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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30454820U8A510C1000000/
「6月12日に決まった米朝シンガポール会談の隠れた陰の主役は習近平(中国国家主席)だ。それは訪日した李克強(中国首相)が日本メディアへの感謝を述べるほど愛想良く振る舞ったことにも関係ある」
中国の外交関係者の言葉である。今回の李克強訪日は当初予定より1日長い3泊4日にもわたる長い旅だった。
訪日最終日の5月11日、李克強は共に北海道入りしていた首相の安倍晋三と朝からずっと一緒だった。札幌パークホテルでの「日中知事省長フォーラム」、苫小牧のトヨタの自動車部品工場視察、恵庭での昼食、そして午後に特別機で帰国の途に就く直前までである。驚きの密着だった。
■李克強首相、26年ぶり訪日の戦略的な意味
「最後に日本を訪問してから26年間もたった」
李克強は自ら、今回の訪日が26年前の1992年以来だと明かしている。思い返せば、その頃、中国共産党政権は、学生の民主化運動を武力鎮圧して多数の犠牲者を出した89年の天安門事件の影響で国際的に孤立していた。経済的にも極めて苦しい状況にあった。
そこで中国は、懸案だった日本の天皇陛下の中国訪問という一大イベントの実現にがむしゃらに動いた。何と言っても日本はアジア唯一の主要7カ国(G7)メンバーである。日本との交流正常化を突破口に先進国が主導する国際舞台への復帰を目指したのだ。
この中国の戦略は大当たりする。92年、中国の政府、民衆はこぞって天皇陛下を大歓迎し、温かく迎えた。日本を狙い撃ちにした一連の経緯は、長く中国外交を仕切り、副首相まで務めた故銭其●(たまへんに探のつくり)が回顧録で明かしている。
同じ92年、懐柔戦略の一環としてまだ30代後半だった李克強も来日する。中国青年指導者代表団の団長としてだった。李克強は若き日本政界の実力者だった小沢一郎の岩手の自宅にホームステイもしている。
首相になった李克強の今回の訪日にも26年前と似たように極めて戦略的な意味があった。同じく日中韓首脳会談のため訪日した韓国大統領、文在寅より格上の公賓としての訪問であり、天皇陛下も懇談された。
日本メディアを前に愛嬌(あいきょう)を振りまいている。中国国務委員兼外相の王毅が、過去に見せた日本への“つっけんどん”で厳しい顔とはまるで違っていた。
李克強は共産党内序列2位とはいえ、国内政治上、習近平にひれ伏している。外交上の権限もこの3月、異例の形で国家副主席に就いた王岐山に及ばない、との見方もある。それでも今回は対日外交の顔としての役割を十分に果たした。
■「中国外し」を強く警戒
では、李克強の任務は何だったのか。それは場所がシンガポールに決まった北朝鮮の労働党委員長、金正恩とトランプの会談と密接に絡んでいる。安倍とトランプは頻繁に会談するなど近い関係にある。トランプは6月12日の米朝会談後も日本に立ち寄る方向だ。
もし金正恩が中国の仲介抜きで一気にトランプに接近して米企業を直接、北朝鮮内に引き入れ、さらに安倍とも話せるようになってしまうとどうなるのか。北東アジアを中心とするの外交の構図が激変してしまう。それは中国にとって好ましい状況ではない。中国は北朝鮮と日本の急速な接近まで先回りして警戒しているのだ。
朝鮮半島の将来を決める枠組みが米朝、もしくは米と南北で動くなら中国は蚊帳の外に置かれてしまう。これは現実的に起こりうる。先の南北首脳会談でも、米と南北による3者の枠組みが、中国を入れた4者よりも先にうたわれている。
実際、つい2カ月前、李克強は年に一度の中国内での記者会見で、朝鮮半島情勢に関して珍しく本音を口にした。「(朝鮮)半島は我々(中国の)近隣にある。直接、中国の利益に関わる」。それは「中国外し」へ危機感表明でもあった。
米朝の急接近と同時に、トランプの随伴者として安倍が登場してくると習近平にとってはもっと面倒な状況が生まれる。
そこで李克強を選んで日本へ“お遣い”に出すことにした。決定時期はちょうど李克強が記者会見で危機感を示した3月だ。中国は「実は日本とも話せる関係にある」と国際的に訴えたかった。そこには外交を多角化しておく保険の意味もあった
同じ頃、習近平は金正恩の訪中受け入れにも動いた。習近平のメンツが潰れる国際会議の開催日をわざわざ選んで弾道ミサイルを発射し、核実験までした金正恩へのわだかまりはひとまず棚上げした。こちらも「中国外し」の回避という大きな目的のためだった。
一方、習近平は6月12日の米朝シンガポール会談の後、北朝鮮を初めて訪問する日程を検討している。先に北京、そして大連へ金正恩がわざわざ足を運んだ電撃的な連続訪問の答礼という名目になる。
金正恩とトランプの間で物事が進み過ぎ、中国の利益が損なわれるのを防ぐには本来、習近平自身がシンガポールに乗り込むのが最善である。トランプ、金正恩、習近平の会談にするのだ。そこに文在寅がいてもよい。それなら金正恩の後ろ盾として振る舞えるほか、トランプと米中経済摩擦を巡る直談判も可能になる。
だが、これは今のところ難しい。トランプと金正恩は、共に自分がシンガポールの大舞台の主役だと思っている。習近平にまで花を持たせる理由に乏しい。それなら習近平にとっては直後に平壌に乗り込むのが次善の策になる。
■「歴史問題」を追及せず
李克強は今回の訪日で、中国が長くこだわってきたいわゆる「歴史認識問題」、尖閣諸島の問題などを深く追及しなかった。それより大きな戦略的な利益を優先した。さらに拉致をはじめとする諸問題解決という日本の立場に一定の理解と支援も表明したのである。
李克強はいわば、米朝シンガポール会談の陰の主役を自任する習近平を引き立てる脇役をきちんと演じた。
こうした複雑な駆け引きは当面、続く。日本としては力学を十分に理解したうえで、利用すべきだ。年内を見込む安倍の公式訪中、来年の習近平のトップとしての初来日、そして懸案の拉致解決を含む北朝鮮との交渉……。これからが胸突き八丁である。(敬称略)
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