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「百田尚樹「(沖縄・米軍ヘリ機材落下は)全部嘘」、記者に「娘さんは中国人の慰み者」
2018年01月20日 19時45分 ビジネスジャーナル
昨年12月17日放送のテレビ番組『THE MANZAI 2017』(フジテレビ系)での、お笑いコンビ・ウーマンラッシュアワーの熱演は素晴らしかった。原発問題や基地問題などを巧みに織り込みながら観客を爆笑させた。とりわけ沖縄について、辺野古や高江の基地問題を取り上げ、「沖縄だけに押し付ける」「面倒くさいことは見て見ぬふりをする」「アメリカに思いやりを持つ前に、沖縄に思いやりを持て!」と叫んだ。
日本は、何を沖縄に押しつけているのか。
同13日、沖縄県宜野湾市にある市立普天間第二小学校のグラウンドに、90センチ四方の窓枠が落下し、その衝撃ではねた小石がぶつかり、男児が手に怪我を負った。落下物が米軍海兵隊の大型輸送ヘリCH53Eのコックピットの窓枠であることを、在沖縄米海兵隊は認めた。同7日には、「US」などと書かれたプラスチック製の米軍大型ヘリCH53の装置カバーが、普天間基地近くの緑ケ丘保育園の屋根に落下するという事件が起こっている。この一件に関して、作家の百田尚樹は同12日放送の『真相深入り!虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)で、「どうも調べていくと、これ全部嘘やったっちゅうことです」「どうもこれは全部捏造やったちゅう疑いがほぼ間違いないと言われて」と発言した。
米軍は、保育園で発見された物体がCH53の装置のカバーであることは認めたものの、「普天間飛行場所属のCH53のカバーは全数保管されていることが確認された」として、飛行中の落下ではないと否定した。だが、沖縄県が設置しているカメラには、落下と同時刻にCH53とみられる機体が映っていた。百田の発言は、米軍の発表を鵜呑みにしたものである。
同13日の落下事故に関して同18日、在沖米海兵隊のクラーク大佐が普天間第二小学校を訪れ謝罪した。学校側は上空を飛行しないよう求めたが、大佐は「最大限、学校の上は飛ばない」と答えるにとどめた。
『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部宏治著/集英社インターナショナル)によれば、沖縄本島の約18%が米軍基地であるが、その上空はほとんど100%米軍のものであり、住宅密集地の上でも低空飛行をするなど、どんな飛び方も許されている。それは「日米安全保障条約」にもとづく「日米地位協定」に、以下のように記されている。
「日米地位協定と国連軍地位協定の実施にともなう国法の特例に関する法律 第3項 前項の航空機(米軍機と国連軍機)およびその航空機に乗り組んでその運航に従事する者については、航空法第六条の規定は、政令で定めるものをのぞき、適用しない」
最低速度や制限速度、飛行禁止区域などについて定めた「航空法第六条」は、この規定によって、まるまる除外されるのだ。戦時において地上の目標物を攻撃するために、低空飛行の訓練が必要になる。だが沖縄で米軍が決して飛ばないエリアがある。米軍関係者の住宅の上空である。なぜかといえば、墜落したり部品が落下したら危ないからだ。これだけを見ても、沖縄の人びとにとって、米軍の存在がいかなるものかはわかるだろう。
●日本の国内法よりも日米安保法体系が上
百田は昨年10月27日、沖縄県名護市内で講演した。そのなかで、このように語っている。
「中国は尖閣を取る、琉球も自分の領土と言っている。沖縄の2紙は中国の脅威を報道しない。一番被害を受ける皆さんが最も知らされていない。インターネットがあればわかる。沖縄にはたぶんインターネットがないんじゃないか。すみません。冗談でっせ」
沖縄の2紙とは、「沖縄タイムス」と「琉球新報」である。沖縄本島の約18%が米軍基地で占められ、上空はほとんど米軍のものである。沖縄の地元紙が、この目の前のある脅威を力をこめて報じるのは当然のことだろう。
