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名護市長選「与党勝利」で沖縄の記者がいま最も懸念すること 秋の県知事選の行方も気になるけれど…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54385
2018.02.07 新垣 毅 現代ビジネス
「本当によかった。(辺野古への基地移設については)市民の皆様の理解をいただきながら、最高裁の判決に従って進めていきたい」
安倍晋三首相は名護市長選の結果を受け、こう語った。「選挙結果こそが民意だ」という声はあるが、与党の全面支援で勝利した渡具知豊氏も「(辺野古容認の民意が示されたとは)思わない」と述べている通り、沖縄県民の感情は決して単純ではない。
琉球新報社東京報道部長を務め、著書『沖縄の自己決定権』などで「沖縄人のアイデンティティ」を報じ、問い続ける新垣毅氏の緊急寄稿。
「辺野古反対でも与党に」の重み
4日の沖縄県名護市長選で、同市辺野古の新基地建設を推進する政府が推す新人の渡具知武豊氏(56)=自民、公明、維新推薦=が、建設阻止を訴えた現職の稲嶺進氏(72)=社民、共産、社大、自由、民進推薦、立民支持=を破った。
渡具知氏の得票は20389票、稲嶺氏は16931票で3458票差。投票率は76・92%だった。
渡具知氏の勝因について、一般的見方はこうだ。
「辺野古移設反対を標榜し前回市長選では自主投票だった公明党が、渡具知氏を推薦し、政権与党として自民党と一枚岩の選挙態勢を築いたことが大きい。辺野古移設を進めたい政府与党は100人以上の国会議員を水面下で名護入りさせ、経済界や団体を固め、てこ入れを図った。
これに対し、稲嶺氏側は、2期8年務めた知名度を頼りに緩みが出て、支持層をしっかり固める選挙戦を徹底できず、むしろ渡具知陣営に切り崩された。
渡具知陣営は『基地建設反対を主張しても政府は強硬的に工事を進める。工事は止まらないなら経済を良くしていく』という諦め≠流布する作戦が功を奏した。
一方の稲嶺氏は『任期中、基地ばかりに特化した取り組みで、経済を置き去りにした』という市民の不満を払しょくできなかった」
この分析はほぼ間違ってはいないだろう。しかし、支援態勢の枠組みや運動戦術からだけでは見えない名護市民の意識構造を注意深くみる必要がある。
琉球新報が期日前投票を含めて実施した出口調査(4054人が回答)によると、辺野古移設について「反対」は46・5%、「どちらかといえば反対」15・2%で、計61・7%が「反対」の意向を示した。
また、移設に「どちらかといえば賛成」は14・5%、「賛成」は13・4%で、「賛成」は計27・9%。無回答10・2%だった。「どちらかといえば」を含めた「賛成」の人の91・2%が渡具知氏に投票した。
一方で「どちらかといえば」を含めた「反対」の人も23・9%が渡具知氏に投票したのだ。この結果は、投票行動が必ずしも辺野古の賛否できれいに二分されていたわけではないことを物語る。辺野古に反対であっても、渡具知氏に入れた人が、反対する人々のうち、およそ4人に1人はいたことになる。
諦めムード」をつくる
それには理由がある。渡具知氏は選挙戦で辺野古の移設の是非は示さず「辺野古の『へ』も言わない」(稲嶺進氏)戦術を徹底したからだ。
渡具知氏は「裁判の行方を見守る」と繰り返すだけだった。一方で「国にべったりとはいかない。一定の距離感を置いて基地問題と向き合う」とも話している。渡具知氏に投票した一部の辺野古反対派の市民は、政府とのパイプを使って交渉できると期待される渡具知氏に「真の解決」を求めたのかもしれない。
こうして分析すると、渡具知陣営が意図した「諦めムードの醸成」作戦は必ずしも成功したとはいえない。移設容認が反対を上回ったわけではなく、渡具知氏も「容認」を明言していないからだ。
この点を無視すれば、政府や本土の国民は名護市民の民意を見誤ることになるだろう。政府与党は選挙結果だけを喜び、市民の意識に根強い「辺野古反対」の意識をあなどることになるだろう。
