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金融政策失敗修正できず安倍政権失速へ
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2018年2月18日 植草一秀の『知られざる真実』
日銀の黒田東彦総裁の再任案が国会に提示された。
副総裁候補には現日銀理事の雨宮正佳氏と早稲田大学教授の若田部昌澄氏が提示された。
黒田氏が再任されれば、1964年に退任した山際正道氏以来、半世紀ぶりに在任期間が5年を超える異例の総裁になる。
1969年に日銀総裁に就任した日銀出身の佐々木直氏以来、日銀総裁は日銀出身者と大蔵省(財務省)出身者が5年ごとに交代する人事が長く踏襲された。
これを「たすきがけ人事」と呼んできた。
大蔵省の天下りポストとして日銀総裁は最高位ポストである。
大蔵省の事務次官経験者でも、10年に1人しか日銀総裁には就任できない。
大蔵省にとって最重要ポストが、昔も今も日銀総裁ポストなのである。
主要国による財務相・中央銀行総裁会議の名称が示すように、日銀総裁は財務相と並ぶポストとして位置付けられている。
権力欲にまみれた大蔵省・財務省の職員にとって、日銀総裁ポストは究極の目標でもある。
この日銀・大蔵たすきがけ人事が終焉したのは、1998年に大蔵省出身の松下康雄総裁が大蔵省・日銀接待汚職事件の責任を問われて任期途中で辞任した。
後継の総裁には日銀出身の速水優氏が就任し、これを契機に、福井俊彦氏、白川方明氏と3代続けて日銀出身者が総裁に就任した。
旧大蔵省、財務省にとっては、天下り最高ポストを失った衝撃は大きく、日銀総裁ポストの奪還は最重要課題であり続けた。
私は官僚支配構造を打破するための方策として三つの具体策を提示し続けてきた。
第一は公務員の職名の変更である。「官」と称するから「官尊民卑」の勘違いをしてしまうのだ。
「官」を廃し、「員」に変更すること。
第二は、天下りを根絶すること。
その出発点として、財務省の天下り氷山の一角から手を付ける。
具体的には、日本銀行、日本取引所、日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫、日本たばこ、横浜銀行、西日本シティ銀行への天下りを全廃する。
第三は、第一種国家公務員制度の廃止である。
大卒採用を一本化して、少数幹部の採用を廃止する。
入社の段階で幹部登用を約束して採用する企業は極めて少ない。
少数採用が不適正な「特権意識」を生み出す原因になっている。
公務員は与えられた仕事を着実に、正確にこなすことを求められる職務であって、自分がトップと自認するような採用するべきでないのだ。
勘違い官僚を生み出さないために、公務員制度を抜本的に変革することが必要なのだ。
官僚支配の構造を変えること。
「改革」を叫ぶなら、官僚支配の構造を打破することが優先されるべきなのだ。
日銀人事に話を戻す。
黒田氏は事務次官経験者ではない。経済学・金融理論の専門家でもないのである。
その黒田氏が日銀総裁に起用された。
財務省にとっては悲願の日銀総裁ポスト奪還になった。
しかし、過去5年間の実績は最低である。
就任2年以内にインフレ率を2%以上に引き上げることを公約として掲げた。
ところが、5年経過して、この公約はいまだに達成されていない。
皮肉なことは、2013年からの5年間で、労働者の実質賃金が1年だけプラスになった。2016年のことだ。
2016年に実質賃金が唯一プラス転換した主因は、2016年の消費者物価上昇率が前年比0.1%下落したことにある。
物価下落、すなわちデフレに回帰したことで、初めて実質賃金がプラス転換したのだ。
ところが、2017年は消費者物価上昇率が0.5%上昇し、実質賃金は再び減少に転じた。
つまり、黒田氏が掲げた「インフレ誘導」という目標自体が間違っていたのである。
間違った目標を掲げ、その目標を実現できなかった。そして、デフレに回帰した2016年だけ、労働者の実質賃金がプラスに転換した。悲喜劇のような最低の実績を有しているのが日銀の黒田・岩田体制なのだ。
その黒田氏が再任されるという異例は、大いなる驚異と日本の近未来の暗雲の広がりしかもたらしていない。
安倍政権は黒田日銀とともに崩壊してゆくことになるだろう。
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