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森友問題・改ざん前文書を精読したら見えてきた「すべての根源」・・・ 森友側からの脅しと、財務局の改竄を見落とした会計検査院
https://gansokaiketu-jp.com/newsindex3-naiyou-4.htm#2018-03-23-%E6%A3%AE%E5%8F%8B%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%83%BB%E6%94%B9%E3%81%96%E3%82%93%E5%89%8D%E6%96%87%E6%9B%B8%E3%82%92%E7%B2%BE%E8%AA%AD%E3%81%97%E3%81%9F%E3%82%89%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%80%8C%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%81%AE%E6%A0%B9%E6%BA%90%E3%80%8D%E3%83%BB%E3%83%BB%E3%83%BB %E6%A3%AE%E5%8F%8B%E5%81%B4%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E8%84%85%E3%81%97%E3%81%A8%E3%80%81%E8%B2%A1%E5%8B%99%E5%B1%80%E3%81%AE%E6%94%B9%E7%AB%84%E3%82%92%E8%A6%8B%E8%90%BD%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E4%BC%9A%E8%A8%88%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E9%99%A2%E3%80%80%E3%80%80
森友問題・改ざん前文書を精読したら見えてきた「すべての根源」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54957?page=3
長谷川 幸洋ジャーナリスト
東京新聞・中日新聞論説委員
籠池理事長が押し切った
森友学園問題が再燃している。財務省の公文書改ざんは論外だ。だが「安倍晋三首相が小学校建設に特別な便宜を図ったのではないか」という本来の疑惑は皮肉にも、改ざん前の文書が明らかになったことで、逆に潔白が証明されつつある。改ざん前文書と会計検査院報告の核心部分を読んでみよう。
森友学園問題は本質的に異なる2つの問題がごちゃまぜになって報じられている。1つは公文書改ざん問題だ。国会は3月27日に財務省理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官の証人喚問をすることを決めた。
佐川氏は刑事訴追を受ける可能性があることを理由に「だれが、なぜ、どのように改ざんしたのか」など肝心な部分で証言を拒否する可能性がある。だが、麻生太郎財務相兼副総理は会見などで「理財局の一部の職員によって書き換えられた」「佐川氏が責任者」と認めている。
細かい事実関係はどうあれ、大筋は「『森友側と価格交渉はなかった』『関係文書は廃棄した』などと語った佐川氏の国会答弁と辻褄を合わせるために、理財局と近畿財務局が組織を挙げて文書を書き換えた」という話ではないか、と私は思う。
いずれにせよ、国会質疑と検察当局の捜査によって真相は明らかになるだろう。
改ざん問題とは別に、森友学園には本来の疑惑があった。それは「安倍首相が森友学園に特別な便宜を図っていたのではないか」という問題である。公文書改ざん問題でも、改ざん前文書に首相の昭恵夫人の名前があったことを理由に安倍政権を追及している。
だが、文書にある昭恵氏の「いい土地ですから、前に進めてください」という発言は近畿財務局の担当者が本人から聞いた言葉ではない。森友学園側(おそらく籠池泰典理事長)が「そう言っていた」という伝聞にすぎない(改ざん前文書=以下同じ=の40ページ。http://www.asahicom.jp/news/esi/ichikijiatesi/moritomo-list/20180312/all.pdf)。
安倍首相は昭恵夫人の言葉自体を「そんなことは言っていない」と否定している。