とはいえ、確かに政府対県・名護市という対立構図は崩れた。翁長雄志知事が地元民意の根拠にしてきた柱である名護市民の民意が、必ずしも辺野古反対ではないという結果を生んだのは間違いない。翁長氏は、名護市長選後も辺野古反対の意思は変わらないと明言しているが、なぜ反対なのか、どう県民の理解を得るかなど政治主張や戦略の立て直しを迫られる。
一方の渡具知氏は、安易に移設を容認すれば、今回当選の立役者となった公明党県本の方針と矛盾する。公明党県本は辺野古基地建設反対を変えていないからだ。
おそらく渡具知氏としては「裁判の結果に従う」ということで政府と折り合いを付け、経済振興などの協力を取り付ける曖昧作戦≠貫くとみられる。暗黙の容認を続けるということだ。辺野古容認を明言しないことで、自身に投票した辺野古反対の意見の人からの批判も回避する狙いもあるだろう。
強化され続ける「構造的差別」
今回の名護市長選は、辺野古新基地建設問題だけでなく、秋の知事選にも大きな影響を与えるとみられるため、注目を集めた。その影響を考える前に、二つの構造について留意したい。
一つは、最近、米軍ヘリ不時着や部品落下、墜落事故が頻発していることから見える構造である。表層的には、在沖米軍に駐留するヘリの老朽化や整備不良が指摘されている。背景にはオバマ米政権時代からの予算削減の影響で、新しい機体への代替や整備が徹底できない状況があるという。
その一方で、北朝鮮情勢が緊迫する中、練度を落とすわけにはいかない。いざという時に対応できるよう日頃から訓練することが、備えであり、抑止力になると考えられている。
それらを踏まえると、北朝鮮情勢の緊迫が続けば続くほど、必然的にヘリに関する何らかの事故が発生する可能性が高いとみられる。
沖縄は多くの米軍ヘリが駐留しているだけでなく、ほぼ全域が訓練場化している場所でもある。例えばオスプレイ対応のヘリパッドは、沖縄本島に69カ所ある。訓練が行われている伊江島補助飛行場や普天間飛行場を除いての数である。
訓練移転や駐留機削減、基地閉鎖、飛行時間の短縮、飛行空域の制限など対策を講じなければ、今後も事故は起こり続け、場合によっては人命を犠牲にする大事故さえ、起こりうる。このような北朝鮮情勢と訓練激化、ヘリ老朽化と予算削減という構造は放置されたままだ。いつでも事故が起きてもおかしくない状況が続いているのである。
しかし、事故がある度に、日本政府は原因究明までの飛行停止さえ、実現できない。米軍側は日本政府の要請をも無視してきた。事件や事故がある度に、日米地位協定を象徴とする従属関係が露呈する。その従属関係が沖縄に矛盾や不条理を強いている。その状態が構造化しているのである。
二つ目の構造は、いわゆる構造的差別である。日米が共同で、沖縄に基地を集中させる構図は今も変わらない。日米の政権はずっと、この構図を維持する政策を実施してきた。
有権者は政権を選ぶことで、結果的に沖縄への基地集中という政策を支持した形になっている。さらに多くの国民や主要メディアの無関心・無理解・偏見が、選挙の際に、その政策を争点化したり、世論において問題化したりする機会をつぶしている。
この構造的差別は日本が形式上、独立を果たした1952年のサンフランシスコ講和条約、そしてほぼ同時に調印された日米安保条約締結以降、ほとんど変わらない。むしろ近年は「日米同盟強化」の名の下で、この構図は一層強化されているようにさえ、みえる。「日米同盟」は国体化したといわれるほど、政治家や官僚、有識者、メディアが無批判の状況が作り出されている。
これに乗じて、沖縄における新基地建設反対の声は、その「国体」に対する「反逆」であり、基地に反対する沖縄の人は「反日」「テロリスト」とレッテルを貼るヘイト≠ェまん延している。
沖縄ヘイトは、従来の構造的差別を補強あるいは助長する環境作りに、一役買っている。基地反対派を非民主的手法で排除するという目的や実践が結果的に一致するという意味で、政権がヘイトを保証する状況や構造が出来上がっているのだ。
