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「平和と安定」は軍産複合体にとっての悪夢
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2018年6月15日 植草一秀の『知られざる真実』
平和と安定は市民にとっての幸福だが、戦争産業にとっての悪夢である。
和平について語るとき、この根本を忘れてはならない。
トランプ大統領と金正恩委員長による歴史的な首脳会談が実施されたことについて、共同宣言にCVID=complete, verifiable, and irreversible dismantlement=「完全な、検証可能で、不可逆的な核廃棄」
が盛り込まれなかったことを非難する言説が流布されているが、この主張そのものが和平の成立を妨害するためのものであることを認識しておく必要がある。
日本は憲法で「戦力の不保持」を明記しておきながら、安倍内閣は軍備増強にひた走っている。
朝鮮半島の平和と安定そのものが、日本の軍備増強の必要性に対する根本的な疑問をもたらすものであることから、安倍首相も小野寺防衛相も必死の形相で軍備増強の必要性が低下しないことを強弁している。
この事情は米国の軍産複合体にとっても、まったく同じである。
軍産複合体の「飯の種」は戦争である。
「平和と安定」こそ、軍産複合体にとっての悪夢なのである。
朝鮮半島の平和と安定を実現するには、北朝鮮の金正恩委員長と米国のトランプ大統領が直接会話をして、和平を前進させるしかない。
「圧力」の強化が北朝鮮の対応の硬化をもたらすことは、これまでの歴史が証明してきたところである。
そして、北朝鮮は単独で抵抗を示してきたのではなく、中国、ロシアが後ろ盾になって抵抗を続けてきた。
簡単にねじ伏せられる相手ではないのである。
この問題に対して、米国のトランプ大統領が積極果敢な行動を示した。
この点に対する評価をしないのは、メディアが巨大資本の意向によって支配されているからである。
北朝鮮には北朝鮮の立場と主張がある。
この点を理解しなければ、外交交渉など成り立ちようがない。
相手が絶対に呑めない条件を突き付けて、この条件を呑めなければ軍事行動に踏み込むとするのは、「交渉」でなく「恫喝」である。
日本が日米戦争に突き進んだことについて、米国からの「恫喝」があったために日本はやむなく戦争に突き進んだのだと主張している者が、北朝鮮に対して一方的な要求を突き付けて、これを呑まない限り和平はないと主張していることが興味深い。
拉致被害者の家族は、これまでの安倍政権による「圧力一点張りの外交姿勢」に根本的な疑問を抱いている。
第2次安倍内閣が発足して5年半の時間が経過したが、この間に拉致問題は「1ミリも前進してこなかった」のだ。
その、最悪の状況に大きな変化を引き起こしたのは、韓国の文在寅大統領である。
文大統領の「対話路線」に対して、強硬な批判を浴びせてきたのが安倍首相である。
本年開催された平昌五輪では、韓国の文在寅大統領が積極果敢な行動を示し、南北朝鮮の「対話」機運を一気に上昇させた。
これを契機に南北の対話が急進展し、それが米朝首脳会談開催という偉業をもたらす伏線になった。
この間、日本の安倍首相は一貫して批判と非難に満ちた言動を続けてきたのである。
トランプ大統領は「対話」を軸に北朝鮮の譲歩を引き出し、北朝鮮に対して体制保証を与える代わりに、朝鮮半島の非核化を求める姿勢を鮮明に示した。
同時に米国と北朝鮮との間の「戦争状態」にも終止符を打つ方向性を示している。
トランプ大統領のこの行動が絶賛されないのは、この方法が、現実に朝鮮半島の平和と安定をもたらしかねない潜在力を有するからなのである。
つまり、朝鮮半島の平和と安定を絶対的に敵対視する勢力が厳然と存在するのである。
米国の軍産複合体にとって、朝鮮半島の平和と安定は悪夢以外の何者でもない。
安倍政権が軍事支出増大に傾斜しているのは、軍事支出増大が政治権力仁とっての巨大利権を意味するからに他ならない。
軍事支出における「価格」は市場価格ではない。
人為的に決定される「法外価格」であって、その価格のかなりの部分が政治家への「キックバック資金」になる。
だからこそ、利権政治勢力は軍事支出増大を追求するのである。
こうした邪(よこしま)な勢力が「平和と安定」を敵対視している。
こうした本質を正確に理解せずに、トランプ大統領が主導する和平交渉の進展に対するメディアの攻撃的な姿勢を理解することはできない。
主権者はメディアによる「印象操作」に誘導されてはならないのだ。
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