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金権腐敗政治象徴としてのもりかけ事案
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2018年6月16日 植草一秀の『知られざる真実』
昨年来、国政の中心審議事項とされてきたのは森友・加計疑惑である。
安倍政権の擁護者は、いつまでもりかけ問題ばかりを追いかけるのかと言うが、その言葉はもりかけ問題が重要ではないとの判断に基づくものである。
しかし、これらの事案は安倍政治の本質にかかわる重大な事案である。
政治を私物化し、近親者に便宜供与を図る、利益供与を図る行為は、もっとも古典的で、もっとも根源的な政治腐敗事案である。
しかしながら、真相の全容解明と、責任ある当事者の責任追及が行われていない。
真相解明と責任処理が完了しているのに、なおこの問題が論議されているというなら、「いつまでやっているのか」との批判も正当だろう。
しかし、真相は解明されておらず、責任処理もまったく行われていない現状を踏まえれば、この段階で問題に幕引きすることの方がはるかに重大な問題である。
この問題は安倍首相自身の進退に関わる重大問題であり、そのために、安倍首相を擁護しようとする勢力が、責任問題に発展させずに幕引きを図るために「いつまでやっているのか」の言説を意図して流布しているのだ。
これらの問題で安倍内閣は総辞職するべきである。
政権を担う資格はない。
真相解明もせず、責任を明らかにもしない安倍内閣が問題なのであって、問題を追及する方がおかしいという理屈は成り立たない。
これらの事態が進行するなかで、メディアは何をしてきたか。
5月の連休前に安倍内閣は進退窮まった。
この局面でメディアは情報空間を別の話題で占有させた。
TOKIOのメンバーの強制わいせつ事案が情報空間を占拠した。
警察当局とNHKがタイミングを計って表面化させた事案である。
この話題が峠を越えると、次に情報空間を占拠したのが日大アメフト部の危険タックル問題だ。
さらに、和歌山の資産家急死問題をNHKが大々的に報道し続けた。
昨年から今年にかけては日馬富士暴行事件が情報空間を占拠した。
つまり、もりかけ疑惑に光が当たらぬようにメディアが他の話題に人心を誘導したのである。
しかし、もりかけ疑惑は何も解消していない。
時価10億円の国有地が実質200万円で払い下げられることを刑事事件として立件しないなら、行政は完全な無法地帯と化す。
公文書の大規模な改竄、虚偽公文書作成が無罪放免にされるなら、刑法そのものが意味を失う。
北朝鮮が人権侵害国家だと批判する者がいるが、日本は他を批判できる立場にない。
立憲主義が否定され、法の支配が否定されて、ただひたすら独裁権力が横暴を振るっているというのが日本の現状である。
この現状を、このまま放置してしまってよいのかどうか。
これを判断するのは、日本の主権者、市民である。
市民が、この程度の政治腐敗にいちいち目くじらを立てるのはどうか、と考えるなら、国はその意思に沿う、薄汚れたものになるだろう。
それはそれで、日本の主権者の判断と選択によるものである。
日本の危うさは、日本の主権者の一部が、このような感覚麻痺、堕落の方向に流されている点にある。
加計疑惑とは、首相が「腹心の友」だとする人物が経営する学校法人に、通常の適正な行政プロセスを歪めて獣医学部の新設を認可したという事案である。
単に認可しているだけではない。
100億円単位の補助金が政府から拠出されている。
明治政府の金権腐敗体質も、その原因となったのは長州族である。
この金権腐敗に立ち向かったのが初代司法卿の江藤新平だった。
江藤は冤罪の抑止を重視する人権尊重派の人物であった。
この江藤と対峙したのが大久保利通である。
大久保は人権よりも国権を優先した。
明治6年政変により下野した江藤新平は維新政権によって除族の上、江戸刑法によって処刑された。
権力を独占して江藤を処刑したのが大久保利通である。
この明治6年政変を境に、長州が主導する金権腐敗政治が温存され、現代の長州金権腐敗政治に引き継がれているのである。
この国がこのまま腐敗し切って没落してしまうのか、それとも日本の主権者=市民が覚醒して、腐敗した日本政治を刷新するのか。
運命を分けるのは日本の主権者の覚醒と行動である。
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