2016年12月13日、オスプレイが名護市沿岸部に墜落した。昨年10月11日には、米軍ヘリCH53が東村高江の牧草地に墜落して炎上した。04年8月13日には、米軍ヘリCH53Dが宜野湾市にある沖縄国際大学に墜落し炎上した。事故直後、消火作業が終わると、現場になだれ込んできた米軍兵士によって周辺は封鎖され、機体が搬出されるまで日本の警察、消防、報道関係者そして大学の関係者が立ち入れない状態になった。
筆者は当時、現場の映像を見て、米軍とはなんと無法なことをするのかと感じた。だが、『日本はなぜ〜』では、これが日米地位協定に沿った行動であることが紹介されている。1953年に日米両政府は次のような取り決めをしているのだ。
「日本国の当局は、(略)所在地のいかんを問わず合衆国の財産について、捜索、差し押さえ、または検証を行う権利を行使しない」(日米行政協定第十七条を改正する議定書に関する合意された公式議事録 一九五三年九月二九日/東京)
つまり、墜落した米軍ヘリは合衆国の財産であるから、日本には捜索したり検証する権利はないというわけだ。10月の東村高江でのヘリ墜落でも同様である。私有地である牧草地に迷彩色のテントが立てられ海兵隊員が常駐し、ヘリの残骸の周りを見回った。警察による現場検証は許されなかった。当たり前の人権が踏みにじられているのである。『日本はなぜ〜』では他の事例での法律判断も検証しているが、憲法を含む日本の国内法よりも安保法体系が上に立っていると指摘している。
安保条約はアメリカと日本との間で交わされているものであるから、同様なことは国内のどこでも起こりうる。だが、在日米軍の専用施設の75%が集中する沖縄で、こうした状況が顕著に現出していることはいうまでもない。
●「慰み者」発言
10月27日の講演で、沖縄タイムスの阿部岳記者を名指しして百田はこう言った。
「まともな記者が正しいことを書いても上のデスクにつぶされる。あるいは無理やり偏向させられる。出世もしたい。阿部さんはもう、悪魔に魂を売った記者だ。家に帰ったら嫁さんがいる。娘さんがいる。知らんけど。中国が琉球を乗っ取ったら、阿部さんの娘さんは中国人の慰み者になります。それを考えて記事を書いてください。給料アップのために、沖縄全体をおとしめるような記事を書かないでください」
「慰み者になる」という言葉は、第2次世界大戦末期に沖縄で起きた集団自決を思い起こさせる。米軍の上陸によって、日本で最大の地上戦となったのが沖縄だ。沖縄の人びとは「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪過の汚名を残すことなかれ」と繰り返し聞かされていた。降伏すれば命を奪われることはなかったはずだが、戦時下の日本では、そうした国際的な常識は伝えられず、捕虜になるのは恥、と教えられていた。また、アメリカやイギリスは「鬼畜米英」だと教えられ、沖縄の人びとはこんなことを言い交わしていた。
「もし万が一敵が上がったら、男の人はどうされる? 女の人はどうされる? 女は強姦されるよ。だからめいめい、自分の家族を責任を持って殺さないといけない」
「鬼畜米英、捕まれば、女は強姦され、男は八つ裂きにされ殺される」
そして、手榴弾を使ったり、身内同士で鎌、包丁で互いに刺しあい絶命したのだ。世界中でカヴァーされている、THE BOOMの「島唄」は、この集団自決を歌ったものだ。歌詞に「ウージの森であなたと出会い ウージの下で千代にさよなら」とある。ウージとはサトウキビのこと。サトウキビ畑で出会った恋人同士が、サトウキビ畑の下の洞窟でお互いに命を絶った悲劇が歌われているのだ。THE BOOMリーダーの宮沢和史が「ひめゆり平和祈念資料館」を訪れ、集団自決の歴史を知った。ひめゆり学徒隊の生き残りのおばあさんたちに聴いてもらいたくて、宮沢はこの歌をつくったと語っている。10月27日の講演で、百田はこう言っている。
