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空港も下水道も…公共施設が外資系ファンドに乗っ取られる恐れ:国の規制緩和が後押し
http://biz-journal.jp/2018/01/post_22152.html
2018.01.30 文=小川裕夫/フリーランスライター Business Journal
高度経済成長期に整備された地方自治体のインフラが、一斉に寿命を迎えようとしている。首都高速道路の1号線が開通したのは1962年。すでに50年以上が経過している。東京都23区内の上下水道は、昭和40年代にほぼ整備が完了している。地域によって差はあるものの、それらも供用開始から50年前後が経過した。
道路をはじめとする鉄道設備、空港施設、橋梁、トンネル、上下水道といったインフラはマメに定期点検をすることで長寿命化するといわれる。国土交通省は、インフラを通常の基準より短いサイクルで点検することを管理者に推奨している。定期的にメンテナンスを実施すれば、インフラは長寿命化する。新たにインフラをつくるよりも、長寿命化させるほうが安上がりになるからだ。
しかし、国土交通省の思惑通りにインフラを頻繁にメンテナンスできる地方自治体は少ない。なぜなら、頻繁にメンテンナンスを実施すると、一時的にインフラにかかるコストが増大するからだ。地方自治体を所管する総務省の職員は言う。
「本来、メンテナンスをマメにするほうがコスト的に安上がりであることは市町村もわかっています。しかし、過疎化が激しく進行している市町村ではインフラの保守管理・点検に割ける財源的余裕がありません。人口が少ないので自動車等の交通量も少なく、少しぐらい道路がデコボコでも我慢して使おうという市町村は多いのです」
少額のメンテナンスコストでも、財源の厳しい市町村にとっては重い負担になる。そうした思惑から、財政の厳しい市町村はインフラのメンテナンスを後回しにする傾向が強い。
メンテナンスを後回しにすることで一時的に支出も先送りできるものの、定期的にメンテナンスをされないインフラは急速に老朽化してしまい、新造するしかなくなる。そのため、結果的にメンテナンスコストよりも莫大な更新コストがかかってしまうのだ。
「総務省としても『財源が厳しい市町村にこそ頻繁なメンテナンスをするように』と推奨しているのですが、どうしても目先の財源論の話になってしまい、インフラのメンテナンスがおざなりになっているのです」(同)
■民間資金の導入
今般、東京などは五輪開催を目前に控え、都市開発が盛んに進められている。官のみならず民間による再開発が活発化している東京と、地方とではまるで事情が異なる。
そうした財政的に困窮する市町村を救済する手段として、政府は事前から策を練ってきた。1999年には、PFI法を施行。同法は、これまで官の分野だった公共施設などに民間資金を呼び込むための法律だ。例えば、山口県美祢市の刑務所はPFIを活用して建設。次世代型の刑務所として脚光を浴びた。
PFI法を施行後も、政府は段階的にPFIの適用基準と範囲を緩和。その対象分野を拡大し続けてきた。PFI法の適用基準が緩和されたことで、私たちの生活に直結する上下水道などにも民間手法・民間資金が導入されるようになった。すでに多くの自治体では水道事業は民間事業者に委託されるようになり、静岡県浜松市では日本初の下水道事業の民間委託化を実現している。
私たちの安全に大きくかかわる空港の管理権も民間に委託できるようになった。関西国際空港などは民間委託により、収支の改善を見込んでいる。
民間資金の導入という大義名分を掲げたPFIで味をしめた政府は、さらなる規制緩和を目論んでいる。それが、このほど金融庁が提案する公共施設に投資するファンドの上場規制の緩和だ。金融庁はさらに上場規制の緩和を提案するとともに、PFIを導入できる対象も公民館・運動場・コンサートホールといった文化・教育・福祉にまで拡大するように要望している。
■市町村が外資系ファンドの餌食に
今般、こうしたインフラ整備に投資する投資ファンドは、海外の機関投資家が保有する膨大なファンドマネーを背景に巨大な力を発揮してきた。例えば、2013年頃に大阪府のニュータウン開発と泉北高速鉄道の運行を担ってきた大阪府の第3セクターをめぐり、外資系投資ファンド、ローンスターが触手を伸ばすという騒動があった。
日本の企業風土や文化、生活スタイルを無視した完全なる利益追求を目指した投資ファンドは、短期的な利益をあげる手法が焦土作戦のようにも映ることから“ハゲタカファンド”とも揶揄されて、日本ではアレルギーが強い。
そうした投資ファンドの進出を後押しする規制緩和を金融庁が率先して提案しているのだから、私たちの生活は外資に蝕まれ、左右されることを余儀なくされる。前述したように、財政的に困窮する市町村が外資系ファンドの餌食になるのは明白だ。
「昨今、地方自治体はマイナス金利の影響で資金調達能力が低下しています。市場から資金を調達する公募債の発行は相次いで取り止められており、地方自治体が資金調達手段としてすがっているのが縁故債と呼ばれる、慣れ合いの銀行や機関投資家からの資金調達です。しかし、地銀はマイナス金利で完全に弱体化しています。これまでの付き合いがあるからといって、簡単に縁故債を引き受けられる体力はありません。
そうしたところに、インフラ投資ファンドの株式上場規制の緩和です。以前より、海外の機関投資家が地方自治体の縁故債を大量に引き受ける可能性は指摘されていました。地方では、100億円などと財政規模が小さい市町村も珍しくありません。海外の機関投資家が上場して多額の資金を集め、それを元手にして地方自治体の縁故債を大量に引き受けるケースが出てくるでしょう。そうなると、海外の投資家やファンドによって、地方自治体は経済で間接支配されてしまうのです」(地方自治体関係者)
縁故債やインフラ投資ファンドによる外資の日本進出だけで終われば、そんなに大ごとにはならない。地方自治体関係者が怯えるのは、その先だ。
例えば、外資による縁故債の大量引き受けにより発言権が増すことは間違いない。地方に海外企業を進出しやすくする、海外の労働力受け入れを緩和する、海外事業者による土地の取得をしやすくする、といった外資系企業に便宜を図るような政策が次々に打ち出される可能性は捨て切れない。それは、ひとえに日本の領土が失われると同時に国家の主権も喪失することにつながる。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)
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