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≪それこそ忖度(そんたく)だけれども、最高権力のところから指示が直接的であれ間接的であれ出ていなければ、財務省の役人がいくら落ちぶれたとはいえね、こんなばかげたことしませんよ。≫(by小沢一郎)
この発言は正鵠を得ている。筆者も同様な意味で、昨日のコラムで、森友決裁文書偽造事件は、財務省近畿財務局の職員Aさんが直接パソコンを操作したのだろうが、その上司が、直接か間接かで財務省理財局の局長だった佐川宣寿氏からの命により実行したものである。
当時局長であった佐川氏以外にも本省で関わった人物がいることも考えられる。本省理財局の全員が関わったことはあり得ないが、本省内に、佐川局長のほかにもかなりの人間が関わっていた可能性も否定できない。財務省自身の現在の説明でも、まだ事実関係が出てきそうな感じがする為か、調査の終了宣言が出来ないのは、検察の調査で、新たな疑念を提示される可能性もあるからだろう。
ただ、状況証拠を総合的に勘案すれば、佐川宣寿氏が自らの自発的考えで「忖度」することを決意したと考えるのは不自然なのだ。佐川氏が、自分の国会での発言の齟齬を修正するために、公文書偽造を行ったと云うのはこじつけだ。佐川氏が国会で答弁する以前に、決裁文書以外の処理は終わっていたことを窺わせる。でなければ、あれ程自信満々に嘘八百な答弁が出来る役人はいない。
国会で堂々と、「面会などの記録の保存期間は1年未満。本件は16年6月の売買契約締結をもって事案が終了しているので、記録は廃棄している」、「近畿財務局と学園の間では、さまざまな、その時々でのやりとりはあったと考えている。面会記録は残っていない」、「政治家の関与は一切ない。口頭でやりとりしただけで、面会記録はない」、「そういう価格につきまして、こちらから提示したことも先方からいくらで買いたいといった希望があったこともございません」などと発言した。
≪小沢氏「指示なしでできる役人いないよ」森友文書改ざん
小沢一郎・自由党代表(発言録)
(安倍晋三首相の)昭恵夫人の名前が(財務省の決裁文書に)いろいろとちらついているという一事をもってしてもね、それこそ忖度(そんたく)だけれども、最高権力のところから指示が直接的であれ間接的であれ出ていなければ、財務省の役人がいくら落ちぶれたとはいえね、こんなばかげたことしませんよ。役人でこんなことできる度胸のあるのいないよ。こりゃもう上から言われたからしょうがない、その言われた震源地は昭恵夫人なのか旦那さんなのかわかりませんが、そこらあたりの権力の私物化、乱用以外にない。
(立憲民主党など野党6党が国会審議に応じていないことについて)あとは総理なり財務大臣なり政治家がどういうけじめをつけるか。我々はまずそれが先でしょうということで、審議を拒否とか何とかという問題ではなくて、それ以前の問題だろうと思いますね。(野党の行動には)絶対、国民の支持があると思いますよ。ですから、正々堂々と大義をかざして攻め込むことだろうと思います。(記者会見で)
≫(朝日新聞デジタル)
ここからは、朝日新聞がまとめた、決裁書改造の流れを追っておく方がわかり易い。
≪「文書が外部の目に触れるのは…」焦る財務省、指示次々
財務省による決裁文書の改ざんが明らかになりました。「最強官庁」「省庁の中の省庁」とも呼ばれる組織で一体何が起きていたのでしょうか。関係者の証言を交えて緊急報告します。
「今後の開示請求に備えたほうがいい」
2017年2月下旬。財務省本省の理財局から、近畿財務局に連絡があった。理財局は、森友学園への国有地の貸し付けをめぐる「特例承認」の決裁文書の書き換えを指示した。
削除すべきだとされた部分のなかには、政治家や、安倍晋三首相の妻の昭恵氏の名が複数箇所に記載されていた。
朝日新聞が学園側への不透明な国有地売却を報じたのが同月9日。国会で野党の追及が始まった。安倍首相は関与を否定し、同月17日、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と言い切った。