「沖縄では(民間人)9万4000人が亡くなっているが、沖縄以外でも70万人以上死んでいる。決して沖縄の皆さんだけが被害に遭ったのではない」
●棚上げされた「本土並み」
集団自決以外にも、沖縄特有の悲劇があった。沖縄は慶長14(1609)年に薩摩藩の付庸国になるまで、琉球王国であった。もともとの文化も異なり、言葉も異なる。大正時代から沖縄の学校では、標準語を使うことが強要され、沖縄の言葉を話すことが禁止された。話した生徒には「方言札」という木札が首から下げられるという罰が与えられた。この傾向は戦時下にはいっそう強くなり、沖縄の言葉で会話していた住民がスパイ視され、日本兵によって殺されることも少なくなかったのだ。
日本の敗戦によって、沖縄はアメリカの軍政下に入った。1972年に沖縄は日本に返還されるが、そこに至るまで沖縄の人びとは日章旗を掲げて、祖国復帰運動を展開した。沖縄の人びとは、日本に復帰すれば米軍は去ると考えていた。
だが、当時の佐藤栄作首相は、米軍基地に関して「核抜き、本土並み」と語った。安保条約に基づいて米軍基地は置くが、それは本土並みとする、核兵器は引き上げさせるという約束である。沖縄返還から45年経つが、米軍基地は沖縄に集中したままで、とても本土並みとはいえない。沖縄返還後の核持ち込みに関しては、佐藤首相とニクソン大統領の間で密約があったことが、米国立公文書館での資料で明らかになっている。
1976年に発表されたダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「沖縄ベイ・ブルース」は、「約束はとうに過ぎて、影ばかり震えてるの」「聞き違いなの」「教えてよ」「待ちぼうけ」「青い鳥が逃げた」と歌う。ラブソングに聞こえるが、約束しているのが日本政府、待ちぼうけを食わされているのが沖縄だ。妻の阿木燿子の作詞、夫の宇崎竜童の作曲。観光で遊びに行っていた阿木が沖縄で現実を見てしまい、宇崎はそれを聞いた。ダイレクトなメッセージではなく恋歌にしようと考えたのだ。
この歌がいまだに古びて聞こえないのは名曲であるからだが、この時から沖縄の状況がまるで変わっていないという現実もある。「本土並み」の約束を守るのなら、普天間基地の移設先は沖縄県外であるべきだ。沖縄に新たに基地をつくるのに反対するのは自然の感情だ。
●CIAと自民党
10月27日の講演で、百田はこう言った。
「抗議活動では日当が1日何万円と払われている。全国から沖縄に来る交通費、宿泊費を考えると、とてつもない額になる。カンパだけじゃ無理。では資金源はどこか。本当の中核は。はっきり言います。中国の工作員です。なかなか証拠はみえないが、中国からカネが流れている。なぜか。日本と米軍を分断したい。いつか尖閣を奪う時に米軍の動きを止める」
講演後に沖縄タイムスの記者が尋ねると、この発言には根拠はないと百田は答えたという。1955年〜58年までCIA(米国中央情報局)の極東政策の担当者であったアルフレッド・C・ウルマー・ジュニアは「我々は自民党に資金援助していた」と認めている。66年〜69年まで駐日アメリカ大使を務めていたアレクシス・ジョンソン大使は、資金援助が69年まで続いていたことを認めている。日本をアメリカにとって都合のいい国にするために、CIAが自民党に資金援助していたというのは、根拠のある事実だ。
57年2月14日発行「在日米軍基地に関する秘密報告書」には、こう書かれている。
「行政協定のもとでは、新しい基地についての条件を決める権利も、現存する基地を保持しつづける権利も、米軍の判断にゆだねられている」
つまりいくら「本土並み」といっても、日本政府がそれを決定できるわけではなく、空約束だったのだ。
●安倍首相が掲げる改憲の意味
この状況をいかに打開すべきか。「重武装×対米中立」を唱えているのが、社会学者の宮台真司・首都大学東京教授である。著書『日本の難点』(幻冬舎新書)から引用する。
「専守防衛思想とは『軽武装×対米依存』図式です。いざとなったら米国を頼る思考です。頼れるのかどうかが問題です。日米安保条約は日本が攻撃された場合の米国の出撃義務を規定していません。加えて、中国の重要性が高まった今日の米国が、日中の戦闘が始まったからといって中国を攻撃するとは到底思えません。
