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日欧EPA影響試算は試算ではなく根拠なき妄想
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2018年2月10日 植草一秀の『知られざる真実』
2月7日に「TPPプラスを許さない!全国共同行動」が主催して参議院議員会館で開かれた「TPPプラス交渉をただす!院内集会」でTPP11ならびに日欧EPAによる影響試算について政府担当者から説明があった。
すでにメルマガには問題点を記述したが、重要事項であるのでブログにも記述させていただく。
政府が提示する影響試算は、国民に対してTPP11や日欧EPAの影響を誠実に伝えるものになっていない。
TPP11や日欧EPAをゴリ押しするために、人為的に操作した数値が発表されているものである。
政府は日欧EPAの経済に与える影響試算について、実質GDPを1%押し上げると発表している。
そのメカニズムとして実質賃金上昇が労働供給を拡大することとしている。
しかし、この議論は日本経済の現状での制約条件を完全に無視した机上の空論に過ぎない。
現在の日本経済で最大の問題になっているのは人手不足である。
労働供給の絶対量の不足に直面しているのである。
さらに、中期的にも人口減少、とりわけ生産年齢人口の減少が急速に深刻化するのである。
このときに、労働供給の増加によって生産量が拡大するとの経済効果分析は、何らの説得力を持たないものである。
他方、日欧EPAの農林水産物への影響試算も子供だましにもならない代物であることが明らかにされた。
ここでは、説明者が用いた牛肉輸入増加の影響を例に説明しよう。
試算は、輸入品と競合する部分と競合しない部分に分けて、
競合する部分は関税削減相当部分の国内品販売価格が下落するとし、
競合しない部分は関税削減相当部分の国内品販売価格の比率の半分が下落するとして計算したものだという。
そして、国内生産量は維持されるとして計算したとのことである。
試算では、「競合する部分」が「乳用種」で、「競合しない部分」が「和牛・交雑種のなかの2〜1等級のもの」としている。
ここで使われている「競合」という言葉の用い方が正しくない。
「乳用種」は輸入牛肉と「同種のもの」であり、「和牛・交雑種」は「同種のもの」ではないが、十分に「競合」するものである。
牛肉を買う消費者はどのような行動を示すか。
「乳用種」よりも「和牛・交雑種」の方が、品質が上で価格が高い。
そこに、「乳用種」の輸入牛肉の価格が関税削減により大幅に下落する。
牛肉全体に対する需要が一定であるなら、輸入「乳用種」の価格下落によって「和牛・交雑種」に対する需要が、この輸入「乳用種」にシフトする。
つまり、「和牛・交雑種」から「乳用種」への「代替」が発生するのである。
輸入「乳用種」と同種の国内産「乳用種」の価格が輸入牛肉価格の下落に連動して当然下落するときには、これと「競合」する「和牛・交雑種」の価格もほぼフル連動して同じ比率で下落すると考えられる。
「和牛・交雑種」の価格下落率が半分になることの合理的な根拠がない。
このような根拠がないことを勝手に決めたうえで計算を行っている。
より重大な問題は、このような変化が生じたときに、国内品の生産量が「維持される」としていることだ。影響試算の目的は、生産量がどの程度減少してしまうのかを知ることにある。その、得ようとする試算結果の結論を先に「生産量は維持される」と決めてしまうのでは、そもそも試算を行う意味がないと言うべきである。
農林水産物の輸出を促進する必要があるとの説明を行った農水省の職員は、「人口減少などで国内需要が減少の一途をたどることは明白だ」と述べた。
輸入牛肉の価格が下がれば、牛肉に対する需要のなかで、国内品から輸入品への「代替」が生じるのであって、その結果として、輸入が増加する部分が国内生産の減少につながることが当然のこととして想定される。
「乳用種」と「和牛・交雑種」は「同種」でないというだけで、十分に「競合」する。その影響を考察するのが試算の目的であるのに、生産量は維持されると決めた上で試算を行うなら試算を行う意味がない。
これまで「和牛・交雑種」を購入していた消費者が、輸入「乳用種」の価格が大幅に下がることを受けて、「和牛・交雑種」から輸入「乳用種」に需要をシフトさせることを想定し、その金額等を計算するのが試算の目的である。
農水省試算は、一番重要な試算結果である「国内生産量」がどの程度減少するのかを試算したものでなく、「国内生産量は維持される」ことを根拠なく勝手に決めて、その上で、これまた根拠のない価格下落率を乗じて生産金額をはじいている、まやかし=ごまかしの数値でしかない。
「影響試算」と表現できる代物ではないのである。
国会では、野党がこれらの諸点を徹底的に追及する必要がある。
民進党、日本共産党、自由党、社会民主党などの国会議員が院内集会に駆けつけて意見を述べてくれたが、超党派の国会議員と問題点を検証したうえで、国会において政府を徹底追及してもらわなければならない。
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