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アベノミクス、3大リスク同時発生の可能性…安倍内閣総辞職・米国のイラン攻撃・債券下落
http://biz-journal.jp/2018/05/post_23199.html
2018.05.01 文=斎藤満/エコノミスト Business Journal
安倍晋三首相(左)(写真:AFP/アフロ)
今年の1月まで連騰記録をつくるなど好調を維持した株式市場が、2月以降はにわかに不安定になり、東京市場も1月の高値をいまだに下回る苦戦を余儀なくされている。米国発の長期金利上昇、ドナルド・トランプ大統領による貿易戦争などが重石となっているが、マクロの経済環境や株式需給は悪くない。少なくとも、まだ「晴れ」領域にある。
4月27日に公表された日本銀行のいわゆる「展望リポート」によると、日銀は2018年度の実質成長率を1.6%と前回1月の1.4%から引き上げ、19年度も0.7%から0.8%に引き上げた。半面、物価見通しは18年度を1.4%から1.3%に引き下げ、引き続き大規模緩和を続ける方針を示した。株式にとって、日本のマクロ経済環境は引き続き「晴れ」となる。
日本経済に大きな影響を持つ米国経済はFRB(連邦準備制度理事会)が過熱を懸念するほど好調で、これを反映して長期金利が一時3%台まで高まった。この金利上昇が米国株には重石となっている面があるが、日本経済から見れば輸出市場として好調を続けている。3%まで上昇した長期金利も実体経済においてはまだ低すぎるくらいで、これが米国経済を圧迫する度合いは無視できる。
減速が懸念された今年1〜3月の米国GDP(国内総生産)も予想を上回る年率2.3%成長となり、この1年では年率2%台後半となり、期待インフレ率も2%台となっている。つまり、実体経済の面から見れば10年国債利回りは4%台でもおかしくない。現在の3%前後の金利水準は、今の米国経済の実力からすると決して圧迫要因ではなく、まだ上昇余地が少なくない。
この好調な米国経済を受けて、為替市場では一時の円高懸念が後退し、ドル円は大型連休前に109円台まで戻してきた。これは企業が想定する円レートよりもやや円安水準にあり、このレベルなら企業収益にはプラス要因と見られる。マクロ経済は引き続き良好な環境が見込まれる。
ミクロ面についても、たとえば足元の日経平均株価では、そのPER(株価収益率)が13.12倍(4月25、26日)で、平均的な水準と見られる14〜16倍の水準より、まだかなり低い。仮にPERが15倍くらいに上昇するとすれば、日経平均株価は2万5000円前後になる計算だ。調整を要するほど株価が高すぎるわけではない。
企業決算も、3月までの円高の影響で利益が下振れした企業も見られるが、ここまでは全般に良好な内容となっている。つまり、マクロとミクロの両面から、経済環境は株式市場にとって当面「晴れ」の領域が広がっていることになる。しかし、そのなかでいくつか「雷雲」が発生しつつあり、その影響が一部に出始めているだけに、今後どう広がるのかは注意が必要だ。
■米国長期金利の市場攪乱
雷雲のひとつが、米国で発生した長期金利の上昇だ。前述のように、これが米国の実体経済に与える影響は軽微で、30年の住宅ローン金利が昨年のボトムに比べて0.6%あまり高くなっているが、住宅建設への影響はまだ限定的である。むしろ、長期金利の急激な上昇が債券価格の下落を通じて投資家にリスクを取りにくくしている面がある。
米国長期金利の動きには、決算期前で動きにくい日本の機関投資家を狙った相場崩しや、長短金利差のフラット化を狙ったスプレッド売買で攪乱される面もあり、短期的にはブレが大きくなる面がある。しかし、これらの短期攪乱要因を除いても、昨今の米国では長期金利を押し上げやすい力が強まっている。
つまり、好調を通り過ぎて「過熱懸念の米国経済」が意識されるようになった。そこには、さらなる金利上昇のエネルギーが備わっている。主犯は、供給制約が問題になる米国経済の下で大型減税などの財政需要を追加したトランプ大統領だ。