なぜ本土に基地は増やせないのか
果たして沖縄に基地が集中している責任は誰にあるのか。この問いが重要である。少なくとも沖縄側にその責任はない。結論から言えば、沖縄の問題=「沖縄問題」ではない。
一義的には米軍施設だから米国と思う人は多いかもしれない。しかし、米側は、例えば普天間基地の移設問題はあくまで日本政府国内の問題として、沖縄の民意に対しては日本政府が対応すべきものとする姿勢を示してきた。
では一方の日本政府はどうか。これまで軍事戦略上の「抑止力」や「地理的優位性」などを、沖縄でなければならない理由として挙げてきた。
しかし、沖縄の米軍基地の大半は海兵隊である。北朝鮮のミサイル実験に関心が集まっているように、ミサイル戦争の時代である。人の肉弾戦を主とした海兵隊が沖縄のような狭い場所一カ所にここまで集中するのは軍事戦略上、本当に得策なのか。ミサイル1、2発で壊滅状態を招くため、分散させた方がよいとの考えさえ、米国の軍事専門家にはある。
詳しい議論は他の著書(例えば、柳澤協二他著『虚像の抑止力』旬報社、松竹伸幸著『幻想の抑止力―沖縄に海兵隊はいらない』かもがわ出版など)に譲るが、日本政府が説明する軍事戦略上の「理由」には、疑問が尽きない。
一方、政府関係者はこんな説明もしてきた。
「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄が最適地だ。許容できるところが沖縄にしかない」(2012年、当時の森本敏防衛相)
「分散しようと思えば九州でも分散できるが(県外の)抵抗が大きくてなかなかできない」(2014年、中谷元・元防衛相)
つまり、沖縄の米軍基地駐留の根拠は軍事上ではなく政治的な理由であるというのだ。
極めつけは去った2日の衆院予算委員会における安倍首相の発言である。
「日米間の調整が難航したり、移設先となる本土の理解が得られないなど、さまざまな事情で目に見える成果が出なかったのが事実だ」
首相が米軍普天間飛行場など在沖基地の県内移設の理由に「本土の理解が得られない」ことを挙げたのは初めてだった。政府による沖縄の基地負担軽減策のほとんどが沖縄県内への移設を伴う。防衛省などはこれまで県内移設は沖縄の地理的位置など軍事上の理由としてきたが、安倍首相は本土の抵抗による受け入れ困難を挙げた。
これは「日本人の問題」である
安倍首相の説明を基に考えれば、基地反対運動をしてきた人々にも、沖縄の基地集中の責任があることになる。この責任に気付いて新たな運動を起こしている人たちがいる。本土への沖縄の基地引き取り運動だ。
彼らは日米安保あるいは「日米同盟」を大多数の日本国民が支持するのであれば、そのリスクも国民は背負うべきだと主張する。約7割の米軍専用施設を沖縄に押し付け、リスクを負わせるのは不公平だという沖縄の主張に向き合うべきだという。
世論調査で日米安保に約8割の国民が賛成しているにもかかわらず、基地のリスクを沖縄に押し付けているのは本土の人々であり、これは「沖縄問題」ではなく、本土の日本国民の問題であると強調する。すなわち、沖縄の基地集中の責任は本土の日本国民、すなわち「やまとんちゅ」(大和人)にあると。
本土の大多数の国民こそが、沖縄に基地を押し付けている当事者であることに気付かなければならない。「沖縄問題」ではなく、「本土の日本国民の問題」なのである。
ここで話を戻し、名護市長選の県知事選への影響を考えてみよう。北朝鮮情勢に対応する米軍ヘリ訓練激化を止められない構造と、構造的差別、これら二つの構造が変わらない限り、米軍絡みの事件事故は沖縄で起き続ける。そのこともあり、秋の県知事選の際は、どのような状況になっているか、見通しにくい要素がある。
その意味で、名護市長選は翁長知事の戦略に影響は与えても、投票結果を左右するかどうかは未知数だ。
というのも、名護市長選における出口調査では、翁長知事への支持率は低くない。知事を「支持する」は46・2%、「どちらかといえば支持する」は11・5%で、計57・7%は支持している。知事を「支持しない」は19・6%、「どちらかといえば支持しない」は11・2%で不支持は計30・8%だった。