改ざん前文書に昭恵氏の名前と伝聞による発言があったというだけでは、首相の関与を証明するには不十分だ。新たな証言や証拠が出てくれば別だが、公表された改ざん前文書によって「首相の便宜供与が証明された」とは、とても言えない。
それどころか、改ざん前文書を読むと、財務省近畿財務局と国土交通省大阪航空局が籠池氏に押しまくられていた事情が鮮明に浮かび上がっている。
問題の経緯を振り返ると、もともと問題の土地にはコンクリート片や古い上下水管、生活ゴミなどが地中に埋まっていた。土壌汚染もあった。森友学園はそれを国側の費用負担できれいにしたうえで、いったん土地を借り受けたが、いざ小学校を建設する段になって「新たなゴミが見つかった」と言い出した。2016年3月である。ここから話がこじれていく。
学園側は国に対して「小学校建設の工期が遅延しないよう国による即座のゴミ撤去」を要請したが、大阪航空局は「予算が確保できていない等の理由から即座の対応は困難である旨を学園に回答した」(改ざん前文書の69ページ)。
学園側は2017年4月の小学校開校を目指していた。そこで学園はどうしたか。「本来は国に対して損害賠償請求を行うべきものと考えているが、現実的な問題解決策として早期の土地買受けによる処理案」を提案した(同)。
提案を受けて近畿財務局と大阪航空局は「学園の提案に応じなかった場合、損害賠償に発展すると共に小学校建設の中止による社会問題を惹起する可能性もあるため、…売払いによる問題解決を目指すこととした」(同)。
つまり、開校まで1年という段階で「新たなゴミが出てきた。国が処理しないなら損害賠償で訴えるぞ」と言われて、答えに窮した近畿財務局と大阪航空局がやむなく売却を決断した。
そういう構図である。以上の経過は改ざん前文書に出てくる
「特別な便宜」は見当たらない
ここで興味深い問題がいくつかある。まず「新たなゴミが出た」という話は本当か。大阪航空局と近畿財務局は現地調査して「新たなゴミを確認した」としているが、昨年11月に公表された会計検査院報告はこれに強い疑問を投げかけている。
たとえば、大阪航空局が確認の根拠にした工事写真には「(深度)3.8mを正確に指し示していることを確認できる状況は写っていない」うえ「別途、廃棄物混合土の深度を計測した記録はない」ことを踏まえると(新たなゴミの)「裏付けは確認できなかった」と結論づけた(会計検査院報告108ページ、http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/29/pdf/291122_zenbun_1.pdf)。
ここでは土地の所有・管理者である大阪航空局の責任が重い。「新たなゴミ」の存在、あるいは不存在をしっかり確かめていれば、別な対応を考えられた可能性もある。
この局面で国の担当者と森友学園、工事業者の3者が口裏合わせしたかのような音声テープの存在が報じられている(https://mainichi.jp/articles/20171203/ddm/002/100/135000c)。
国側が森友側に調子を合わせて「新たなゴミ」の存在を認めたがっていた様子なのだ。
そうだとすると、なぜ大阪航空局と近畿財務局は森友側に同調したのか。実は「新たなゴミ」などなかったかもしれないのに、なぜ「ある」という前提で話を進めたのか。いったいどんな弱みを握られていたのか。そこが焦点になる。
改ざん前文書に基づくなら、答えは「国を損害賠償で訴える」という「脅し」だ。損害賠償の話は会計検査院報告にも出てくる。国が損害賠償で訴えられるのは名誉な話ではないから、担当者が「ビビった」としても理解できる。
もしかしたら、メモにできない話もあったかもしれない。そんな材料があったなら森友側が国に迫った構図はますます強まる。なかったならなかったで損害賠償話が脅す材料だったという話になる。ここは検察も徹底的に捜査するだろう。
さらに言えば、森友学園は2015年3月に独自に実施したボーリング調査の結果「軟弱地盤であることが分かった」として賃貸料の値引きを求めたが、近畿財務局が依頼した地質調査会社は「特別に軟弱とは思えない」との見解を示したにもかかわらず、同局が値引きに応じていた経緯もある(改ざん前文書の53ページ、及び会計検査院報告104ページ)。森友側が当初から、あの手この手で値引きを迫っていた様子が浮き彫りになっている。
いずれにせよ、国が大幅値引きせざるをえなくなった背景に「安倍首相の特別な便宜」は見当たらない。改ざん前文書で明確になったのは「損害賠償話で国が森友側に脅された」という事情である。