佐川宣寿(のぶひさ)理財局長(当時)は同月24日、国会で「不当な働きかけは一切なかった」とし、学園との交渉記録は「速やかに廃棄した」と答弁した。同じ日の記者会見で、記録の廃棄を疑問視する質問に、菅義偉官房長官はこう返した。「決裁文書に、(交渉の経緯の)ほとんどの部分は書かれているんじゃないでしょうか」
国会での佐川氏の強気の発言とは裏腹に、理財局内は混乱していた。菅長官の言うとおり、決裁文書に多くのことが書かれていたからだ。
「答弁が断定的すぎて、文書と齟齬(そご)があるように読めてしまう。文書が外部の目に触れるのはまずい」。そんな意見が内部で出始めていた、と関係者は明かす。
当時の理財局の様子について、「慌てて何かに対応しているようだった。職員はかなり疲弊していた」と振り返る人物もいる。
冒頭の理財局から近畿財務局への指示が出たのは、佐川氏が「廃棄した」と答弁した数日後だった。
決裁文書の多くは、近畿財務局にあった。改ざんについて、東京と大阪をまたいで、日夜、細かいやり取りが続けられていたという。
「近畿財務局には、書き換えに抵抗もあったようだ。だが、結局、やらされることになった」。複数の関係者が、そう口にした。
こうして、特例承認の文書を含む計14件の決裁文書の改ざんを、4月までに終えたとされる。
ただ、消したはずの情報は、別のところから徐々に明るみに出る。学園側が近畿財務局とのやりとりを録音した音声データから、佐川氏が否定していた金額を示した交渉内容が判明。別の音声データでは、理財局の担当者が「特例」と発言していたことも明らかになった。近畿財務局に昭恵氏と一緒に写った写真を提示したことも、学園の籠池泰典前理事長=詐欺罪などで起訴=が明かした。
改ざんのほころびも生じていた。昨年、会計検査院の検査で、財務省と国土交通省が提出した同一であるはずの決裁文書の内容に違いがあった。また、項目ごと消した内容が、近畿財務局の別の部署の文書にほぼそのまま残っていた。文書は情報公開で開示された。
今月2日の朝日新聞の報道から10日後、財務省は大規模な「書き換え」を認めた。
「省庁の中の省庁」と呼ばれる財務省が、官僚としての一線を越えてまで決裁後の公文書に手を加えたのはなぜなのか。
真相は、まだ語られていない。
≫(朝日新聞デジタル)
≪朝日新聞が学園側への不透明な国有地売却を報じたのが同月9日。国会で野党の追及が始まった。安倍首相は関与を否定し、同月17日、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と言い切った。 佐川宣寿(のぶひさ)理財局長(当時)は同月24日、国会で「不当な働きかけは一切なかった」とし、学園との交渉記録は「速やかに廃棄した」と答弁した。同じ日の記者会見で、記録の廃棄を疑問視する質問に、菅義偉官房長官はこう返した。「決裁文書に、(交渉の経緯の)ほとんどの部分は書かれているんじゃないでしょうか」≫(by朝日新聞)
以上のくだりから、佐川理財局長(当時)が「不当な働きかけは一切なかった」、交渉記録は「速やかに廃棄した」と答弁した。この断定的答弁に対して、菅官房長官が記者の質問に答えて「決裁文書に、(交渉の経緯の)ほとんどの部分は書かれているんじゃないでしょうか」と答えた。この辺りから、財務省理財局は寝ずの徹夜作業をし始めたことになる。
つまり、菅官房長官から、“決算文書をみれば済むことだ”という発言が理財局に混乱をもたらした。当然、そう言えば“決済文書には、どのように書かれているんだ?”という不安が起きたと云うことだろう。安倍首相が、2月17日、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と言ったのちに、2月24日に佐川局長が「不当な働きかけは一切なかった」と国会で答え。同日、菅官房長官が「決裁文書に、(交渉の経緯の)ほとんどの部分は書かれているんじゃないでしょうか」と云う流れになる。
この朝日の時系列が正しければ、理財局は、かなりドタバタに、安倍首相が2月17日国会で「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と言い切った時点から、問題はスタートしている。17日の発言から、24日の佐川理財局長が答弁の準備をする期間は、1週間程度だった。おそらく、そこまでに決裁文書の偽造までは手が回らなかったと考えられる。佐川局長は「交渉過程のメモは捨てた」「不当な働きかけは一切なかった」と答えた時点では、大きな嘘も犯罪も犯してはいなかった。