FRBは、従来の「中立水準」(政策金利で3%弱)まで金利を戻す正常化にとどまらず、これを超えた、より引き締め的な水準までの利上げを視野に入れ始めた。そして、昨年10月以降、段階的にスピードアップするかたちでFRBの保有債券を圧縮している。これは「量的引き締め」で、3カ月ごとに売却規模を月に100億ドルずつ大きくすることとしている。現在は月に300億ドルの債券売却を行い、金利を押し上げている。
前述のように、実体経済からすれば4%以上でもいい米国金利を低く抑えていたFRBが、その蓋を外してきているため、金利はまだ上昇するのが自然だ。そうなると、金利裁定を通じて米国株にも重石となるほか、米国などの金融緩和の下で債務を拡大してきた新興国が打撃を受け、これから通貨安、株安、金利高により、債務危機に陥るところが出てくる懸念がある。
■イラン核合意のゆくえ
次は、中東上空に雷雲が発生した。トランプ大統領は5月12日までにイランへの経済制裁を再発動するかどうかを決断する。再発動すれば、国連常任理事国にドイツを加えた6カ国によるイラン核合意から米国が離脱することになる。先にフランスのエマニュエル・マクロン大統領が訪米してトランプ大統領を説得したが、その気持ちは変わらなかったようだ。
トランプ政権は新たにマイク・ポンペオ国務長官、ジョン・ボルトン大統領補佐官を得て、対イラン強硬路線を採る体制だ。北朝鮮には対話型交渉を進める一方で、イランに対しては盟友イスラエルの防衛の観点から、攻撃するプランを持っている。先のシリア攻撃は、背後にいるイランやロシアをあぶり出し、イラン攻撃への前哨戦と位置づける見方もある。
米国・イスラエルによるイラン攻撃の可能性が浮上すると、原油価格の一段高、中東での地政学リスクを意識した株売り、リスク・オフの空気が広がる可能性がある。これは、間もなく判明する。
■永田町上空に雷雲発生
さらに、東京は永田町上空に突然雷雲が発生した。「モリ・カケ」問題から自衛隊の日報隠蔽、セクハラ問題と、一連の不祥事で安倍晋三内閣の支持率が低下し、一部の調査では30%を割り込んでいる。国会は野党の委員会欠席で空転、業を煮やした与党幹部が「解散だ」で脅しをかけるも、自民党長老から強く批判され、解散カードも切りにくくなって安倍政権が窮地に立たされた。
頼りの外交も、期待した日米首脳会談は日米蜜月を演出できたものの、北朝鮮や通商問題で成果を挙げられず、起死回生とはならなかった。その上に、日本が蚊帳の外に置かれたまま、朝鮮半島は和平に向けて歴史的な展開を見せ始めた。日本が入り込む余地はいよいよなくなり、拉致問題解決への期待も不確定となった。
当面のカギを握るのは、麻生太郎財務大臣と自民党の二階俊博幹事長だ。財務省批判が強まるなかで、麻生財務大臣ががんばり続けられるか。彼が辞任に追い込まれると安倍首相にとっては大きな打撃となり、自身も辞任に追い込まれる懸念が高まる。
もうひとりが二階幹事長だ。彼は衆議院解散を否定している。首相自身が「信なくば立たず」と言っているのであれば、信認を失った政権に幹事長が「引導」を渡す可能性がある。
急遽政局となり、安倍内閣総辞職ともなれば、安倍ディールで株買い、円売りをしてきた投資家は、一旦仕切り直しとなる可能性がある。自民党政権自体が崩れるわけではないが、アベノミクスに乗ってきた投資家には一旦巻き戻しを誘う要因にはなる。
経済が好調ゆえの「雷雲」も含め、随所に黒い雲が出始めた。落雷に当たってけがをしないよう、心の準備はしておいたほうがよさそうだ。
(文=斎藤満/エコノミスト)
アベノミクス、3大リスク同時発生の可能性…安倍内閣総辞職・米国のイラン攻撃・債券下落 https://t.co/yjjf1oDCOC @biz_journalさんから (これはすごい。)
— 憲法20条を考える会 (@M4LsrLDyI2TIbaX) 2018年5月1日
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