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2018/04/17 12:03
<田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)
3月2日の朝日新聞の報道から始まった「安倍政権撲滅キャンペーン」はいまだ続行中だが、現段階でまとめられることと批判を書いておきたい。
まず問題の局面は三つに分かれる。「森友学園をめぐる財務省の文書改ざん」「自衛隊イラン派遣時の日報問題」「加計学園に関する『首相案件』メモ」である。これにおまけとして「安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相などの発言や態度」「福田淳一財務事務次官のセクハラ疑惑」などが挙げられる。
こう列挙するといろいろな話題があったが、安倍内閣に総辞職に値するほどの責任があるかといえば、よほど政治的な思惑がない限り、答えはノーであろう。
もっとも、「安倍政権撲滅キャンペーン」の一番の狙いは、今秋に行われる自民党総裁選での安倍首相の3選阻止だろう。そのためには、一撃で辞任に値するほどの責任など必要はない。「小ネタ」を何度も繰り出して波状攻撃をかけていけば、それだけ世論は安倍政権への支持を下げていく。これがおおよそ、反安倍陣営の描いているシナリオではないだろうか。
事実、連日のようにテレビや新聞では、安倍政権への批判が盛んである。今のところ、反安倍派の狙いはかなり当たっており、言い換えれば視聴者や読者に安倍批判報道が好まれていることを意味している。何せ、米英仏によるシリア空爆という国際的な大ニュースよりも、日本の報道番組が上記の五つのニュースに割く時間の方が圧倒的に長い。
そのことだけで、いかに「安倍政権撲滅キャンペーン」がうまくいっているかを端的に表している。もちろんあらかじめ明言しておくが、そのような事態を好意的に評価しているわけでは全くない。むしろ、真に憂うべき状況なのである。
さて、上記の五つの問題の現状について簡単にみていく。まず、「森友学園をめぐる財務省の文書改ざん」である。森友学園問題は、簡単にいうと財務省と学校法人「森友学園」(大阪市)をめぐる公有地売却に関係する問題であり、その売却価格の8億円値引きに安倍昭恵首相夫人が関わっていたかどうかが焦点である。現状ではそのような事実がないばかりか、安倍首相自身が関与したという決定的証拠もないのである。
ただし「反安倍的な見解」によると、「関与」の意味が不当なほど拡大解釈されてしまっている。例えば、文書改ざんでいえば、財務省の文書には森友学園前理事長の籠池泰典被告と近畿財務局の担当者の間で、昭恵夫人の名前が出たという。昭恵夫人の名前が籠池被告の口から出ただけで大騒ぎになったのである。
ところが、それで財務省側が土地の価格交渉で何らかの有利な働きかけを森友学園側にしたという論理的な因果関係も、関係者の発言などの証拠も一切ない。それでも、印象報道の累積による結果かどうか知らないが、筆者の知るリベラル系論者の中には、「首相夫妻共犯説」のたぐいを公言する人もいて、老婆心ながら名誉毀損(きそん)にならないか、心配しているほどである。
また、文書改ざん自体は、筆者は財務省の「ムラ社会」的な体質が生み出したものであると発覚当初から批判している。ただし現在、佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官ら関係者の立件を検察側が見送るとの報道が出ている。だが、法的には重大ではないとはいっても、財務省の改ざん行為が国民の信頼を大きく失墜させたのも確かだ。
政府側は、この機会に財務省改革を進めるべきであろう。識者の中でも、ブロックチェーン導入などによる公文書管理の在り方や、歳入庁創設に伴う財務省解体、また消費増税の先送りなどが議論されている。
だが、野党側やマスコミには政権側への責任追及が強くても、一方で財務省への追及は全くといっていいほど緩い。なぜだろうか。それは森友学園問題も文書改ざんも、あくまで安倍政権を降ろすことが重要であり、そのための「持ち駒」でしかないからだ。だからこそ、財務省改革など、多くの野党や一部マスコミの反安倍勢力には思いも至らない話なのだろう。