しかも『いざとなったら米国に守ってもらうんだから』と足元を見られ(たと思い込み)法外な『思い遣り予算』を出し続けたり、二〇年前の日米構造協議以来の度重なる内政干渉に屈し続けたり、日米地位協定や協定がらみの密約が示すような日本の国家主権の制約に甘んじ続けたり、バカげた副作用だらけです」
それでは、「重武装×対米中立」とはいかなるものか。
「具体的には、航続距離の長い爆撃機や長距離ミサイルを持つことです。こう言うと、やはり『宮台さんは沖縄の地上戦を忘れたのか』と食ってかかる人がいます。逆です。むしろ、僕は残虐な本土での地上戦に持ち込まれないためにこそ、相手に攻撃させない重武装が必要だというのです。
『重武装×対米中立』化には、最低でも三つの障害を克服する必要があります。第一は、米国の機嫌を損なわないようにするためにはどうするか。第二は、アジア諸国の疑惑や懸念をどう除去するか。第三は、憲法改正に必要な国民意思や、重武装を制御する頭脳(民度)をどう形成するかです」(同書より)
日本は、自国の防衛を自らで行えるだけの軍事力を持つべきということである。いうまでもなく、これを自衛のためにしか使わないことはもはや国際的なスタンダードであり、憲法に明記すべきだ。対米中立というのはさまざまなバリエーションがあるが、日本への米軍駐留をなくした上での同盟関係が理想だろう。そこまでいかなくとも、「自国防衛は自分たちで行います」と言えるだけの力を日本が持てば、「日本を守ってやるために米軍がいる」という建前は通用しなくなる。これまで在日米軍が果たしてきた機能を思い起こせばわかることだが、米軍が日本にいるのはアメリカにとっての戦略的必要性によるものである。それがはっきりすれば、日本のアメリカに対する交渉力は高まるはずだ。語られているように、実現するにはさまざまな困難があるが、宮台の提言には意味がある。
10月27日の講演で、百田はこうも語っている。
「確かに、その後沖縄は米国に占領されて多くの基地が造られた。今も基地のそばに住むという大変な不幸とともに生活しておられる。これは本当に申し訳ない。けれども今、沖縄の重要性はすごく高まっている。地政学的に国の防衛のために大事な場所。私たちは同じ日本人。沖縄の人を分ける考えは全然ない。沖縄は大好き。素晴らしい沖縄の地を守っていかないといけない」
沖縄の米軍基地はアメリカにとって重要なのだが、百田はそれをそのまま代弁している。百田は著書『戦争と平和』(新潮新書)で、自衛のための軍隊の創設を提唱しているのだが、それでもアメリカに頼り、沖縄の人びとに耐え続けろというのである。
『日本よ、咲き誇れ』(WAC BUNKO)という安倍晋三首相との共著もある百田だが、安倍の目指す方向を百田ははしなくも明らかにしていることになる。安倍が提唱する改憲とは、アメリカへの従属を強めることであり、米軍の下請けとしての自衛軍の創出であり、戦後レジームの強化である。
「沖縄だけに押し付ける」「面倒くさいことは見て見ぬふりをする」百田には、「アメリカに思いやりを持つ前に沖縄に思いやりを持て!」と強く言いたい。
(文=深笛義也/ライター)」
https://news.nifty.com/article/item/neta/12111-40752/
> 具体的には、航続距離の長い爆撃機や長距離ミサイルを持つことです。こう言うと、やはり『宮台さんは沖縄の地上戦を忘れたのか』と食ってかかる人がいます。逆です。むしろ、僕は残虐な本土での地上戦に持ち込まれないためにこそ、相手に攻撃させない重武装が必要だというのです。
これってどう考えても「先制攻撃能力」だと思うのですが。宮台氏の「重武装中立」というのも、額面通りには受け取れない気がします。百田氏については、深留氏の見解に何も付け加える事はありません。
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