束を表明し、対話を通じた平和的かつ包括的な解決を容易にするための理事国及びその他の国による努力を歓迎するとともに、朝鮮半島内外の緊張を緩和するための取組の重要性を強調する」
と決議している。
たとえ、北朝鮮がCVIDに合意しなくとも、UN加盟国なかんずく安保理常任理事国なら、安保理決議を遵守しなければならず、軍事行動を起こすなどもってのほかなのである。(戦後の米国は国際法におかまいなしで軍事行動を起こしてきたこともあるが)
※ 参考
朝鮮半島問題についてのこのような平和的政治的解決と05年9月六者会合共同声明履行の要請は、06年7月の安保理決議から一環として行われている。
「2006年7月UN安保理決議1695(ミサイル発射実験に対する非難))」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/abd/un_k1695.html
「五.特に北朝鮮に対し、自制を示し緊張を悪化させるおそれのあるいかなる行動も差し控えること並びに、政治的及び外交的努力を通じ、不拡散上の懸念に係る決議に基づく取組みを継続していくことの必要性を強調する。」
「七.六者会合を支持し、その早期の再開を要請し、すべての参加者に、平和的な方法による朝鮮半島の検証可能な非核化を達成し、かつ、朝鮮半島及び北東アジア地域の平和と安定を維持するため、2005年9月19日の共同声明の完全な実施について努力を強化するよう要請する。」
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