しかし、なぜか菅官房長官が“決裁文書をみれば判ることだ”と言った事が引き金になり、佐川たちは、犯罪まがいの行為に走りだし、死者まで出してしまったことになる。ここまでの流れを見ると、菅官房長官の発言は通常の通念的発言とも言えるので、決算文書にまで気を配れと教唆したとは断定するのには無理がある。では、菅官房長官の言葉を聞いて、理財局は慌てたのはたしかだ。官邸からも、“決済文書まで気を配るように”と云う確認がなされたのも自然の流れだ。特に、官邸からの支持があった可能性は低いだろう。
このように流れを追いかけてしまうと、決済文書の偽造行為は、佐川理財局長が国会答弁の辻褄を合わせるための個人的行為という矮小化された話になってしまう。しかし、ここで考えるべきは、佐川理財局長が、国会答弁で、準備不十分であるにも関わらず、「不当な働きかけは一切なかった」と答弁した理由は、それ以前に、安倍首相が「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と言い切ったから、その答弁に齟齬がないように、取りあえずつじつま合わせをしたと云うことになる。
佐川理財局長(当時)らは、安倍首相の答弁と齟齬がない程度に国会で答弁して国会を消化させようと思っていたが、菅官房長官が“決裁文書をみれば判ることだ”と発言したことで、この問題は、口先三寸で済ます問題ではなく、徹底的に、証拠の隠滅をしなければならない事例だと、財務省理財局に指示した可能性がある。白昼堂々、記者の質問に答えるかたちで、理財局に注意喚起したと同様の効果を生んだ。おそらく、官邸の別のルートからも、この森友問題の資料では、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と云う発言に完全に応えられる準備を行うようにと云う指示が出ていた可能性も否定できない。
つまり、今回の財務省理財局の決算文書改造事件は、安倍首相の「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と云う発言に問題が起きないように遺漏なく万端を整えよ、と云う官邸から表裏に亘った注意喚起がなされたことで、財務省理財局の幹部の数人が大きく動きだして始まった事件と推測できる。困ったことに、佐川理財局長(当時)ら数人の改造行為は立証できるが、官邸からの表裏の裏からの指示又は教唆があったかどうかは、佐川の口から聞くしかない。
その意味では、今最も重要なことは佐川宣寿氏の身柄の安全性である。佐川宣寿氏の国会招致は充分にあり得るだろうが、そこでも、自分の発言の辻褄が合うように、決裁文書などの書き変えは行ったが、特別、安倍首相が「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と答弁したことは関係がないと言い張るに違いない。と云うことは、佐川国会招致も、安倍官邸にとって、致命的問題にはならない。この禊を経ることで、世間的には一見落着と云う印象が生まれる。
しかし、だからと言って、残念がることはない。問題を、佐川の公文書偽造の方に注意を向けると空振りになるリスクが大きい。佐川は、財務省の諸先輩の政治マターのもみ消しに奔走したことを念頭に入れた上で、最も重要なことは、改造前の決済文書に書かれている安倍昭恵夫人の森友学園問題への関与度を追及することが肝心だ。言った言わない議論に多くの時間を費やさず、改造前の決済文書を元にした、事件の解明が重要になる。その意味では大阪地検特捜部の捜査状況も重要だが、安倍昭恵夫人の間接的関与が引き金で、国有地が、森友への異様な大幅値引きに繋がったと云う点に焦点を当てるべきだ。そのことを考えると、佐川理財局長ではなく、その前、そして、その前の理財局長の国会招致が重要になるのかもしれない。
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