新たなゴミをよく調べもせず、損害賠償をチラつかされてビビった大阪航空局と近畿財務局は「情けない」というほかはない。本当にゴミが想定以上に深くまで埋まっていて、それを知らずに貸し付けたなら訴訟ざたになっても仕方ない。受けて立つ道もあったのではないか。
そうせずに、大幅値引きに追い込まれた(積極的に同調した?)のは大阪航空局と近畿財務局の失敗である。佐川氏は改ざん前文書を読み、関係者から話を聞いて経過を知るにつけ「これは財務省の責任問題になりかねない」と受け止めて、改ざんを指示したのかもしれない。
一言で言えば、改ざん前文書が打撃を与えたのは安倍政権ではなく、財務省と国交省だ。そうであれば、改ざんはマスコミが報じているように安倍政権を守るというより、財務省(と近畿財務局)を守ろうとする意図だった可能性がある。
とはいえ、安倍首相の側も昭恵氏が森友学園の名誉校長に収まったり、学園を訪れ、児童の歓待に「感涙した」りしたのは軽率のそしりを免れない。昭恵氏は籠池氏に体よく利用されたのだと思うが、利用される側にも落ち度はある。そこは首相も率直に認めるべきではないか。
「特例」だが、歪められてはいない
もう1点。野党や安倍政権を批判するマスコミは改ざん前文書に「特例」という言葉があるのを材料に、あたかも取引が安倍首相の「特別な便宜に基づく特例承認」であるかのような印象操作にも懸命になっている。
改ざん前文書は「特例」の意味を文書中できちんと定義している。特例という言葉は何度か登場するが、たとえば「予定価格の決定(売払価格)及び相手方への価格通知について(平成28年5月31日)」という文書の2ページ目だ(改ざん前文書の68ページ)。
森友学園に対して国有地を貸し付ける契約は「10年間の事業用定期借地契約」を結んだうえで「売買予約契約」も結ぶ二段構えになっていた。この「貸し付けた後で売却」という手続きを「特例的な内容」と呼んでいたのだ。
それは「普通財産貸付事務処理要項」(平成13年3月30日付財理第1308号)という通達に基いている。その第11の1に「特例処理」という条項があり「この要領により処理することが適当でないと認められる場合には、理財局長の承認を得て別途処理することができるものとする」と定められている(https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/tsuutatsu/TU-20010330-1308-14.pdf)。
この条項に基いて、近畿財務局は理財局長に承認を求め、局長は「普通財産の貸付けに係る特例処理について」(平成27年4月30日付財理第2109号)という通達で承認した。
なぜ、そんな手続きが可能になったかといえば、土地を所有、管理する大阪航空局が「急いで売却しなければならない事情はなく、いったん貸し付けた後の売却でも問題はない」との判断だったからだ。加えて「売却先が公共性の高い小学校」という事情も考慮された。こうした経過も改ざん前文書で説明されている。
つまり行政手続きとして適正に認められた特例であり、首相が特別な便宜を図った結果、歪められてしまった手続きとは言えない。大阪航空局と近畿財務局、本省理財局という役所同士の話し合いで決まった特例である。
さて、以上を指摘したうえで、会計検査院についても書いておこう。先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54875)で指摘したように、会計検査院は財務省と国土交通省からそれぞれ改ざん後と改ざん前の文書を入手しながら、見て見ぬふりをしていた。
ということは、改ざん前の文書を読んでいたのだから、会計検査院は上に書いてきたような経過はすべて承知していたのだ。
それにもかかわらず、会計検査院の報告は「本件土地に係る決裁文書等の行政文書では、本件土地の売却に至る森友学園側との具体的なやり取りなどの内容や、有益費の確認、支払等に関する責任の所在が明確となっていないなど、会計経理の妥当性について検証を十分に行えない状況となっていた」と書いていた(113ページ、http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/29/pdf/291122_zenbun_1.pdf)。
「森友学園側との具体的なやり取り」の一端は、今回の改ざん前文書の公表で初めて明らかになった。知っていながら知らないふりをした会計検査院の罪もまた重い。
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