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平昌五輪南北融和進展で安倍赤恥外交の孤立
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2018年2月12日 植草一秀の『知られざる真実』
韓国の平昌で開幕した冬季五輪・パラリンピック。
安倍首相が開会式に出席したが、開会式の主役の座は北朝鮮・朝鮮労働党第1副部長の金与正氏に完全に奪われた。
金与正氏は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の実妹で北朝鮮の実質ナンバー2の地位にある者と見られている。
金与正氏は金正恩委員長の特使として韓国の平昌五輪の開会式に合わせて訪韓した。
北朝鮮の金一族直系の人物が韓国に入るのは初めてのことである。
金与正氏は韓国の文在寅大統領と会談し、文在寅大統領の北朝鮮訪問を正式に招請した。
文在寅大統領と金与正氏は2月11日夜に、五輪に合わせて訪韓した北朝鮮の三池淵管弦楽団によるソウルでの公演で、席を隣り合わせにして観覧した。
文大統領は与正氏などの北朝鮮側特使に対話・交流の継続と拡大を求め「心を合わせ、難関を突破しよう」と話した。
五輪開催を契機に南北の対話、融和の端緒が開かれることは意義のあることである。
一連の対話が北朝鮮主導で進展していることを批判する主張があるが、東西の対立によって分断された朝鮮半島の人々が平和の確立と国家の統一を求めていることは間違いない。
現在の基本図式は、融和を進展させようとする北朝鮮および韓国の意向に対して、東アジアでの拠点と利権を死守しようとする米国が、南北の融和を阻止するとともに、東アジアの軍事的緊張を人為的に高めようとしているというものである。
日本は東アジアの一国として、この地域の平和と安定を第一に位置付け、対話による問題の平和解決を目指すべき立場にあるが、日本独自の外交路線を確立できずに、単純に米国に隷従する姿勢を示している。
11月9日に実施された日韓首脳会談で、安倍首相は平昌冬季五輪・パラリンピック期間中は延期となった米韓合同軍事演習の五輪期間後の対応について、
「演習を(さらに)延期する段階ではない。予定通り実施することが重要だ」
と主張した。これに対して、韓国の文在寅大統領は、
「(安倍)首相の話は、北朝鮮の非核化で進展があるまで演習を延期してはならない、という意味だと理解する」としたうえで、
「これはわれわれの主権、内政に関連した問題だ。首相が直接取り上げるのは困る」
と述べた。
安倍首相は文在寅大統領に「内政干渉をするな」と釘を刺された。
韓国が軍事演習をするのかどうかは韓国の問題であって、韓国が決めることだ。
文大統領の「内政干渉である」との発言は毅然としたものであり、正当なものである。
このような内政干渉の発言を平然とする安倍首相の姿勢は「恥ずかしい外交」と言わざるを得ない。
今後の進展がどうなるのか未知の部分は多いが、南北が対話を進展させて、融和を深めることは建設的なことである。
安倍首相は北朝鮮の核武装を問題視しているが、第2次大戦後の核保有のあり方についての考察が必要不可欠なのであり、北朝鮮がなぜ核武装に突き進むのかの原因に踏み込んで考察しなければ、本当の問題解決にはなり得ない。
戦後の核保有体制は、戦勝5大国が核兵器を独占保有するというものである。
これが「核拡散防止条約=NPT」の体制である。
これに対して、戦勝5大国も含めて、すべての核兵器保有を禁止するとの立場をかたちにしたものが「核兵器禁止条約」の体制である。
日本は国連が決議して制定した「核兵器禁止条約」に参加せず、背を向けている。
重大な問題は、NPTの体制が、戦勝5大国だけが核兵器を保有するという体制を敷きながら、現実には、5大国以外に核保有国が存在することである。
インド、パキスタン、イスラエルが核保有国であると見られている。
日本が北朝鮮による核保有を許さないとの主張を示しているときに、同時に、インド、パキスタン、イスラエルの核保有を非難し、「圧力」をかけているなら、一つの筋は通っているということになる。
ところが、安倍政権はインドの核保有を非難しているのか。
イスラエルの核保有疑惑を追及し、核保有を非難しているのか。
この点が何よりも重要な部分なのだ。
北朝鮮の核武装を排除するべきと考えるのは順当だが、北朝鮮がなぜ核武装に突き進むのか、その理由を考察しなければ、現実的な平和解決の道は閉ざされてしまうことになる。
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