ちなみに、文書改ざんについて、麻生財務相や安倍首相の責任を追及し、辞任を求める主張がある。確かに、麻生氏が財務省改革について消極的ならば、政治的な責任が問われるだろう。その範囲で安倍首相にも責任は波及するが、あくまで今後の政府の取り組み次第である。とはいえ、官僚たちが日々デスクでどんな作業をし、どんな文書を管理し、どんな不正をしているかすべて首相が知っていて、その責任をすべて取らなければいけないとしたら、首相が何人いても足りない。今、安倍首相に辞任を迫るのは、ただのトンデモ意見なのである。
さて、「自衛隊イラク派遣部隊の日報問題」は安倍政権に重大な責任があるのだろうか。そもそもイラク派遣は2003年から09年まで行われており、第2次安倍政権発足以前の話である。日報そのものも、小野寺五典防衛相が調査を指示して見つかったという経緯がある。確かに、この問題は防衛省と自衛隊の間の関係、つまり「文民統制」にかかわる問題である。
だが、日報が現段階で見つかった過誤を、安倍首相の責任にするのは論理的にも事実関係としても無理がありすぎる。どう考えても、第一に日報を今まで提出しなかった自衛隊自体の責任であろう。この問題も今後の調査が重要であり、また文書管理や指揮系統の見直しの議論になると思われる。
この問題についても、リベラル系の言論人は「小野寺防衛相は責任をとって辞任せよ」という珍妙な主張をしている。文書の存在を明らかにした大臣がなぜやめなければいけないのか、甚だ不可思議だが、反安倍の感情がそういわせたのか、あるいは無知かのいずれかとしか思えない>
以上田中秀臣氏が雑誌に掲載された論評を長々と引用した。この後も細々と論評は続くのだが、いわゆる「モリ カケ スパ」疑惑などが野党によるいかに的外れの政局化するための「疑獄」かを縷々述べている。田中氏に言わせれば「モリ カケ スパ」疑惑は安倍政権を葬るためだけが目的化したマスメディアと野党のつまらない策動でしかない、ということのようだ。
いや、まさしくその通りだ。私がこのブログで「モリ カケ スパ」疑惑を書き連ねるのも安倍自公政権を葬るためでしかない。もっと正直に言えば「モリ カケ スパ」疑惑は安倍政治を葬るための道具でしかなく、安倍氏がいつまでも政権の座に居座ることが日本の国益と国民の利益にならないと判断しているから、「モリ カケ スパ」疑惑を梃子にして政権を崩壊させようとしているに過ぎない。
安倍氏による五年有余の政治は日本の戦後立憲政治を葬った。それまで自民党の各政権が踏襲してきた憲法解釈の則を越えて、戦後日本の政治が踏み込んではならない領域まで安倍氏が憲法を無視して踏み込んだ。
しかし一応国会の多数決という民主的な手法によって「戦争法」を成立させ、一見民主的な手法で「共謀罪」を成立させた。それに特定秘密保護法という戦後日本政治の歴史をすべて覆る大罪を犯した安倍政権を私は許し難いと激しい怒りを覚えている。だが、国会という日本の最高議決機関で議決された法律に一日本国民は抗する術がない。
本来なら最高裁判所が「違憲立法」だという談話なり警告を発すべきだった。しかし日本の司法当局は米国ポチの政権の番人に成り下がっている。
おかしな理屈だが、安倍自公政権は合法的に違憲立法を行い、合法的に自衛隊を海外の紛争に参戦できる「憲法違反」の途を開いた。まさしく「無理が通れば道理が引っ込む」事態を招来している。
民主主義は圧倒的多数の馬鹿が少数の賢者を蔑ろに出来る制度でもある。かつてヒトラーが民主的にワイマール憲法を停止したのと同じ手法だ。
これほどの国家の危機に際して、民主的な手法で安倍政権を倒すのが困難なら、道義的な責任を問うてでも倒すべきだろう。たとえ安倍氏が「モリ カケ スパ」疑惑に全く関わっていなかったとしても、時の最高責任者として責任を負うべきだ、という理屈で追い詰めている。そのどこが悪いか、と田中秀臣氏に聞きたい。
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