選挙はその時の経済状況や候補者、政策、支援政党の態勢など多くの要素によって結果を左右する。県知事選では翁長氏の相手候補はまだ見えていない。
「うちなーんちゅ意識」の再生産
いずれにしても、沖縄人の「うちなーんちゅ」意識は潜在的に培養され続けている。なぜならヘリ事故などの構造、そして構造的差別という二重の差別構造が改善されていないからだ。このため、さまざまな局面で沖縄アイデンティティーは再生産されるだろう(詳しくは拙書『続沖縄の自己決定権 沖縄のアイデンティティー 「うちなーんちゅ」とは何者か』(高文研)参照)。
本土の沖縄ヘイトや、沖縄で起きている問題への無関心が助長されればされるほど、本土と沖縄の差別的歴史が想起され、やまとんちゅの無責任が可視化される。それに伴い、若い世代であっても、うちなーんちゅの自覚が生まれる機会が拡大する。いったい日本にとっての沖縄とは何なのか。うちなーんちゅとは何者なのか―。
構造的差別がなくならない限り、それらが永続的に主題化される。本土の国民はそこを深く考えて沖縄と向き合うべきだろう。今回の名護市長選の結果によって沖縄人の奥深い意識にあるものまで敗北したと見るのは誤りだ。
米軍絡みの事件事故が頻発し、政権が強硬姿勢を貫けば貫くほど、マグマのように歴史的に蓄積された「沖縄人(うちなーんちゅ)」という自己内部の存在が頭をもたげ、異議申し立ての主体として登場する機会は増えるだろう。
新垣毅(あらかき・つよし)1971年沖縄県那覇市生まれ。琉球大学、法政大学大学院を卒業後、琉球新報社入社。沖縄県政、中部支社報道部、社会部遊軍キャップ、編集員、社会部デスク、文化部記者兼編集委員などを経て、2016年4月より東京報道部長。沖縄の自己決定権を問う一連の報道で、2015年に第15回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞受賞。近著に『続 沖縄の自己決定権 沖縄のアイデンティティー』がある。
結局、本土が新たな米軍基地を受け入れないことが、問題なんだよな。 / “名護市長選「与党勝利」を受けて、沖縄の記者がいま最も懸念すること(新垣 毅) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)” https://t.co/PIZqtuSBQF
— Baatarism/ちゃんぷるー (@baatarism) 2018年2月6日
強権を使いたい権力者にとって、一番都合が良いのは、被支配者層の「諦め」。そんなものを許して良いのか。>名護市長選「与党勝利」を受けて、沖縄の記者がいま最も懸念すること https://t.co/cyNpVAYYM2 #現代ビジネス
— kanageohis1964 (@kanageohis1964) 2018年2月6日
名護市長選「与党勝利」を受けて、沖縄の記者がいま最も懸念すること(現代ビジネス)「選挙結果こそが民意だ」という声はあるが、与党の全面支援で勝利した渡具知豊氏も「(辺野古容認の民意が示されたとは)思わない」と述べている通り、沖縄県民の感情は決して単純ではないhttps://t.co/SEmeFJPghU
— teru(テル) (@teru_lefty) 2018年2月6日
名護市長選「与党勝利」を受けて、沖縄の記者がいま最も懸念すること https://t.co/sVX5mApril #現代ビジネス
— マクガン (@Makugan32) 2018年2月7日
構造的な差別は別に沖縄に限った話ではなく、今の日本全体の問題であって、これを沖縄ローカルな民族意識に結びつけるなら、行き着く先は沖縄独立しか無いでしょうね…
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米軍基地は本土に引き取って解決 それが筋だ!
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