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2018/01/20 04:59
<内閣官房報償費(官房機密費)に関する行政文書の開示を市民団体メンバーが求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は19日、支払先の特定につながらない一部文書の開示を認める初判断を示した。
国は秘密保持の必要性を理由に機密費に関する文書は全て「不開示」を貫いてきたが、最高裁はこうした国の姿勢を否定。支出した相手や具体的な使途を特定しうる文書以外は開示すべきだとの線引きを示し、国民の「知る権利」に配慮した。
今後は月ごとにいくら使ったかは分かるようになる一方、使途や支払先などは引き続き不開示とみられる。
官房機密費は情報提供者への謝礼などに使われるとされる。原告らは2005〜13年の支出に関する文書を開示するよう、第1次〜3次まで計3件の訴訟を起こした。
最高裁が開示を認めたのは、月ごとの機密費の支出額や残額をまとめる「出納管理簿」の一部や、機密費全体から官房長官が自ら管理して政策的判断で使う費用に資金を移したことが分かる「政策推進費受払簿」など。
一方、支払先が明記されている文書や領収書は開示を認めない二審の判断が確定。支出の日付と金額が分かる文書についても「政治情勢や政策課題を分析すれば、支払先や具体的な使途を特定できる場合がある」として、不開示とした。
争われたのは、05〜06年に安倍晋三官房長官(当時)が支出した約11億円、09年の政権交代直前に河村建夫官房長官(同)が支出した2億5千万円、13年に菅義偉官房長官が支出した約13億6千万円の機密費。
上告審の争点は、支払先が明記されていない文書の開示を認めるかどうか。3件の訴訟のうち、1、2次訴訟の大阪高裁判決は一部文書の開示を認めたが、3次訴訟では「情報収集に支障が生じる恐れがある」とほぼ全面的に不開示とした。
官房機密費は、国の施策を円滑に進めるために機動的に使う経費。17年度予算では約12億3千万円が計上されている。
国内外の情報収集や、海外出張する国会議員への餞別(せんべつ)、国会対策などに使われてきたとされるが、具体的な使途は明らかにされていない。国は「秘密保持の要請が極めて高い」として、情報公開の求めに応じてこなかった。
訴訟の一審では機密費の執行管理を担う内閣総務官が証人出廷し、「相手を公にしない経費でなければ得られない情報や協力もある」と意義を訴えた。最高裁はこうした事情に一定の理解を示し、支払先の特定につながる文書は不開示とした。
判決後に記者会見した原告側弁護団の阪口徳雄弁護士は「情報公開を前に進めなさいという意味を込めた判決。まだまだ不十分だが一歩前進であり、必要性のない支出に対する抑止効果をもたらすだろう」と評価した。
「適切に対応」官房長官
菅義偉官房長官は19日の記者会見で、最高裁が内閣官房報償費に関する行政文書の一部開示を認める初判断を示したことについて「判決を重く受け止め適切に対応したい」と語った。
機密費はかつて国会対策などにも使われたとされ、政権運営への影響を懸念する声もあるが、政府関係者は「今までの判決から大きくそれるようなものではない」と指摘した。
国の都合で可否、情報公開進まず
公的機関の情報公開を求めるNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長の話
官房機密費の出入りが分かるようになり、全くのブラックボックスではなくなったのは一歩前進だ。
しかし「情報収集に支障が生じる恐れがある」と判断された場合は使途などを明らかにしなくてもよいという判断が出たため、国の都合で公開するかどうかが決まってしまう懸念がある。今後も何のために使われたかは分からず、情報公開が進んだとは言えない。
機密費は国の重要政策を推進するために利用されている。使途が隠されることで政策決定の過程が明らかにならないことが問題だ>(以上「日経新聞」より引用)
官房機密費に関する開示請求に最高裁が極めて一部ながら初めて開示を認めたのは一歩前進というべきだ。およそ国民の税の支出に関して、国民はすべてを知る権利を有する。
それが政権運営上「機密」が必要だとして、不開示を貫いてきた政府にこそ問題があった。争われたのは、05〜06年に安倍晋三官房長官(当時)が支出した約11億円、09年の政権交代直前に河村建夫官房長官(同)が支出した2億5千万円、13年に菅義偉官房長官が支出した約13億6千万円の機密費だという。国民の常識として余りに高額な「機密費」だといわざるを得ない。
権力は腐敗する、とはけだし名言だ。その腐敗の根源は権力による「機密」だ。しかも「機密」に巨額な使途不明金が関わるとしたら大問題だ。
密室で決められる「要素」を排除するのが民主主義の大原則だ。国民が政治家を選挙で選ぶのに、政治が密室で決められるとしたら民主主義は意味をなさなくなる。しかし今回の最高裁でも官房費を機密にするのは「情報収集に支障が生じる恐れがある」と判断された場合は使途などを明らかにしなくてもよいという判断が出たため、国の都合で公開するかどうかが決まってしまう懸念がある。国民は政府と闘う前に最高裁判所という司法と闘わなければならないようだ。
たとえ官房機密費であろうとも米国の25年ルールのように、すべての政府機密に関しても一定の年数経過後には自動的に白日の下にさらされる、という大原則が必要だ。そうした公開原則なくして政治の透明性は担保されない。
日本の戦後政治は果たして民主主義の名に値するのか、という疑惑がある。そうした疑惑の暗い影を落としているのは米国だ。戦後の日本政治は米国の「占領管理政治」ではなかったか、という懸念は払拭されない。日本の未来のために官房機密費を含めて、すべての機密を政府からなくさなければならない。
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